季節をめくる花
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カルエゴの腕に抱かれ
夜の空を渡るノアの体は、羽のように軽かった。
だが、重みは深く、切実に、胸へとのしかかっていた。
「…ノア」
ささやくように名前を呼ぶ。
それだけで、胸が詰まりそうになる。
傷だらけの小さな体。力なく揺れる腕。
それでも、彼女は守った。
入間を、自分との約束を。
カルエゴはそっと視線を落とす。
腕の中、微かな息を漏らして、額を彼の胸に預けていた。
「大丈夫だ、もう……もういい」
お前はもう、頑張らなくていい。
戦わなくていい。命を削って守ろうとしなくていい。
それを、カルエゴは伝えたかった。
屋敷に戻ると、彼はすぐにノアの私室へと入った。
誰も入らないように、結界を張る。
灯りは柔らかな魔光で照らされ、部屋は静寂に包まれていた。
ベッドの上に、ゆっくりとノアを横たえる。
手足を崩し、毛布を掛けだがそれでは足りなかった。
彼女の表情は、少しも安らがない。
まるでまだ、どこかで剣を構えているように、眉をひそめていた。
「…ノア」
再び呼ぶ声は、幼子に語りかけるような温かさを帯びていた。
カルエゴは靴を脱ぎ、上着を脱ぎ、ベッドの反対側にそっと腰を下ろす。
そして、彼女を優しく胸に引き寄せた。
小さな体は、ほとんど力が入っていない。
だが腕をまわして抱きしめると、安心したように、彼女はふわりと身を委ねてきた。
「カルエゴ…」
「……ここにいる。もう、怖いことはない」
震える背を撫でる。
焼けたような傷の痕に指が触れれば、そこに癒しの魔力を染み込ませる。
痛みが消えていくのを感じたのか、頬がほんのりと緩んだ。
「ん…あったかい……」
「当たり前だ。お前のために、俺がいる」
ふわりと頭を撫でると、ノアはすり寄るように、彼の胸元へ顔を埋めた。
耳元で小さな声が囁く。
「…こわかった……」
「……ああ」
「カルエゴが来なかったら……たぶん、もう……」
「言うな」
カルエゴの腕に力がこもる。
壊れそうなその言葉を、もう聞きたくなかった。
「遅くなって、すまなかった…ノア」
その額に唇を寄せる。
触れるか触れないかの、柔らかなキス。
こくんと小さく頷いた。
頬をすり寄せるようにしながら、力なく囁く。
「…ただ、名前呼んでくれた…安心したの」
「……」
カルエゴはそっとノアの髪をすき、頬に触れる。
その肌は熱を帯びていたが、愛おしさが勝っていた。
「ノア…ノア……!」
何度も名前を呼ぶ。
そのたびに、ノアの表情が、少しずつほどけていく。
やがて、彼女は小さな声で言った。
「甘やかして…ほしい……」
「……ああ。どれだけでも、いくらでも」
カルエゴは彼女を毛布ごと抱きしめ、頬に、髪に、額に、静かにキスを落とした。
ノアの瞳に、涙が浮かぶ。
「…カルエゴ…だいすき……」
「知ってる。俺もだ。心配させるな。もう、離れるな」
ぴったりと身体を重ねて、カルエゴは彼女を抱いた。
その腕の中は、温かく、静かで
まるで魔界のどこにもない、たったひとつの聖域だった。