magi
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
わがままLaDY
結婚が決まった。
だから、全て終わりにしようと思うの。
私にはどんなことをしてもあなたと一緒にいる勇気なんてなかった。
臆病者。
だから嫌いになって? 好きのままだとつらいから。
でも嫌いになられるのもつらいわ。
自分勝手ね。
*
いつものように水の腕に包まれる私。
「……別れよう?」
唐突に告げた。涙があふれてしまいそう。
「は?なんでいきなりそうなるんだよ」
「仕方ないじゃない……」
「えっ」
「……私のことなんか好きにならなければ良かったのに」
そうよ。そしたら私こんなに苦しい思いしなくて済んだのに。
「おい! なんだよ、それ。ふざけんなよ。俺h」
「私、今度結婚するの」
水の気持ちは今更言われなくたってよくわかってる。
つらくなるだけだから遮った。
「……」
抱きしめる水の腕の力が強くなる。
どうすればいいかわからない。
「これが最後のわがまま。もう何も言わないから」
「すげーわがままだな」
いつもの水だ。
涙こらえて笑ってくれてる。水なりの優しさなのかな。
「最後なんだからこれくらいしたっていいでしょ?」
「しかたねーな。なぁ俺のわがままも聞いてくれる?」
「なぁに?」
「ずっと、ずっと好きでいてもいい? 何もしない、好きでいるだけ」
ずるい。わざわざ聞かないでよ。
「ごめん、変なこと言った。忘れて」
私が返事しないから変なこと言わせたね。
「ごめん」
忘れられるわけないでしょ。
「じゃあそろそろ部屋戻るわ。夏黄文来そうだし」
「あ、うん」
これで終わりだね。もうこうしてこの部屋で一緒に過ごすことないんだね。
水の腕から解放された体は冷たい。
「そうだ、最後に」
「うん」
「ありがとう。幸せだった。それにいつか来ると思ってた、ただの紅玉バカの家族に戻る日が来るって」
「私も、幸せだった」
「良かった。俺たちの関係は変わらないよ。だって俺は皇帝の養子、お前は皇帝の娘、家族だろ?」
「そうね」
内緒の愛だったから傍から見た関係は変わらないわ。
「じゃあね」
私にキスをした。
軽い言葉に反した別れを惜しむような深いキス。
やめてほしいけどずっとこのままがいい。
わがままな私。
しばらくして唇が私から離れていく。
何も言わずに離れる水。
本当に終わっちゃう。
ドアを開けて出ていく直前、水は振り返った。
「――おめでとう」
いつもの大好きだった、何度も救われたあの笑顔でそう言ったの。
反則ばっかり。
それだけ言ってドア閉めちゃうんだから。
「水孔が好き!」
聞こえたかどうかは分かんないけど叫んでおいた。
最初から引き返すつもりなんてなかったけど、これでちゃんと前に進める。
前に進むから……。
いいわけをしながら泣いた。
*
ああ、また同じ夢。
水の腕のぬくもりを忘れられないみたい。
何度も見た水の腕に包まれる夢で目を覚ました私は伸びをする。
一人だとこんなに広く感じるのね。
自分から手放しておいてバカみたいね。
「紅玉様」
「起きてるわ」
「そうですか。では」
着替えて朝ごはんにしましょう。
気持ちの切り替えって大事よ。
そう決意したのに部屋を出てすぐ崩れた。
「おはよう、紅玉」
「あ、おはよう水」
なんてタイミング。
今、前みたいにちゃんと笑えてる?
「朝会うの久しぶりだな。最近朝以外も会わないか」
「そうね」
わざと避けてるもの。どう話していいかわからない。
このせいで一日、水のことを考える羽目になったわ。
なんて言い訳だけど。
同じ敷地すぐ近くにいるのになんだか遠い。
また一人で夜を越える。
一人の過ごし方を忘れてしまった。
ねぇ抱きしめてよ。
「会いたい……」
つぶやいて布団をかぶり無理やりシャットダウン。
そしてあの夢で起きる繰り返し。
引きずりっぱなしの自分に泣けてくる。
本当ばか。
「紅玉?」
ドア越し、水に呼ばれてびっくりする。
そうだいつもこうやって泣いてるときにやってくる。
「何?」
で、素っ気ない態度しか取れない私。
「いや、大丈夫かなって」
何がよ。
「平気だよ」
嘘。
何にも平気じゃない。つらい。
会いたい。というより抱きしめてほしい。
心配させたくないから強がった。
「そっか」
だけど言ったらそのドア開けて来てくれた?
繰り返すif。実行されない叶わないif。
*
泣いてばっかり。
私どうやって笑ってた?
わからない。
泣いてる自分を見せたくなくて夏黄文とさえ会いたくない。
水と同じように、それ以上に私を見てきた彼なら答えをくれるかしら。
なんて押し潰される様な夜を何度も越える。
前に進むと決めたのに、なぜ押し潰されそうなの?
結婚相手に愛を感じられないから?
もしも巻き戻せるのなら、二人でいた頃にもう一度戻りたい。
そう思わせるくらいこの部屋には二人の思い出がありすぎる。
あの頃のままで何も変わらないから、やり直せないとわかっていながら期待してしまう。ifを考えてしまう。
眠れなくなった。
外に出てて星空を見上げる。
部屋をこっそり抜け出して一緒に見たっけ。
「どうした?」
おやすみのあとに目を開けたら水が言った。
「寝てなかったの?」
「寝てる紅玉って可愛いから」
聞くんじゃなかった。
「なんだか眠れないの」
「じゃあさ、星見に行こうよ!」
「見に行くってどこへ?」
「ちょっと外、庭行くだけ。夜だしばれないだろ」
「いいの?」
「これくらいの冒険があったほうがドキドキしない?」
「う、うん。あ、ばれたらたまたま寝れなくて外に出たら会ったってことでいいのでは?」
「それじゃ一緒に寝れないし」
「何言ってるの」
多分顔赤いと思う。暗くてよかった。
「あははは。さ、行くぞ」
こうやって寂しい気持ちを紛らわせてくれた。
何でも思い出すのは水のこと。
別に失って気付いたわけではないの。大切だと、この人しかいないと思ったから付き合ったの。
「会いたい……」
抱きしめてよ。
私を、あの人から奪ってよ。ねぇ……?
fin.
(13/09/22)
この話のイメージ
結婚が決まった。
だから、全て終わりにしようと思うの。
私にはどんなことをしてもあなたと一緒にいる勇気なんてなかった。
臆病者。
だから嫌いになって? 好きのままだとつらいから。
でも嫌いになられるのもつらいわ。
自分勝手ね。
*
いつものように水の腕に包まれる私。
「……別れよう?」
唐突に告げた。涙があふれてしまいそう。
「は?なんでいきなりそうなるんだよ」
「仕方ないじゃない……」
「えっ」
「……私のことなんか好きにならなければ良かったのに」
そうよ。そしたら私こんなに苦しい思いしなくて済んだのに。
「おい! なんだよ、それ。ふざけんなよ。俺h」
「私、今度結婚するの」
水の気持ちは今更言われなくたってよくわかってる。
つらくなるだけだから遮った。
「……」
抱きしめる水の腕の力が強くなる。
どうすればいいかわからない。
「これが最後のわがまま。もう何も言わないから」
「すげーわがままだな」
いつもの水だ。
涙こらえて笑ってくれてる。水なりの優しさなのかな。
「最後なんだからこれくらいしたっていいでしょ?」
「しかたねーな。なぁ俺のわがままも聞いてくれる?」
「なぁに?」
「ずっと、ずっと好きでいてもいい? 何もしない、好きでいるだけ」
ずるい。わざわざ聞かないでよ。
「ごめん、変なこと言った。忘れて」
私が返事しないから変なこと言わせたね。
「ごめん」
忘れられるわけないでしょ。
「じゃあそろそろ部屋戻るわ。夏黄文来そうだし」
「あ、うん」
これで終わりだね。もうこうしてこの部屋で一緒に過ごすことないんだね。
水の腕から解放された体は冷たい。
「そうだ、最後に」
「うん」
「ありがとう。幸せだった。それにいつか来ると思ってた、ただの紅玉バカの家族に戻る日が来るって」
「私も、幸せだった」
「良かった。俺たちの関係は変わらないよ。だって俺は皇帝の養子、お前は皇帝の娘、家族だろ?」
「そうね」
内緒の愛だったから傍から見た関係は変わらないわ。
「じゃあね」
私にキスをした。
軽い言葉に反した別れを惜しむような深いキス。
やめてほしいけどずっとこのままがいい。
わがままな私。
しばらくして唇が私から離れていく。
何も言わずに離れる水。
本当に終わっちゃう。
ドアを開けて出ていく直前、水は振り返った。
「――おめでとう」
いつもの大好きだった、何度も救われたあの笑顔でそう言ったの。
反則ばっかり。
それだけ言ってドア閉めちゃうんだから。
「水孔が好き!」
聞こえたかどうかは分かんないけど叫んでおいた。
最初から引き返すつもりなんてなかったけど、これでちゃんと前に進める。
前に進むから……。
いいわけをしながら泣いた。
*
ああ、また同じ夢。
水の腕のぬくもりを忘れられないみたい。
何度も見た水の腕に包まれる夢で目を覚ました私は伸びをする。
一人だとこんなに広く感じるのね。
自分から手放しておいてバカみたいね。
「紅玉様」
「起きてるわ」
「そうですか。では」
着替えて朝ごはんにしましょう。
気持ちの切り替えって大事よ。
そう決意したのに部屋を出てすぐ崩れた。
「おはよう、紅玉」
「あ、おはよう水」
なんてタイミング。
今、前みたいにちゃんと笑えてる?
「朝会うの久しぶりだな。最近朝以外も会わないか」
「そうね」
わざと避けてるもの。どう話していいかわからない。
このせいで一日、水のことを考える羽目になったわ。
なんて言い訳だけど。
同じ敷地すぐ近くにいるのになんだか遠い。
また一人で夜を越える。
一人の過ごし方を忘れてしまった。
ねぇ抱きしめてよ。
「会いたい……」
つぶやいて布団をかぶり無理やりシャットダウン。
そしてあの夢で起きる繰り返し。
引きずりっぱなしの自分に泣けてくる。
本当ばか。
「紅玉?」
ドア越し、水に呼ばれてびっくりする。
そうだいつもこうやって泣いてるときにやってくる。
「何?」
で、素っ気ない態度しか取れない私。
「いや、大丈夫かなって」
何がよ。
「平気だよ」
嘘。
何にも平気じゃない。つらい。
会いたい。というより抱きしめてほしい。
心配させたくないから強がった。
「そっか」
だけど言ったらそのドア開けて来てくれた?
繰り返すif。実行されない叶わないif。
*
泣いてばっかり。
私どうやって笑ってた?
わからない。
泣いてる自分を見せたくなくて夏黄文とさえ会いたくない。
水と同じように、それ以上に私を見てきた彼なら答えをくれるかしら。
なんて押し潰される様な夜を何度も越える。
前に進むと決めたのに、なぜ押し潰されそうなの?
結婚相手に愛を感じられないから?
もしも巻き戻せるのなら、二人でいた頃にもう一度戻りたい。
そう思わせるくらいこの部屋には二人の思い出がありすぎる。
あの頃のままで何も変わらないから、やり直せないとわかっていながら期待してしまう。ifを考えてしまう。
眠れなくなった。
外に出てて星空を見上げる。
部屋をこっそり抜け出して一緒に見たっけ。
「どうした?」
おやすみのあとに目を開けたら水が言った。
「寝てなかったの?」
「寝てる紅玉って可愛いから」
聞くんじゃなかった。
「なんだか眠れないの」
「じゃあさ、星見に行こうよ!」
「見に行くってどこへ?」
「ちょっと外、庭行くだけ。夜だしばれないだろ」
「いいの?」
「これくらいの冒険があったほうがドキドキしない?」
「う、うん。あ、ばれたらたまたま寝れなくて外に出たら会ったってことでいいのでは?」
「それじゃ一緒に寝れないし」
「何言ってるの」
多分顔赤いと思う。暗くてよかった。
「あははは。さ、行くぞ」
こうやって寂しい気持ちを紛らわせてくれた。
何でも思い出すのは水のこと。
別に失って気付いたわけではないの。大切だと、この人しかいないと思ったから付き合ったの。
「会いたい……」
抱きしめてよ。
私を、あの人から奪ってよ。ねぇ……?
fin.
(13/09/22)
この話のイメージ
7/18ページ