三題噺
ぱち、と暖炉の中で音がして、目を覚ます。
ちょうど部屋の扉が開いて下女が入ってくるところだった。
「お目覚めでしたか」
抑揚の無い声で彼女はそう言って、盆に乗せたスープと薬をベッドの脇の小さなテーブルに並べる。どうぞと促されるままにスープ皿と匙を手に取り口に運ぶ。
味はいつも通り。
おいしい、と感想と共に皿を返す。
入れ替わりに薬の小瓶と、水の入ったグラスを差し出される。
薬は錠剤で、溶けるのが早く苦いことを思い出して思わず顔を顰めた。
「早く元気になってくださいね」
彼女はいつものように言う。まるで追い打ちだ。
苦々しい思いのまま誤魔化すように笑ってみせると、表情の崩れない彼女の目が、飲み終えるのを確認するためだけに注がれる。
ようやく観念し、水を口に含み、薬の錠剤を口の中に放り込むと、胃の中に押しやるように再び水を煽って流し込む。
そうして空になったグラスを置けば、ようやく彼女はにっこりと微笑んでくれるのだ。それを安堵で見つめ返し、息を吐く。
その笑顔の後ろで、薪がまた一つ炭になって、音を立てて崩れた。