季節をめくる花
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瓦礫と魔力の余波で荒れ果てた空間に、
カルエゴは入間たちと共にいた
その視線の先にいるのは、アトリ。
彼の腕の中に血まみれで、ぐったりとした小さな体。
「ノア……」
カルエゴの喉から漏れた声は、かすれ、低く、怒りと焦燥に満ちていた。
ノアは、どこかの戦いで既に限界まで消耗していたのだろう。
制服は破け、片脚には貫通したような傷。血は止まっておらず、白い頬にさえ乾いた返り血が染みている。
それでも、握りしめられた手には、誰かを守る意思の残滓があった。
アトリは、そんな彼女を抱きながら、ニタリと笑う。
「いや〜、相変わらず強情だよねぇ、ノアちゃんってさぁ」
その指がノアの顎を持ち上げる。
脱力した彼女の顔を傾けると、その頬を舐めた。
「……!」
カルエゴの怒気が爆ぜる。
漆黒の魔力が彼の周囲を囲い、空間を軋ませる。
アトリは続けざまに、生やした4本の腕でノアの身体を撫で回す。
首筋、胸元、太もも明らかに嫌悪感を煽るような、汚らしい動き。
「触れるな……それ以上、触れたら……貴様を地獄の底まで引きずり下ろす」
カルエゴの拳が震える。
今にも飛びかかって殴り殺したい。だが、ノアがその盾になっている。
撃てない。
アトリはその躊躇を見透かし、あろうことかカルエゴの視線を楽しむように言った。
「いやぁ〜、いいよねぇ、この目。殺したいけど、殺せない。愛だね〜?」
その瞬間だった。
「……っく………」
小さな声が届いた。
カルエゴとアトリの目が見開かれる。
ノアが、目を覚ました。
【ノア視点】
……熱い。
痛い。
息を吸うだけで、焼けるように喉が苦しい。
けれど、意識が遠くで呼んでいる。
(…カルエゴ…?)
視界がぼやけている。
けれど、耳に届いた声怒りに震える声に、胸がきしむ。
(あぁ…怒ってる……)
自分がこんな姿だから。
こんなことになったから。
助けに来た先生が、何もできないほどに縛られているから。
(……だから……)
自分の身体を、自分で、何とかしなくちゃ。
ノアは、意識の奥底で魔力を引き絞る。
燃え尽きかけた芯を、必死に集める。
そして
「……フラクトル…」
発動とともに、自分自身の重力を最大限に高める。
アトリの手が軋む。
「ぐっ………!?」
身体が、地面に沈むように重くなる。
その圧に耐えきれず、アトリの腕がノアを支えきれなくなる。
(……落ちる……)
安心した。
この腕から離れられる、あの人の腕に戻れる。
ドサリと、落ちていくノアの身体を、誰よりも速く、傍によってきたのは
「ノア…!」
カルエゴだった。
その姿を見た瞬間、力が抜けて、ノアは静かに目を閉じる。
けれどまだ、終わっていない。
「チッ……しょうがないなぁ〜、じゃあ……代わりに入間くんでももらおうかな?」
アトリが、ニヤリと笑ってターゲットを切り替える。
カルエゴが反応しようとするが
(まだ……私が……守らなきゃ……)
己の意思だけで体を動かす。
すでに感覚はなく、脚は折れ、魔力も枯れ果てている。
それでも。
「……だめ……」
ゆっくりと、入間の前に立つ。
「ノア!?おい、もう動くな!」
カルエゴの叫びが遠く聞こえた。
アトリが笑みを深め、魔力を膨らませる
その瞬間
ズガァッ!!
アトリの背中に、猛然と蹴りを叩き込んだ者がいた。
シーダだった。
吹き飛ばされ、転がるアトリ。
身体はついに限界を迎え、その場に崩れ落ちた。
カルエゴは地面に膝をつき、再びノアを抱きしめた。
彼女の身体は、冷たくはなっていなかった。まだ、温かかった。
「ノア…よく、戻ってきた……」
ただ、静かに。安らかに、彼の腕の中で眠っていた。