[期間限定イベント"年末年始"]
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死神界にも冬は来る。
寒いから冬は嫌いだって言うヤツがいるのは、人間も死神も変わらないと思うけど。
俺は、休日の冬の朝が結構好きだ。
温かい布団にくるまってごろごろするのが、凄く幸せだから。
【クロノ】
「あー、仕事の為に布団から出なくていいって幸せ。今日はもう…、」
【クロノ】
「あ、だめだ、起きよう」
思い付いたら、一気に目が覚めた。
俺はあまり布団から出なくて済むように限界まで腕を伸ばし、PCをベッドに引き寄せる。
裸が一番楽だから、家ではあまり服を着たくないんだけど、冬はやっぱり寒い。
俺はPCを引き寄せると、剥きだしの腕を布団へ戻した。
――最近は、起きて最初に、チャットをチェックするのが習慣になった。
チャットの相手は、人間界にいる、俺の可愛い恋人。
俺が死神界にいる時は、チャットでやりとりする事が多い。
今まではチャットなんて面倒で、ろくにチェックしないで怒られることが多かったくらいなのに。
恋人からの返事を待って、こんなマメにチェックするようになるなんて、思ってもみなかった。
【クロノ】
(そもそも……)
こんな真面目に恋愛する日が来るなんて、自分でも想像すらしてなかったな。
なんて考えながらPCを立ち上げると。
【クロノ】
「あ……」
画面に、新着チャット一件、という表示が点滅している。
それを見ただけで、思わず、口元が綻んだ。
チャットの新着ボタンをクリックすると――
【ユリス】
『クロノ! お前、ゆっくり正月を過ごせると思うなよ!』
…なんでだろう。
たったこれだけの文で、絵文字とか顔文字とか付いてる訳でもないのに。
ユリスのやかましい声が、聞こえてくるような気がする……。
文面もムカつくし、送ってきたのがユリスだし、そもそも恋人からの連絡だと思って喜んでたのに。
一言で言うと――
【クロノ】
「……うざ………」
俺は返事をせず、そっとPCを閉じた。
見なかったことにしよう。
でも、既にさっきまでの幸せな気分は完全に消えてしまった。
PCをベッドの脇へ押しやって、俺はもう一度寝直そうと布団に潜り込んだ。
ふて寝をすれば、少しはこのモヤモヤした気持ちも収まるだろう。
すぐに布団の温かさに包まれ、体が解れる感じがする。
少し起きていただけなのに、随分冷えていたらしい。
【クロノ】
(あー…本当に、布団って偉大な存在………)
ぬくぬくと布団にくるまっていると、幸福感と一緒に、猛烈な眠気が訪れた。
俺は睡魔に委ね、目を閉じた……。
【アンク】
「起きて下され!! お仕事ですぞ――!!」
眠ろうとしていたところを、じいにいきなり掛け布団をはぎ取られた。
【クロノ】
「じい、寒い。それに、いつの間に現れたの。気配なかったよ?」
【アンク】
「じいはいつでも神出鬼没! 裸でいるから寒いのです、早くお着替えなさいませ!」
【クロノ】
「さっきまで布団被ってたから寒くなかったのに……」
ぶつぶつ文句が出るけど、じいから布団を奪い返せる気がしないし、実際寒くて仕方ない。
しぶしぶ着替えながら、俺はじいに言った。
【クロノ】
「さっき仕事とか聞こえたけど」
【アンク】
「はい、お仕事ですぞ!」
【クロノ】
「俺、今日休みなんだけど……」
【アンク】
「では、休日出勤ですな」
にこにこと笑うじいの前で、俺は盛大に溜息を吐いた。
………
…………………
………………………………………
【クロノ】
「……!」
じいと一緒に長の部屋へ行くと、ある部署の制服を着た死神が数人いた。
……俺達死神は、天界が作った死亡予定者リストをもとに、死者の魂を狩る。
そして死神界には、天界からリストを受け取り管理する重要な部署があり……。
長の部屋にいたのは、その『死亡予定者リストの管理者達』だ。
彼らは本来、俺みたいなヒラの死神の仕事の場に、いちいち顔を出したりしない。
【クロノ】
(嫌な予感がする…)
めんどくさい仕事にならないように祈りながら、俺は長を見上げた。
【長】
「クロノよ、緊急事態だ。落ち着いて聞いてほしい」
【クロノ】
「はい」
【長】
「先程突然、死亡予定者リストに複数の名が浮かび上がった」
【長】
「死亡予定者は全員、お前が担当している新宿区の者だ」
死亡予定者リストが突然書き変わる…なんて、実はそんなに珍しい事じゃない。
実際に人間の寿命を統轄してるのは天界で、あいつらの考える事は死神の俺にはよく分からないけど。
死ぬ予定だった者が助かったり、逆もまた然りで、人間の運命なんて、本当に何が起こるか分からない。
【管理者】
「いつものリストの変更とは違うのだ。クロノ」
管理者の一人が、一歩進み出て言った。
【管理者】
「詳しくは言えないが、ただ一つ言える事は、この書き変えに天界は関与していない」
【クロノ】
「天界が関与してないのに、リストが変更された…?」
それが本当なら、確かにそれは異常事態だし、事件だ。
【クロノ】
(やっぱりめんどくさい仕事だな……)
なにか凄い事が起きて、サクッと事件が解決しないだろうか。
【クロノ】
(部屋でゆっくりしたいのに…)
そう考えた時、ふと、チャットで見た言葉が脳裏を過った。
――ゆっくり正月を過ごせると思うなよ
ニヤリと口元を歪めるユリスの顔が浮かぶ。
読んだ時は、いつも通り能天気なただの嫌がらせだと思ったけど。
……まさか、この事件の事を言っていたのだろうか。
【クロノ】
(ユリスの仕業だとしたら、こんなの禁錮1000年じゃ済まされない重犯罪だろ…)
そんなこと、流石のアイツだってわかってるだろうに。
【長】
「クロノ。即刻原因を解明し、解決にあたれ」
一応、担当エリア内の重要事件だから、断る訳にはいかない。
けど、めんどくさい。
寒いし。
まだチャット来てなかったから、もう一回PC確認したいし。
そう思って、俺の返事は一瞬遅れたが。
【アンク】
「お任せ下され! クロノ様の手に掛かれば、どんな難事件もチョチョイのチョイですぞ!」
隣にいたじいが、勝手に承諾してしまった。
【長】
「そうか。では、早速だが……」
長は、書類に視線を落とすと、一度言葉を切った。
【長】
「……これが、今回突如浮かび上がった死亡予定者のリストだ」
そして、何故か困ったような顔をしながら、俺に一枚の書類を渡した。
変に思いながら書類へ視線を落として。
――俺は思わず、息を呑んだ。
リストに書かれた名前は、たったの五人………
浅多侑思――死亡予定場所:帝国ホテル
綾上総――死亡予定場所:帝国ホテル
国重昂正――死亡予定場所:帝国ホテル
春川樹生――死亡予定場所:兎川急便トラック内
日留川凌央――死亡予定場所:自宅
リストに書かれた名前。浅多、綾、国重、春川、日留川。
俺のよく知る五人の顔が浮かぶ。
資料から目を離せないままでいる俺の背を、嫌な汗が伝い落ちた。
寒いから冬は嫌いだって言うヤツがいるのは、人間も死神も変わらないと思うけど。
俺は、休日の冬の朝が結構好きだ。
温かい布団にくるまってごろごろするのが、凄く幸せだから。
【クロノ】
「あー、仕事の為に布団から出なくていいって幸せ。今日はもう…、」
【クロノ】
「あ、だめだ、起きよう」
思い付いたら、一気に目が覚めた。
俺はあまり布団から出なくて済むように限界まで腕を伸ばし、PCをベッドに引き寄せる。
裸が一番楽だから、家ではあまり服を着たくないんだけど、冬はやっぱり寒い。
俺はPCを引き寄せると、剥きだしの腕を布団へ戻した。
――最近は、起きて最初に、チャットをチェックするのが習慣になった。
チャットの相手は、人間界にいる、俺の可愛い恋人。
俺が死神界にいる時は、チャットでやりとりする事が多い。
今まではチャットなんて面倒で、ろくにチェックしないで怒られることが多かったくらいなのに。
恋人からの返事を待って、こんなマメにチェックするようになるなんて、思ってもみなかった。
【クロノ】
(そもそも……)
こんな真面目に恋愛する日が来るなんて、自分でも想像すらしてなかったな。
なんて考えながらPCを立ち上げると。
【クロノ】
「あ……」
画面に、新着チャット一件、という表示が点滅している。
それを見ただけで、思わず、口元が綻んだ。
チャットの新着ボタンをクリックすると――
【ユリス】
『クロノ! お前、ゆっくり正月を過ごせると思うなよ!』
…なんでだろう。
たったこれだけの文で、絵文字とか顔文字とか付いてる訳でもないのに。
ユリスのやかましい声が、聞こえてくるような気がする……。
文面もムカつくし、送ってきたのがユリスだし、そもそも恋人からの連絡だと思って喜んでたのに。
一言で言うと――
【クロノ】
「……うざ………」
俺は返事をせず、そっとPCを閉じた。
見なかったことにしよう。
でも、既にさっきまでの幸せな気分は完全に消えてしまった。
PCをベッドの脇へ押しやって、俺はもう一度寝直そうと布団に潜り込んだ。
ふて寝をすれば、少しはこのモヤモヤした気持ちも収まるだろう。
すぐに布団の温かさに包まれ、体が解れる感じがする。
少し起きていただけなのに、随分冷えていたらしい。
【クロノ】
(あー…本当に、布団って偉大な存在………)
ぬくぬくと布団にくるまっていると、幸福感と一緒に、猛烈な眠気が訪れた。
俺は睡魔に委ね、目を閉じた……。
【アンク】
「起きて下され!! お仕事ですぞ――!!」
眠ろうとしていたところを、じいにいきなり掛け布団をはぎ取られた。
【クロノ】
「じい、寒い。それに、いつの間に現れたの。気配なかったよ?」
【アンク】
「じいはいつでも神出鬼没! 裸でいるから寒いのです、早くお着替えなさいませ!」
【クロノ】
「さっきまで布団被ってたから寒くなかったのに……」
ぶつぶつ文句が出るけど、じいから布団を奪い返せる気がしないし、実際寒くて仕方ない。
しぶしぶ着替えながら、俺はじいに言った。
【クロノ】
「さっき仕事とか聞こえたけど」
【アンク】
「はい、お仕事ですぞ!」
【クロノ】
「俺、今日休みなんだけど……」
【アンク】
「では、休日出勤ですな」
にこにこと笑うじいの前で、俺は盛大に溜息を吐いた。
………
…………………
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【クロノ】
「……!」
じいと一緒に長の部屋へ行くと、ある部署の制服を着た死神が数人いた。
……俺達死神は、天界が作った死亡予定者リストをもとに、死者の魂を狩る。
そして死神界には、天界からリストを受け取り管理する重要な部署があり……。
長の部屋にいたのは、その『死亡予定者リストの管理者達』だ。
彼らは本来、俺みたいなヒラの死神の仕事の場に、いちいち顔を出したりしない。
【クロノ】
(嫌な予感がする…)
めんどくさい仕事にならないように祈りながら、俺は長を見上げた。
【長】
「クロノよ、緊急事態だ。落ち着いて聞いてほしい」
【クロノ】
「はい」
【長】
「先程突然、死亡予定者リストに複数の名が浮かび上がった」
【長】
「死亡予定者は全員、お前が担当している新宿区の者だ」
死亡予定者リストが突然書き変わる…なんて、実はそんなに珍しい事じゃない。
実際に人間の寿命を統轄してるのは天界で、あいつらの考える事は死神の俺にはよく分からないけど。
死ぬ予定だった者が助かったり、逆もまた然りで、人間の運命なんて、本当に何が起こるか分からない。
【管理者】
「いつものリストの変更とは違うのだ。クロノ」
管理者の一人が、一歩進み出て言った。
【管理者】
「詳しくは言えないが、ただ一つ言える事は、この書き変えに天界は関与していない」
【クロノ】
「天界が関与してないのに、リストが変更された…?」
それが本当なら、確かにそれは異常事態だし、事件だ。
【クロノ】
(やっぱりめんどくさい仕事だな……)
なにか凄い事が起きて、サクッと事件が解決しないだろうか。
【クロノ】
(部屋でゆっくりしたいのに…)
そう考えた時、ふと、チャットで見た言葉が脳裏を過った。
――ゆっくり正月を過ごせると思うなよ
ニヤリと口元を歪めるユリスの顔が浮かぶ。
読んだ時は、いつも通り能天気なただの嫌がらせだと思ったけど。
……まさか、この事件の事を言っていたのだろうか。
【クロノ】
(ユリスの仕業だとしたら、こんなの禁錮1000年じゃ済まされない重犯罪だろ…)
そんなこと、流石のアイツだってわかってるだろうに。
【長】
「クロノ。即刻原因を解明し、解決にあたれ」
一応、担当エリア内の重要事件だから、断る訳にはいかない。
けど、めんどくさい。
寒いし。
まだチャット来てなかったから、もう一回PC確認したいし。
そう思って、俺の返事は一瞬遅れたが。
【アンク】
「お任せ下され! クロノ様の手に掛かれば、どんな難事件もチョチョイのチョイですぞ!」
隣にいたじいが、勝手に承諾してしまった。
【長】
「そうか。では、早速だが……」
長は、書類に視線を落とすと、一度言葉を切った。
【長】
「……これが、今回突如浮かび上がった死亡予定者のリストだ」
そして、何故か困ったような顔をしながら、俺に一枚の書類を渡した。
変に思いながら書類へ視線を落として。
――俺は思わず、息を呑んだ。
リストに書かれた名前は、たったの五人………
浅多侑思――死亡予定場所:帝国ホテル
綾上総――死亡予定場所:帝国ホテル
国重昂正――死亡予定場所:帝国ホテル
春川樹生――死亡予定場所:兎川急便トラック内
日留川凌央――死亡予定場所:自宅
リストに書かれた名前。浅多、綾、国重、春川、日留川。
俺のよく知る五人の顔が浮かぶ。
資料から目を離せないままでいる俺の背を、嫌な汗が伝い落ちた。