花と奏でる音
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ほんのり、あたたかい。
けれど、なぜか柔らかくて、揺れていて……
まどろみの中でゆっくりと目を開けた。
目に入ってきたのは、黒いマントと鋭くも優しい瞳。
「…カルエゴ…?」
目を開けた瞬間、彼女は自分がカルエゴに抱き上げられていることに気づいた。
「ちょ、ちょっと!?な、なにしてるのっ!」
「起きたか。暴れるな、落とす」
まるで何でもないことのように、カルエゴは淡々と歩き続ける。
「ど、どうして!?私、屋上にいたはずで!」
「クラスメイトと話すと言って一晩帰ってこなかったお前を、
リリィが探しに行くと聞かなくてな。仕方なく先に行って確保した。屋上で寝落ちしていたお前を、だ」
「…………っ!」
顔が一気に真っ赤になる。
(やだ、なんでお姫様抱っこ……!恥ずかしい……けど、なんか……あったかい)
「……ずっと抱えてきたの?」
「当然だろう。お前が自力で歩けるような状態ではなかった」
「でも……その、誰かに見られたりとか……」
「見せて歩くほど、私は馬鹿ではない」
カルエゴはマントの内側で包み込むように抱え、静かに自宅へと足を運んでいた
ノアは顔をうずめるようにして囁く。
「カルエゴ」
「なんだ」
「…ありがとう」
少し間があって
「…当然だ」
けれど、その低く静かな声に、いつもより少しだけ感情の揺らぎが混じっているような気がした。
自宅では心配そうにリリィに怒られ
バラム印の栄養ドリンクを飲み
再びカルエゴに抱かれ教室へと飛んでいく
教室前に着くと、カルエゴはそっとノアを下ろしそのまま仕事に向かった
しばらくすると
クラスメイトも続々とやってきて
「ノアちゃん、大丈夫??」
「だいじょぶ……ちょっと、ふわふわするけど」
その時、教室の扉がバンッ!と激しく開いた。
「ハァ~~イ!ポロちゃん、爆誕~~~ッ!!」
ひときわ派手な声と共にアムドゥスが登場。
その肩にはなんと、カルエゴが担がれていた。
ノアは目を瞬かせた。
アムドゥスがドサリとカルエゴを下ろした瞬間、
ノアは弾かれたように駆け寄りそのままそっと抱きしめた。
「っ……!」
「……落ち着け」
それでもノアは放さない。
カルエゴの胸に顔をうずめるようにしがみつく。
「昨日、ずっと考えてた…
もしプルソンくんが戻ってこなかったら、私たちどうなるんだろうって。
音楽祭、全員で出られなかったら、どうなるんだろうって……」
「だが、お前は動いた。言葉を交わし、寄り添おうとした」
カルエゴは言った。
その手が、ノアの髪を静かに撫でる。
「その結果がどうであれお前の行動は、正しかった」
ノアは瞳を潤ませながら、小さく頷いた。
その横でアムドゥスがクラスに叫ぶ。
「いい!?アンタたち全員、音楽祭で【4】に上がれなかったらこの教室、没収なのよね!?
で、審査員はア・タ・シ☆ 絶望的すぎて涙出ちゃう!」
「ええええ!?」「マジで!?」「今言う!?」
騒がしくなるクラスの声を背に、カルエゴは、誰にも見られないようにそっと抱き寄せ、マントで包む。
「ほんの少し、休め。お前の心が疲れているのが分かる」
「カルエゴが、そう言うなら」
彼の胸の中で、静かに目を閉じた。
安心するという感情を、ここまで強く感じたのはいつ以来だろう。
カルエゴは、壁際のソファにノアをそっと横たえた。
マントの端を丁寧にかけてやると、その額に、そっと唇を落とした。
「…よくやった」
小さな囁きは、誰にも聞こえなかった。
けれどその声はノアに深く染み渡っていた。
舞台はもうすぐ始まる。
だけど、今だけは少しだけ、夢を見させて。