溺れる鳥と飛びたい魚


 うとうとと微睡んで、不意に我に返ったように目を覚まし氷魚は慌てて隣を確認する。
 目を閉じる前と変わらない姿を確認して、全身の力が抜いた。
 上体を起こすと膝と頭を抱えて、思いがけず大きな溜息が漏れた。
「…………? どうしたの、氷魚」
 身動ぐ微かな物音に視線をやると、見上げる眠たそうな瞳と、視線が合う。掠れた声で目を擦りながら体を起こそうとするので、やんわりと押し留めた。
「まだ早いから、寝てていいよ。ゆっくり休んで」
「氷魚は、起きるでしょ?」
「俺もまだ……」
 寝るよ。と答えかけて、少し悩む。
「……ヒタキが隣にいてくれるなら、もう少し寝るよ」
「?」
 不思議そうに首を傾げて、目を閉じながらヒタキが小さく笑う。
「ヘンなの。いつもいないの、氷魚だよ」
 言い終えるのが早いか、小さな寝息を立て始めた。
「そっか……」
 呟いて、氷魚はヒタキの寝顔にかかった髪を指先で弄ぶ。
「そうだね」
 欠伸を漏らして、氷魚もまた目を閉じた。

 窓から入る日差しの強さに眉を顰め、無意識に上掛けをたぐり寄せようとして、視線を落とす。かすかに体を震わせたヒタキの上目遣いと目が合う。
「ど……う」
 動揺したまま、氷魚はヒタキを案じる。
 そんな氷魚をよそに、ヒタキはくすくすと肩を震わせていたのだった。
「……なに。そんなに面白い寝顔で寝てた? 俺」
「ううん」
 なおも柔らかく笑みを漏らしながら、ヒタキは首を振り、小さく零す。
「あんまり、見ないから。氷魚の寝てるとこ」
「そう、だっけ?」
 こくりと頷くヒタキに、氷魚は顔を手で覆ってみせる。
「あんま見ないで。恥ずかしい」
 冗談まじりに言ったつもりだったが、伝わったかどうか。
 それでも、ヒタキは小さく笑い続けている。
 くつろいだ表情を見つめながら、氷魚も穏やかに微笑んだ。
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