夏の二人
雨が降った。
「残念だったわね」
母親は朝一番、外の天気を見てそう言った。
「うん……。そうだね」
そんな風に応えながら、内心でほっとしている自分がいた。
昼を過ぎても雨は止みそうにない。それどころか、次第に雨脚は強まって活きている。
あれだけ毎日顔を合わせていた幼馴染とは、なんとなくしばらく合っていない。
以前は、何も言わなくてもお互いに自然と、顔を合わせていたというのに。
どうしてこうなっているのか、自分にもわからない。今の気分も、わからない。
なんとなく流れでスイッチを入れてみたテレビゲームにだって身が入らない。
コントローラーを投げ出して、漫画雑誌を引き寄せ、ページを捲ってみても落ち着かない。
いつもどうして過ごしていたかと考えると、否応なく幼馴染の顔が浮かぶ。勢いよく首を振って、思考を振り払う。
突然、大きな蜂が近くを飛んだ時のような羽音に似た音が響いて、びくりと肩を揺らす。繰り返すその音が、機械音だと気付いて机の上に置いたスマホのバイブ音だと気付いた。
なんとなく身構えながら、でも少しだけ、期待もしながらロックを解除して、メッセージを確認する。ほっとしたような、がっくり来たような、変な気持ちを持て余した。
「また今度よろしくおねがいします」
慣れない宛先へ、緊張気味に返事を返す。
そのままスマホ画面を見つめ、メッセージ画面の見慣れすぎた名前に手を止める。タップしかけて、スマホをベッドに向かって放り出す。
一緒に行った大会が終わった。
もうじき、夏休みも終わる。
中学三年の夏が、終わりを迎えようとしている
「残念だったわね」
母親は朝一番、外の天気を見てそう言った。
「うん……。そうだね」
そんな風に応えながら、内心でほっとしている自分がいた。
昼を過ぎても雨は止みそうにない。それどころか、次第に雨脚は強まって活きている。
あれだけ毎日顔を合わせていた幼馴染とは、なんとなくしばらく合っていない。
以前は、何も言わなくてもお互いに自然と、顔を合わせていたというのに。
どうしてこうなっているのか、自分にもわからない。今の気分も、わからない。
なんとなく流れでスイッチを入れてみたテレビゲームにだって身が入らない。
コントローラーを投げ出して、漫画雑誌を引き寄せ、ページを捲ってみても落ち着かない。
いつもどうして過ごしていたかと考えると、否応なく幼馴染の顔が浮かぶ。勢いよく首を振って、思考を振り払う。
突然、大きな蜂が近くを飛んだ時のような羽音に似た音が響いて、びくりと肩を揺らす。繰り返すその音が、機械音だと気付いて机の上に置いたスマホのバイブ音だと気付いた。
なんとなく身構えながら、でも少しだけ、期待もしながらロックを解除して、メッセージを確認する。ほっとしたような、がっくり来たような、変な気持ちを持て余した。
「また今度よろしくおねがいします」
慣れない宛先へ、緊張気味に返事を返す。
そのままスマホ画面を見つめ、メッセージ画面の見慣れすぎた名前に手を止める。タップしかけて、スマホをベッドに向かって放り出す。
一緒に行った大会が終わった。
もうじき、夏休みも終わる。
中学三年の夏が、終わりを迎えようとしている
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