花は灰色に染まり…
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デビキュラムの混乱が収まってから、数日。
ノアは学園の中庭、古びた噴水の前で一人、ある人物を待っていた。
「お待たせしました、ノアさん」
オペラが現れると同時に、すっと背筋を正した。
「オペラさん、今日は時間をとってくださってありがとうございます」
「いえ。報告、ですね?」
ノアは頷き、落ち着いた声で話し始めた。
「はい。まず私は、入間くんが“人間”であることを知ってしまいました」
風がふと、静かに吹き抜ける。
その言葉にオペラの表情が微かに動いた。
「ですが、口外するつもりはありません。
信じていただけない場合は、その時に私を調べてくださって構いません」
凛とした瞳。
その真っ直ぐな意志に、オペラはふっと目を細めた。
「…信じますよ。貴女がカルエゴくんの下で生きていこうとする限り」
ノアは、少しだけ安心したように微笑む。
「それと、敵は入間くんがデルキラ様の“復活”に関わる存在だと考えているようです。
彼らはまた、必ず動きます。私は学校では、彼から目を離しません」
報告を終えると、オペラの顔に少しだけ難しい影が差した。
「分かりました。危険ではありますが、貴女には最も任せられる」
その言葉に、ノアの肩の力がすっと抜けた。
そして、オペラはもう一つの報告に移る。
「それから、クロム・ナイフの地下にいた暗殺者たちは保護され、拠点は完全に破壊されました。
貴女にとって“過去”が絡むことは、もう二度とないでしょう」
ノアは、目を見開いて立ち止まり、次の瞬間、深く頭を下げた。
「ありがとうございます!」
オペラはやわらかく頷き、そのまま踵を返した。
ノアもまた、自分の“居場所”へと帰っていく。
***
カルエゴの屋敷。
食後の紅茶を前に、ソファで並んで座るふたり。
ふと真剣な表情でノアを見据えた。
「そういえば…何か、されてはいないだろうな?」
ノアは「ないよ」と言いかけた。だが
(……キスは、どうなるんだろ)
一瞬の逡巡が命取りだった。
カルエゴはその気配を逃さない。
眉を寄せソファの肘掛けに手をつく。
その腕が、ノアの逃げ道を塞ぐ
「ノア。何をされた?」
「ん、え、っと……ね……」
視線を泳がせながら口を濁すが、圧に耐えきれず白状する。
「……キス、した」
その瞬間、カルエゴの表情から一切の感情が消える。
「で、でも!全然嬉しくなかったし!気持ち悪かったし!」
慌てて補足するノアに、カルエゴは静かに問いかける。
「お前は俺が他の女とキスしても、同じことを言っても許せるのか?」
その言葉に、胸がずきりと痛んだ。
「……や、ヤダ。……絶対イヤ……」
それを聞いて、カルエゴは目を伏せながら小さく呟いた。
「……それは俺も同じだ。……胸糞が悪い」
ノアは驚いて彼を見上げる。
カルエゴの声は静かだったが、確かに滲んでいた。
嫉妬。そして、独占欲。
ノアの胸が熱くなる。
嬉しくて、でも少し苦しくて、泣きたくなるような。
「ごめんね私、ちゃんと言わなかったから……」
「二度目はない。いいな?」
「…うん」
ノアが頷いたその瞬間だった。
カルエゴの眉間に寄っていた皺が一層深まり
どこかムッとした空気が立ちのぼる。
「なに?」
小さく聞き返すノア言葉に返事はなく、次の瞬間
「きゃっ」
ソファの背に手をかけたカルエゴの腕がノアの腰を掬い、あっという間に体勢が逆転した。
押し倒されたノアは、柔らかなクッションに背を預け、見下ろすカルエゴと目が合う。
その瞳は熱を帯びていた。
普段の冷徹さとはまるで違う、抑えきれない感情の波が滲んでいる。
「カル、エゴ?」
戸惑いがちに呼ぶ声は、すぐに彼の唇に塞がれた。
触れるだけのキスではない。
深く、熱く、ねっとりと舌を差し入れ、迷いも遠慮もない。
「……ん、っ……ふ……」
舌と舌が絡み合う音が、静まり返った屋敷に小さく響いた。
ノア反射的に彼の肩に手をかけるが、その腕の力は強く優しいのに、逃げられない。
何かを確かめるように、何かを教え込むように、彼の舌は口内を丁寧に撫で回し、
浅く引いては、また深く侵入してくる。
「あ、っ……ふ……っ……」
息を奪われながらも、ノアは拒むことができなかった。
唇が吸い上げられ、舌が押し戻されるたび、思考は霞み、胸の奥がじんわり熱を帯びていく。
「っカルエゴ…こんな……」
ようやく離れた唇の間から、掠れた声で問うと、カルエゴは伏せたまま、低く囁いた。
「…お前が他の男に、唇を奪われたと聞いて……抑えられると思ったか?」
その声には、明確な怒りではなく、ただひたすらに滲んだ
愛しさと、欲しさと、独占の衝動。
ノアの頬が真っ赤に染まる。
けれど、彼を拒む気持ちはどこにもなかった。
「バカ……」
唇を震わせながら呟くと、カルエゴはまたそっと、ノアの額に口づけた。
「もう二度と、他の誰にも触れさせるな」
その言葉が甘く、深く、心に溶け込んでいった。
カルエゴの額の口づけから、唇が滑るようにノアの頬、顎、そして
「んっ…カルエゴ……」
首筋へと移る頃には、ノアの声はかすかに震えていた。
彼の唇は吸うように、舐めるように、敏感な肌を這い、
やがて一点に執拗に口づけを落とす。
ちゅ……くちゅ……
湿った音が、ひどく艶かしく響いた。
「ひゃっ……あ……だめ、そこ……」
ノアが身をよじっても、カルエゴの腕は優しくも逃がしてはくれない。
薄くできたキスマークの上にもう一度舌が這い、ノアは小さく甘い声を漏らした。
「っ…や、でも……」
それは、あと一歩で理性が吹き飛ぶ境界だった。
「……っ」
カルエゴの唇がピタリと止まり、眉が深く寄せられる。
しばし沈黙が流れた後、彼はノアからわずかに身を引いた。
「すまん、ノア」
押し倒したままの体勢のまま、カルエゴは深く息を吐く。
その表情には、欲を抑え込んだ苦しげな色が浮かんでいた。
「…これ以上は……駄目だ」
自分に言い聞かせるような声音だった。
けれどノアは、息を整えながらも、ほわんとした目で彼を見上げる。
「……ううん、ちょっと嬉しかった」
ぽそりと呟いたその声は、確かに照れていたが
心からの喜びが滲んでいた。
カルエゴは目を細め、少しだけ目を逸らしながらも、ふっと笑う。
「…煽るな、馬鹿者」
そう言いながら、髪をくしゃりと撫でる手はいつになく優しい。
ノアはその手に身を預け、くすぐったそうに微笑んだ。
「でも、好きな人にされるのは……悪くない、かな」
「……バカ者」
照れ隠しのように、今度はおでこに軽くコツンと指を当てられたノアは、そのまま胸の中で笑った