本編
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《兆し》
【榎本 公志郎】
「さあ、今日も新人を連れてきたわよ」
【墨代 睡蓮】
「……ふぁ、おはようございます」
【政親】
「……、おはようございます」
【榎本 公志郎】
「睡蓮、流石にもう昼よ。起きなさい」
【墨代 睡蓮】
「はい……ふぁ、ごめんなさい。…欠伸、止まらなくて……」
墨代 睡蓮(スミシロ スイレン)
何を考えているのかわからない、つかみどころのない性格。
人に興味をあまり持たず、食べることが好き。
【榎本 公志郎】
「個性が強いのはいいことだけれど……、
お偉いさんの前ではしっかりしてよね?」
【墨代 睡蓮】
「わかりました」
抑揚のない声で、どこか遠方に目線を彷徨わせる墨代に
榎本は自分で連れておきながら不安を拭えない。
しかし、その危うさやミステリアスな部分こそが
人を惹きつける要素になりえると核心し政親の前へと連れてきた。
【政親】
「………」
何も言わない政親だが、その表情を見て
自分の考えは間違えていなかったと確信を得るのだった。
《本番》
【墨代 睡蓮】
「……、色々な人がいますね」
事務所に居合わせた先に所属しているアイドルたちへの挨拶や
一通り事務所を回るとぽつりと墨代が呟いた。
政親はその声に振り返ることもせずに前を向き歩いたまま応える。
【政親】
「どうですか、ポラリスは」
【墨代 睡蓮】
「きらきらしてる……素敵な場所だと、思います」
【政親】
「そうですか」
墨代の言葉はどこか上の空で応えているように感じる。
いつも本心かどうかわからないと言われるとは、本人の談だ。
それは政親も同じであった。
こちらは人に本心を悟らせるようなことはしない、という違いがあるが―
【政親】
「睡蓮、貴方がアイドルを目指すというなら……
私がプロデュースしましょう。……全てを」
【墨代 睡蓮】
「……、はい」
真意が隠れている会話だと、両者共に感じていた―
《絶頂》
【墨代 睡蓮】
「……終わりました」
【政親】
「どうでしたか」
【墨代 睡蓮】
「ざわざわ…ふわふわ、しました…」
【政親】
「貴方だけ気持ちよくなってきたんですか。
私はそんな教えを施しませんでしたよ」
【墨代 睡蓮】
「…、すみません」
わかっているのかいないのか、気のない返事をする墨代の顎を掬い
自分のほうへと顔を向けさせる。
【政親】
「態度については何も言いませんが、
ポラリスに居るのならば自分の仕事はきちんとこなしなさい」
【墨代 睡蓮】
「…っ、…はい……」
あまり表情を変えない墨代の瞳が揺れる。
その一瞬を耳過ごすほど政親は甘くない。
【政親】
「返事は結構ですから
態度で示してもらいましょう」
【墨代 睡蓮】
「んっ……」
顎から滑らした手で襟足を撫ぜ、引き寄せる。
そのまま二人連れ添い扉へと向かった。
そんな二人の様子を、榎本は自席から遠めに眺めていた。
この場から二人の会話は聞こえない。
今のポラリスにはない顔、個性―
少しぐらいミステリアスなぐらいがウケがい
そう思い連れてきたはずなのだが……
政親と墨代の会話をしている様子を見ていると不安が拭いきれない。
それは墨代の性格が掴みどころが無いという理由だけでない気がして
タバコケースを拾い喫煙所へと向かった。
【墨代 睡蓮】
「……榎本さん、ですか。宜しくお願いします」
最初に会ったときの、墨代の顔を思い浮かべる。
煙を燻らせ、紫煙が空に霧散していく様を眺めながら
どこか見覚えのある顔だと思い巡らすのだった。