夏の二人


「やっぱ、そろそろ飽きてきたよな」
 白くて細い麺の束を、つゆの中から箸で掬って啜る。咀嚼し、喉に送り込んで、幼馴染が呟く。
「禿同」
「ちょっとその表現古い」
 俺は幼馴染が最後にかき集めた後に残った残骸のようなそれを、自分のつゆの中に放り込む。残っていると、うるさいのだ。
 黒いつゆの中に落とした短い麺を探すのに少しいらいらした。結局、薄まったつゆごと喉に流し入れ、昼食を終える。
 今日も二人で四束。少し上等な桐箱の中、少しだけ見えてきた底によしよしと頷く。
「まだ俺の家にも同じだけあるからな」
 満足げな俺に水を――いや、釘を刺すような言葉が飛んでくる。溜息をついて首を振った。
「あ、そうだ」
「何」
 俺が現実に打ちひしがれているのをよそに、友人は思い出したように言う。
「俺、昼からは図書館に行こうと思ってたんだ。お前、どうする?」
「ええ? 何しに……?」
 思いっきり怪訝そうな声を出してしまう。嫌な予感しかしなかった。
 あと、図書館は地味に遠いのだ。
「嫌なら俺一人で行くから、別に来なくてもいいけど。――読書感想文用の本、借りてこないとと思ってさ」
 ああ、ほらやっぱり。と肩をすくめる。
「まだいいだろ。夏休みは始まったばっかりだぞ」
「もう一週間経ってんだよ。読む時間なくなるだろ。早く読んで終わらせてしまいたいしな。お前も、毎年最後までやんないだろ」
「じゃあ去年お前が読んだやつでいいよ。内容教えて」
「前言撤回。お前も一緒に連れてくから準備しろ」
「マジ勘弁~」
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