花と奏でる音
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アブノーマルクラス全員が【4】に昇級しなければ、ロイヤル・ワンは没収される。
収穫祭を終えた今、残された最後の昇級の機会
それは、1年生最終週に行われる《音楽祭》だった
合唱、演奏、舞台、何でもありの表現合戦。
もっとも優れた音の表現を行った組に勝利が与えられ、評価と位階昇級が約束される。
「よし!一度確認しよう!」
リードが音楽室の机をパンと叩いた。
【4】:入間、アスモデウス、リード、ノア
【3】:クララ、サブノック、アロケル、ジャズ、ガープ、アガレス、カムイ、ケロリ
【2】:エリザベッタ
「リード、めっちゃ浮いてんな……」
ジャズのつっこみに、リードが慌てて否定する。
「そ、そんなことないわい!」
そして彼は、勢いよく指を掲げて叫んだ。
「つまり! 姐さんにバッチバチに目立ってもらい……ついでに全員【4】に上がろう作戦~!」
「2ランクアップが必要な姐さんを中心に、【3】の奴らも目立てるような出し物に!」
だが、その熱気に水を差すように、ノアがふと声を上げた。
「ちょっと待って……」
その時、教室の隅から静かな声が響いた。
「では、もう1人はどうするのだ?」
カルエゴが冷静に口を開き、指先を教室の片隅に向ける。
「いるだろ、そこに」
その先にいたのは、アブノーマルクラスの影
プルソン・ソイ。
家系能力《認識阻害》を持つ彼は、誰よりも目立たぬことを信条とし、常に輪の外にいた。
「えー……ご趣味は?」
ジャズが恐る恐る声をかけた瞬間、プルソンの姿がうっすらと消えかける。
「ストップストップ!消えないでくれ!」
慌てるクラスメイトたち。だが彼の興味は一向に引けず、気づけば姿を消し、音だけが教室の外へ遠ざかっていった。
皆がプルソンを追いかける中、ノアだけが教室に残った。
彼女はそっと呼びかける。
「……プルソンくん、いるでしょ?」
静寂の中、スッと姿を現したプルソン。
ノアはまっすぐ彼を見つめながら言った。
「いつも端の方にいるから、興味ないのかと思ってた。でも……そんなことないよね」
「無理に出る必要はないと思う。断るのってすごく勇気がいるけど、自分を貫くのって大事なことだと思うから。……だから、嫌なら、嫌って言ってもいいよ」
その言葉に、プルソンはゆっくりと口を開いた。
「正直、何をしたいかって言われても、すごいパニックるから、時間欲しいんだよね、今更あの輪に入って……真ん中に立つとか想像したら、もう無理、無理だから……」
彼の口からは、次々に言葉があふれていく。
まるで今まで心に詰めていたものを一気に吐き出すように。
「……音楽はいいよ。でもそれとこれとは別でさ、だから、もう少しゆっくり接してほしいというか、シャボン玉に触るみたいに扱ってほしいというか……」
そして、最後にぽつりと一言。
「だから……ごめんね、ほんと」
そう言い残し、彼は音もなく姿を消した。
「……えっ!?」
呆気に取られるノアの元に、プルソンを探していた皆が戻ってくる。
だが手がかりはなく、教室に重い空気が落ちる。
「実は……プルソンくんと会話したんだけど……すごい、おしゃべりだったよ?」
「でもやっぱり、目立つのは無理だって」
皆の表情がやや沈む。
だがどこか引っかかるものを感じていた。
(でも、音楽祭には……興味ありそうだったな)
ふと、あることを思いつく。
廊下を駆け上がり、屋上へと向かった。
そこにいたのは
夕焼けの空の下、ひとり静かにトランペットを吹くプルソンの姿だった。
ノアの瞳が輝く。
「すごいっ!!かっこいー!!
すごいねプルソンくん!音が!すごく綺麗!
キラキラしてて、眩しくて!」
思わず距離を詰めるノアに、プルソンが必死に言い訳を始めた。
「違うんだこれはただのストレス発散方法であって、音楽祭のためでは断じてなくて……!」
止まらない早口。だが、その腕をそっと掴み
「ごめん……私、さっきは『出なくてもいい』って言ったけど……」
「でも、さっきの音を聞いて、すごく感動したの」
「だから!ほんとに虫のいい話なんだけど!
貴方の事情とか、全部押しのけて私のわがままだけど!」
「貴方の音を、皆に聞いてほしいと思ったの」
「私みんなに褒められてる貴方が見たい!
だから一緒に出て!音楽祭!!!」
その言葉に、プルソンはしばらく沈黙し、目を伏せた。
そして小さく、だが確かな声で答える。
「音だけで、いいなら」
その瞬間、ノアの顔がぱあっと明るくなる。
「やったー!!ありがとう!!」
彼女はプルソンの手を強く握りしめた。
冬空の下、影と光がひとつの音へとつながった