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inzm

雨と猫


「あ、雨だ」
 学校からの帰り道、突然降り出した雨。
 宵一は雨が入らないようにカバンの中を確認する。
「傘持ってねぇ」
 走るしかない。そう思い走りだす。
 どんどん強くなる雨。部活終わり、落ちてゆくスピード。
 家まであと少し、そこで見つけたダンボール。中には寒さで弱った猫。
 どうしても見捨てられなくて抱えて家に帰った。

***

「ほら、ミルクだよ」
 タオルにくるまった猫に牛乳を差し出す。
 お風呂上がりの髪を乾かすためタオルで拭きながら猫を撫でる。
「ん?」
 青い首輪に何か文字が書いてあるのに気がついた。
「RINO……お前りのって言うのか?」
「にゃー」
「可愛い名前だな。よいち……僕は宵一だ」
 りのを見ながら宵一は眠りに落ちてしまった。

***

 目の前にはなぜか女の子。青い首輪、黒い猫耳のついたパーカー。目のやり場に困るショートパンツ。そしてしっぽ。
「にゃぁー」
「誰だ」
「……李乃だよ? 李乃名前呼ばれると人間になるの」
「えっ」
「李乃こんなんだからいつもご主人様に嫌われて捨てられちゃうの……」
 潤んだ瞳で宵一を見つめる李乃。
「――……っ」
 思わずギュッと後ろから抱きしめた。そのまま頭をぽんぽんと撫でる。
「えへへ」
 嬉しそうに笑う李乃。そんな姿が愛おしくなる。
「助けてくれてありがとう」
 小さく李乃がつぶやいた。

***

「……りの?」
「にゃぁー」
「なんだ夢か」
 そばで鳴く猫(りの)を見てつぶやく。
「僕はずっと、りのといるよ」
 優しくなでる宵一にりのは「にゃぁーにゃぁー」と嬉しそうに鳴いた。


fin.


(12/05/30)
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