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生意気な年下にうっかり惚れられまして。

「……まぁ、俺も……その機能は、あったほうがいいとは思っていた」

澤村は無表情のまま顔をそらすと、幾分小さめの声で呟く。

「システムチームでも、この機能はあったほうがいいんじゃないかって話てたんですよ~」
「澤村さんの意見と白井さんの提案そのままだったので驚いてますけどね、そうなってもいいような設計で考えてましたよ実は」

口々にほかのメンバーが笑いながら口添えする。
意外と気が合うと思いますよ、白井さんと澤村さんは、と言われて椋太も考える。

(なんだ……頭ごなしに否定してるっていうよりは、意外と考えてくれてンだな。
それに、クライアント側のことを考えないとこのアイディアも出てこないしふつーは……)

椋太としても、澤村の言葉の少なさと煽るような言い方にいつも反発してしまうのだが、こうして1ヶ月付き合っていると、彼がきちんとクライアントの気持ちも考えて行動していることがわかる。
椋太も立場上、どうしてもクライアント側からの意見を通そうとするし、逆に澤村たちからすると以下に工数を減らして効率よく開発するかを考える。
企画側に言われるがままホイホイ実装しても方向性がブレかねず、いくら時間があってもたりなくなるといったことは、こういった案件ではよくある話で、澤村はあえてキツい言い方をしてうまく進めようとしているのかもしれない。

思い返せば、言い方は問題があるものの、いろいろ考えられていることはわかった。
身勝手でポジティブすぎる考えだったが、顔をそらすという行動すらももしかして照れ隠しなのではないかとすら思えてくる。

(とはいえ……いちいち揚げ足とるし、まず否定してくるし……ムカつくことには変わりないけどな)

「もー、それなら最初っから言ってください!急にねじ込むことになるからヒヤヒヤしながら掛け合ったんですからね」

笑いながら椋太が冗談交じりに言うと、皆一同に笑う。

「てか澤村サンなんか俺だけに冷たくない?」
「冷たくない」
「即答してるあたりが冷たいんですけど~」

意地悪、と腕をつんつんと突くと急に大きなモーションで澤村は振り返り、赤ら顔で椋太を睨みつけた上で去っていった。

「なんだ……あれ」
「白井さん、すんません。澤村いつもあんなんじゃないんですけどね……」

(じゃあなおさら悪いわ)

椋太は澤村の謎の行動に首をかしげるしかなかった。
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