本編
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《兆し》
【壱川 咲十郎】
「はじめまして、黒田さん。今日からよろしくお願いします」
【政親】
「…おはようございます」
政親は一寸目を見張った。
何度かこの目で観た事はある―
けれど、自身とは縁遠いであろう人物が目の前で微笑んでいたからだ。
壱川 咲十郎(イチカワ サクジュウロウ)
梨園の御曹司で、歌舞伎俳優でありながらアイドルになる夢を叶えるべく志願した。
幼いころに京都にいたおかげで若干京都弁が抜けない。
普段はおっとりとしたタイプだがスイッチがはいると……。
【政親】
(今日来る―とは聞いては居たが…)
やはり、幼少期から大きな期待をかけられてきたオーラは、常人のソレとは
大きく異なっている。
間近で体感すると明らかになる違いに、政親は高揚感を覚えていた。
【榎本 公志郎】
「おはよう、さくちゃん」
【壱川 咲十郎】
「公志郎さん。はい、おはようございます」
【榎本 公志郎】
「ああん、もう、かっわいい。お肌もすべすべ。こう言っちゃなんだけど、
ただのアイドル志願者、とは輝き方が違うのようね。
こう……丹精込めて作り上げられてきた子だけが持ってる光っていうの?」
ほとんど政親と同じ感想を持っているらしい榎本は、
そのまま壱川をレッスン場へと連れていった。
《本番》
【壱川 咲十郎】
「っあ……、……有難うございます」
にこり、とナチュラルな笑顔を浮かべて壱川は指示されたレッスンを終えた。
【榎本 公志郎】
「お疲れ様」
【壱川 咲十郎】
「ごめんなさい。自分でも分かってるんです。ダンスが、少し苦手やって…」
【榎本 公志郎】
「誰だって最初は自分のクセがでちゃうもの。
あなたみたいに真面目でイイ子なら全然問題ないわ」
榎本がそう言えば、パッと…花が咲いたような表情で喜んでみせる。
【政親】
「咲(さく)」
【壱川 咲十郎】
「……え……!?」
長ったらしい名前を当然のように短縮して呼び、壱川の頬に触れる政親。
【政親】
「……、いかがされましたか?」
【壱川 咲十郎】
「……っあ……いえ―、…ごめんなさい…
――汗をかいている、から……あんまり……触らない……で…っ」
【政親】
「――――」
明らかな動揺の色を浮かべ、戸惑う壱川。
―紅潮する頬と、覚束ない言葉が痛々しくそれでいて、――人を愉しませる華は失っていない。
寧ろもっと、とせがむように咲いている。
【壱川 咲十郎】
「離して―頂けませんか、……政親、さん…っ」
謝罪しながらも―頬を染めて、うかがうように政親の瞳を見つめる。
完全に拒絶しているようには見えない「嫌」の言葉に、覚えのある感情が生まれて
―政親はニヤリと笑みをにじませた。
【政親】
「………、貴方は、良き素質をお持ちのようだ」
【壱川 咲十郎】
「……え?」
政親は壱川を営業へと連れ出した。
《絶頂》
【壱川 咲十郎】
「っ………う……」
【政親】
「どうされたんですか?そんなに嬉しそうに腰を揺らめかせて…
――営業はもう、終わりましたよ」
【壱川 咲十郎】
「っや……、…も………、触らん、……とって……」
政親が壱川の中心を膝で刺激すれば、荒く息をあげて身をよじる。
けれどその動きは緩慢で、壱川自身の葛藤を表していた。
―もっと、…と、せがむ激情と……「これはいけない事だ」と叱咤する理性が起こす葛藤だ。
【政親】
「ああ…もう、こんなに零して。はしたない
……これが、あの壱川 咲十郎ですか?」
【壱川 咲十郎】
「っ………ちが……、……違う……っ」
政親は壱川の羞恥心を煽るような言葉を投げかけた。
煽る程に壱川がさらにこの味に溺れて、一層美しく咲き乱れるであろう事に気がついていた。
目じりに涙を滲ませる壱川は演技とは思えない声色で怯え…それでも裏腹に、カラダは高まっていく。
【壱川 咲十郎】
「っあ……ァ……っ……、…ねが……です……
離して……、…もう、堪忍して…っ」
―獣のような卑しい血に彼自身が戸惑っている。それは彼の抑圧の人生を想像させた。
抑圧されたその欲望をひとつ一つ剥いで、彼自身につきつける…、―彼が恥じらって目をそむけても、…何度でも。
それは―政親でさえ想像すれば熱を覚える楽しい遊戯。
―エンジェル営業とアイドル稼業において大切な素質を彼は持っていたのだった。