蕾は優しい光に包まれる
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朝、バビルス学園への登校準備をしているノアは少しだけ落ち着かない様子だった。練習は積んできた。サブノックとは毎日地下で汗を流し、カルエゴとも特訓を繰り返した。けれど、胸の奥には、小さな不安が残っていた。
「……ノアちゃん」
リリィが、湯気の立つカップを手渡してくれる。
両手で受け取り、ゆっくりと香りを吸い込んだ。
「今日が本番なんだってね。緊張してる?」
「……うん。ちょっと、だけ」
「カルエゴ様も言ってたわ。『自分の信じた動きをしてこい』って」
その言葉に、ノアは目を見開く。いつも厳しく、口数も多くはないカルエゴのその言葉に、胸の奥がじんと熱くなった。
「……ありがとう、リリィ。……行ってくる」
小さな声でそう呟き、カップを返し、背筋を伸ばして玄関へ向かった。
⸻
地下運動場に到着すると、すでに生徒たちは集まっていた。にぎやかな空気の中で、ノアは少し後ろに立って様子をうかがう。カルエゴが静かに、だが威厳ある声でルールを再度説明する。
「今回は“処刑玉砲”だ。チームはAとBに分けて行う」
Aチーム:サブノック、ジャズ、クララ、エリザベッタ、アガレス、入間、リード
Bチーム:ゴエモン、ノア、カムイ、アロケル、ケロリ、アスモデウス、プルソン
Bチームの一角で、少し緊張気味に立っていた。練習のときとは違う、ピリッと張り詰めた空気に喉が渇く。
「処刑玉砲、開始!」
カルエゴの一声で試合が始まり、最初は慎重な立ち上がりだった。
ゴエモンとカムイが「連携をどうするか」を話し合っていると、すぐさまジャズがその隙をつきボールを奪い、サブノックにパス。サブノックはその巨体からは想像もつかないほどのスピードでボールを投げ、ケロリを狙う。が、カムイがそれをキャッチし、すぐにエリザベッタへと返す。
視線の動きが追いつかないほどの展開。混乱と騒然とした中で、ノアは一歩、また一歩と状況を見極めながら動いていた。
クララが大量のボールを生み出し、アガレスが床を抜いて一部のプレイヤーが足を取られる中、ボールが入間の手に渡る。
「よく捕った我が宿敵よ、攻めは任せい!!」
サブノックが声を張り、入間がボールを放とうとする。そのパスを受けたノアは、冷静に狙いを定めて投げ返した
「……っ!やるではないか!!」
放たれた球は鋭く、綺麗な軌道を描いてサブノックを撃ち抜いた。ざわめく内野。ノアの中に、何か小さな達成感が芽生える。
だが、内野に残されたのはアスモデウス、ノア、入間の三人。試合は佳境を迎えていた。
アスモデウスがボールを持ち、眉を寄せて何かを考える。その表情は真剣そのもの。
「全力には全力で……私は礼節を重んじる悪魔、アスモデウス・アリス!」
力強く宣言し、彼はボールに炎を纏わせて投げた。標的は――入間。
その瞬間、誰もが息を呑む。普通なら避けるはずの場面で、入間はなんと前へ踏み出した。
「えっ……」
思わず声を洩らす。入間はその勢いを殺さず、かえって利用し、ボールに回転を加え――返した。
直撃したアスモデウスは倒れるも、すぐに起き上がり、ボールを掴んで投げ返す。ノアがそれを受け取ろうと両手を伸ばした瞬間――
「っ……!」
予想以上のスピンに、ボールが彼女の手からすり抜け、地面に落ちた。
「勝者、Aチーム!」
カルエゴの声が響くと同時に、運動場が歓声に包まれる。入間は胴上げされ、チームメイトたちは笑顔でその勝利を祝っていた。
ノアは、静かにうつむいた。誰も見ていない場所で、悔しさに唇を噛んで。
練習も努力もした。それでも、届かなかった。
でも――心のどこかで、ふと笑みが浮かんだ。
(……悔しい…でも楽しかった)
悔しさと、嬉しさと、そして不思議なあたたかさが、胸の奥で混じり合っていた。
そして何より、彼女はもう一人じゃない。声をかけてくれる仲間がいて、励ましてくれる人がいて、見守ってくれる人がいる。