このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

生意気な年下にうっかり惚れられまして。

「白井さん」
「……ん?」

気がつくと椋太は、澤村と腰掛けていたデスクに挟まれるような形で距離を詰められていた。
パーソナルスペースを優に超えた距離は吐息を感じられるほどに近いのに、何故か嫌ではなかった。

(喉仏、結構ゴツいな……)

ぼんやりと目の前にあるものを視線でたどる。骨はごつごつとしているが身体には筋肉と適度な脂肪があり、触り心地が良さそうだなと無意識に思う。

(女だったらこの胸板に顔を埋めたいとか思うのかな)

Tシャツの上からでも盛り上がりがわかる胸筋は、清潔感からか変な嫌らしさは感じない。
暗闇でも、半袖から伸びた腕はたくましく、鍛えているのだなということがわかる。

薄暗闇の中で沈黙が支配する。
澤村が何をしたいのか気にならないわけではなかったが、抗う気持ちも起きなかった。

ふいに衣擦れの音とともに、体が包み込まれる。

「っ……」

もたれかかったデスクに澤村が片手を付き、もう片方の腕で抱き寄せられていた。
触れてみればわかる、身体の熱さ。どくん、と椋太の心臓が大きく打つ。

「白井さん。好きです」

椋太が何か言葉を発するよりも前に、耳元に寄せられた澤村の口から低く掠れた声が漏れた。
何をいわれているのか咄嗟に判別がつかなかったが、意味を感じ取った瞬間にカーっと身体が熱くなる。

「な……」
「同僚として、先輩としてとかじゃない。あんたの恋人になりたいって意味だ。……あんたが好きなんだ」

ため息とともに、普段と違う饒舌で滑らかな言葉が紡がれる。
好き、という言葉は耳元に直接吹き込まれて脳を回る。
突然のことで椋太の声も掠れたようにしか出てこない。

「お、おまえ、男……」

(恋人?は?お、俺男だぞ……?!)

もちろん同性を好きになるタイプがいるのも知っていたが、まさか自分がその対象になるとは思っていなかった。
12/39ページ
スキ