花と奏でる音
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音楽祭前日。
教室には緊張と期待が渦巻いていた。
「我々の目標はただ一つ。優勝だ」
カルエゴが言うと、生徒たちはおおっと息を呑む。
「叩き込まれたことを存分に発揮しろ。やれることは……全てした。つまり」
「……もう少し落ち着け、貴様ら」
目の前では、あたふたと慌てるクララやリード、エリザベッタにアロケル。
ノアも、カルエゴの袖を小さく引っ張って、ぴたりと離れずにいた。
「よし!私が自信がつく儀式を教えましょう!」
とケロリが前に出る。
ノアが真ん中に立たされ、クラスメイトたちが口々に褒め始めた。
「ノアの影の魔法ってすごいよな!」
「最近よく笑うようになった!」
「照れてる顔が…かわいい…」
顔を真っ赤にしてもじもじと足をすり合わせる
―褒め円陣―
これは、クラスメイト全員分繰り返され、大盛り上がり。
最後は、エリザベッタが手を広げて言った。
「音楽祭の不安と、私の綺麗どっちがお強い?」
「姐さんの、綺麗ー!!!」
全員の声が一つに重なる。
カルエゴも誘われたが、ため息をついてきっぱり断った。
「くだらん…だが、少しは落ち着いたか」
***
その夜、ノア校舎の屋上にいた。
ひとり、静かに空を見上げながら。
「いるよね、プルソンくん」
夕暮れの風が髪を揺らす。
「私が君を見つけたのも、ここだった。
というわけで今からここで、
プルソンくんの秘密大暴露大会を始めます」
ぱんと手を打つ。
「まず、匿名希望Sさんからのたれこみです。
プルソンくんは、大人ぶった言動をするけど実は子供舌でコーヒーが飲めない!」
「……ちょっ!」
「念子のことをにゃんこって呼んだあと、念子って言い直してた!」
「やめて!」
「スキップができない!」
「できる!!範疇には入ってる!!」
突然背後から現れたプルソンに口を塞がれ
ノアは「ふふっ」と笑った。
「情緒とかないの!?
夕暮れの再会だぞ?もっとこうノスタルジックで」
「ないよ?だって
会えたの、嬉しかったから」
その言葉に、プルソンは少し黙ってから視線をそらす。
ノアは背後でリリィ特製の「おしゃべり版お菓子セット」が広げられていた。
「前に話したときは、お互い一方的だったでしょ?
今度こそ、ちゃんと話そう?
言いたいこと、全部」
プルソンはしばらく黙ったまま、それでも腰を下ろした。
「……怒ってないの?突然退学とか、何も言わずに消えたりして」
「びっくりはしたよ。でも、怒ってない。
心配の方が、勝っちゃってた。私も…みんなも」
沈黙。だが、心は少しずつほどけていく。
「僕はね……プルソン家に生まれてよかったって、思ってる
家業を継ぐのも、むしろ誇らしい
でも入間くんたちとの練習はすごく楽しくて
そしたら、突然帰ってこいって言われて
どうしたらいいのかわかんなくなって……」
涙が頬をつたう。
「楽しかったよ……みんなといるの
でも、家の掟は絶対で……父様が困るし……」
ノアは、静かにうなずいた。
「うん、大丈夫。
言いたいこと、全部聞くよ」
夜風がふたりの間を通り過ぎる。
おしゃべりは、朝まで続いた。
***
薄明かりの屋上。ノアは眠そうにまばたきしながら、ぽつりと呟く。
「やっぱり、私はね……プルソンくんと、14人で舞台に立ちたいの
プルソンくんじゃないと、だめなの。だから」
そこで、言葉は途切れた。
ノアは、眠っていた。
プルソンは、そっとノアに毛布をかける。
寝顔を見つめながら、心の中で何かを決めたように、ふっと息をついた。
「…ほんと、君ってやつは……」
そして、彼は姿を消す。
空に朝日が差し始める