本日、家の中には小気味のいいリズミカルな音が響いていた。板に釘を打ち付ける金槌の音だ。
かつて大工だった父の久方ぶりの仕事は鳥籠作りだ。
泣き出すんじゃないかと心配していた生まれたばかりの赤ん坊は、ゆらゆらと揺り籠に揺られながら機嫌がいい。
「オハヨ　オハヨ」
揺り籠の縁を行ったり来たりしながら、中で揺られている赤子をあやしてくれているのが、先日迷い込んできた九官鳥だった。
赤子かキャッキャと声を上げるたびに、首を傾げては人の言葉を発して、時には付けたばかりの赤子の名までを呼ぶ。
夜はダンボールで大人しく過ごし、昼間は日がなこの調子で赤子を看てくれるものだから、買い損ねていたメリーモービルも「要らないね」と妻は言い出す。
飼い主はさぞ心配しているだろうと苦笑を漏らしながらも、ついこの平穏と穏やかな金槌の音で過ぎる休日を満喫してしまうのだった。