夏の二人
胸が苦しくて、息が詰まって、俺は足を止める。両膝を掴むように前屈みの姿勢で肩で浅い息を繰り返した。
とうに無得なくなった同級生たちの背中。それでも、近くに、まだ見える範囲に誰かいるのではないかと首を回す。額から滴る汗をひとつ拭った。
押し寄せてくる虚しさと、悔しさ。次いで、諦め。観念して、諦めてしまうと、すっと心が晴れるのがわかる。
道の脇に座り込んで、傍らを流れる小川のせせらぎに耳を澄ました。
火照る頬に風を感じて、ゆっくりと大きく息を吸い込むと心が落ち着いていくのを感じる。一気に噴き出した汗が流れ出すが、構わない。
頭上で爛々と輝く太陽は変わらず眩しいけれど。
「あっ! 駆、居たー!!」
大きな声で名前を呼ばれて、緩慢な動作で振り返る。自分の背に迫ってきた影が、太陽を隠した。「大丈夫か?」と伸ばされた手を、頷いて取る。
「置いてってごめん」
困ったように笑ったじゃ胃が、さっきの背中と重なって太陽よりも眩しかった。
「ううん」
首を振る。
「いこ! 向こうでみんながでっかいザリガニ捕まえてるんだ。走れる?」
「うん」
腕を引かれたまま、もういちど走り出す。
不意に昔のことを思い出しながら、あの頃よりも成長した背中を見つめていた。
「駆?」
急にペースを落とした俺を、友人は振り返る。
「いや……――急にちょっと、懐かしくなってた。歩武は先、行けば?」
「いいよ。学校周りを走り込みとか、真面目にやると延々走らされるだけだって」
確かに。と苦笑を零して、汗ひとつ拭わない友人を見る。
悠々とした姿は、まだまだ余力を感じさせている。
「けど。お前がここにいると俺がサボりを疑われる。先生見てるぞ、さっさと行け」
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