花は灰色に染まり…
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揺れる馬車の中、窓の外を見つめていた。
灰色の景色、すすけた街並み、それが徐々に形を変え、やがて重厚な門が視界に入る。
馬車が止まり、アトリがドアを開けて身を乗り出した。
「さ〜て、着いたよぉ!ノアちゃんのお部屋もちゃんとあるから、楽しみにしててねぇ〜?」
返事はしない。ノアは無言で馬車を降りた。
屋敷は思った以上に広く、整いすぎていて、どこか気味が悪い。
一歩ずつ足を進めながら、心を無にする。
案内された部屋は廊下の一角。隣の部屋のドアをアトリが指差す。
「ちなみに、俺の部屋、ここね♡お隣さんってわけ!」
「…騒がしくしないでね」
冷めた声でそう告げると、ノアは部屋に入り、静かにドアを閉めた。
荷物を解いて、必要最低限の配置を終える。
椅子に腰を下ろし、深く息をついた。
眠気が襲い、ベッドに身を投げ出すと、すぐにまぶたが落ちる。
そのまま、少しの間、眠ってしまった。
違和感で目を覚ます。
視線を上げると、アトリが馬乗りになっていた。
「ふへへ〜、やっぱ寝顔も最高ぉ……」
「…どいて」
冷たい目で睨むと、アトリは舌を出し、ひらりと下がった。
「も〜、つれないなぁ。ちょっと見るくらいいいじゃ〜ん」
「そういうの、気持ち悪いだけよ」
「えっぐぅ……でも嫌いじゃないってことでしょ?」
「ちがう」
***
それからの日々は、淡々としていた。
ノアは朝になれば黙って任務に出て、指示された通りに仕事をこなす。
標的を観察し、情報を回収し、必要なら手を汚す。
感情を押し殺すのではなく、最初から何も感じていないかのように。
そんなノアの隣に、アトリはいつもいた。
「ノアちゃ〜ん、今日のターゲットってさぁ、ちょっと見た目イケてなかった?」
「興味ない」
「ひど〜い、俺は〜?」
「もっとない」
「ちょっ……ノアちゃん、そういうとこ〜」
任務中も、帰り道も、食事中も、アトリはひたすら絡んできた。
軽口、スキンシップ、甘えた声
だが、一貫してその全てを拒み続けた。
ただ、顔には出さない。
感情を揺らさず、ただ静かに、冷たくあしらう。
「今夜さ、俺の部屋で映画でも見よ〜よ」
「いや」
「え〜、スキンシップタイム〜」
「触ったら殴り飛ばすわよ」
「えっぐ〜……でもそれもイイ」
本気か冗談かも分からないアトリの発言に
ノアは興味すら示さなかった。
ただ、自分の任務にだけ集中して、黙々と仕事をこなす。
日々はそうして、色のないまま過ぎていった。