真夜中のドライブ

 ドライブに行こう。
 そう誘われるまま彼の助手席に座り、目的もなく走り出す車。
 交差していくヘッドライト、前を走る車のテールライトと、街灯。
 民家やマンションの明かりが、視界を照らす総てで、全部がぼんやりとして見える。
 やがて車は住宅街を抜け、山道へと差し掛かる。
 緩やかな坂道と、カーブ。
 灯りは減り、前後にも、対向車もない。
 カーステレオからはラジオが流れている。
 いつもは安心する落ち着いたパーソナリティの声が、今だけは何だか物足りない。
 会話が少ないからだろうか。
 私も彼も、元より口数は多くなかった。
 車は大きなトンネルに入る。薄暗く、がらんとした空洞の中、一定間隔の暗いオレンジが、転々と続いている。
 すでに意識が薄らいでいるのを感じていた。
 運転手の手前、眠ってしまわないようにするのがやっとのこと。
 欠伸を噛み殺しながら、トンネルの明かりには、催眠効果があるらしいなんて話を思い出す。
 オレンジは現れては流れる。それが左右二本の線であるかのような錯覚を覚えながら。

 それにしても、長いトンネルだ。
 ああだから、本当はもう寝てしまっているのかもしれない。
 でなければ、きっと理由がつかない。
 たとえこの場所が有名な曰くつきのスポットだったとしても。
 私の左側からずっと、こちらの車内をじっ、と睨みつけている女性の存在に。
1/3ページ
スキ