手折ってしまえたらどんなにか
窓の外を小さな花弁が無数に舞っている。
そんな様をぼんやりと見つめていた。
「あなたの好きな花はなんですか」
不意に隣で足を止めた人が言う。
私はその人をちらりと横目で見て、また、外に戻した。
「花は嫌いです」
「どうしてですか」
「いくら希っても、その姿を留めておけないから」
隣に立った人が少しだけ空気を揺らす。
笑ったのだと、思った。
「それでもまた、来年咲きますよ」
触れるだけのようにするりと温かい感触が、髪を撫でていく。
そういうところだと、吐き捨てるように、聞こえないように呟く。
遠ざかっていく背中。
来年にはいなくなるくせに。
私に見えないところで咲くのなら―――
「やっぱり、嫌い」