和楽器バンドの夢専用の名前になります♪
Petrichor
君の名前は?
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[奇跡が降る夜]
奇跡を信じますか?
きっと、昨日までの俺だったら。
確実に
『NO』
と、答えてた。
いくら待っても、奇跡なんておきない。
信じてるって言葉を吐きながら
心の片隅では
もう、ずっと前から少し諦めてたのかもしれない。
神なんて信じない…………
なのに………。
「眞………。」
嬉しそうに、笑いながら。
力なく座り込む俺の手を取ってくれる。
「………浅葱………。
なんで………」
ここに居れるの?
目の前に居る浅葱の姿が信じられなくて。
うまく言葉が出なくて。
ただ、握った手は暖かくて。
確かめるように頬に触れれば。
くすぐったそうに首を竦める。
「本当に浅葱……?」
あまりにも信じられなくて問いかければ、笑ってくれる。
「どうやら、本物みたい。」
痩せてしまって腕も手も細くなってしまったけど。
笑顔はあの日のまま。
(あぁ、本当に浅葱だ………。)
手の震えは止まらないけど。
ふと、浅葱の後ろを見れば。
離れた所に親父と浅葱のお父さんが居る。
視線が合うと、お父さんはゆっくりと頭を下げて。
親父に促されて離れていった。
(だから、今日お父さんが来てたんだ。)
わざわざ親父が来たんじゃなくて。
浅葱を連れてきてくれるために。
ごめん、落ち着かせて。
そう言うと、ベンチに腰かけてタバコを吸う。
煙は浅葱にかからないように、違う方向に吐き出して。
「いつ、目が覚めたの?」
目が覚めた時は連絡してほしいってお父さんには言っていたから。
「半年前かな?夏くらい。
ずっと、耳元で眞の歌が聞こえててね。
起きなきゃって思えたの。」
歌は、たぶん送ったCDだろう。
お父さんがかけててくれたと思うと、ありがたい。
でも、なんで教えてくれなかったんだろう……?
そんなことを考えてると浅葱はクスクスと笑った。
「ごめんね………。私が、お父さんに連絡しないでって言ったの。
歩けるようになって、眞のライブ行って驚かせたかったの。
でも、まだ歩けないんだけどね。」
本当にごめんね。
そう言って笑ったけど。
「本当………。
ずっと、ただ似てる人だって思ってたよ。」
悔しいけど。
まんまとやられた。
「………そういえば!!俺のこと、忘れなかったの?」
それだけは、すごく不安だった。
目覚めた時、俺のことなんて全て忘れてたら。
そんなことも考えてた。
「やってた仕事とか、思い出せないことはけっこうあったんだけどね。
眞の事は、目覚めた時に真っ先に思い出して。
見送り行かなきゃって言ったら笑われた。」
そっか、浅葱の中では俺との記憶は上京する日で止まってるのか………。
本当に、あの日の事を思い出すと、後悔しかなくて。
悔しくなる。
「ねぇ………。」
繋いだままの浅葱の手は少しだけ冷えてきて。
そっと引っ張ると、キョトンとした瞳がこちらを見る。
「冷えちゃうから、こっち来て。」
そっと、車椅子から抱き上げると、そのままベンチの俺の膝の上に抱える。
「え?え?ちょっとっっ!」
焦るように、ジタバタとしたけど。
「寒いからこのまま。」
そう言って、腕の中に閉じ込めた。
軽くなってしまったけど。
ここにいるのは紛れもなく浅葱で。
確かめるように抱き締めて首に顔を埋めれば。
鼻先に当たるネックレスチェーン。
「あ………。」
まだ、俺のあげたネックレスを着けててくれたことが嬉しい。
「お父さんに聞いた。
眞がネックレスくれたんだって。
私のブレスレットも着けててくれたんだね。」
そう言うと、そっと俺の手首を撫でる。
あの日から、外すことなくずっと過ごしてるブレスレットは、少しだけくすんでしまってはいたけど。
「………俺の宝物だから………。」
撫でる手を捉えて繋ぐと、優しく握り返してくれる浅葱の手。
愛しくて。
抱きしめる腕に力がこもる。
「東京行って、成功したら、ずっと言おうと思ってたことがあるんだ。」
浅葱の首に顔を埋めたまま、ぽつり、ぽつりと話はじめる。
伝えたい言葉は、伝えたい時じゃなきゃ後悔するってわかったから………
鼻がツンとして、目が潤むのは
寒さのせいかな………?
「………うん。」
なぁに?
と、落ち着いて話を聞いてくれようとする浅葱。
「東京に出る前から………浅葱と出会ってから………ずっと、好きだったんだ………。
もう、後悔したくないから………。」
少しだけ鼻声で、耳元で話すと。
クスクスと笑って、体を離すと。
ポケットからハンカチを出してくれた。
「眞………泣いてる(笑)」
優しく涙を拭ってくれる浅葱の瞳も溢れるくらい涙がたまってて。
「浅葱も………泣いてる……(笑)」
浅葱のハンカチで涙を拭うと、クスクスと二人で笑う。
あの日みたい………。
浅葱は両手で俺の顔を包むと、潤んだ瞳でしっかりとこちらを見てくれる。
「私も、初めて会った時から、好きになってたよ………。」
そう言うと、優しくキスを落としてくれる。
触れるだけのキスは暖かくて。
ゆっくりと目を開けると、恥ずかしそうに笑う浅葱がいる。
「………足りない。」
ぽそりと呟くと、戸惑う浅葱の後頭部を押さえて噛みつくように口付ける。
心臓が壊れそうなくらい痛いけど。
それが、生きてるって教えてくれる。
「ちょっと………し……んっ………」
苦しそうに浅葱はもがくけど。
何年も待ったんだ。
これくらいしたって良いだろ………?
唇を離せば、浅葱は、はぁっとため息をついて力の抜けた体を支える。
「ずっと、待ってた分、まだ足りない。」
何度も口付けを交わしても、きっと、足りない。
それくらい待ったんだから。
「………ずっと、俺の物でいて………。」
もう、後悔したくないから。
そう囁くと。
俺の服に顔を埋めた浅葱は微かに頷いて。
ずっと、信じなかった奇跡。
神にすら、呪いをかけたいほど恨んだ。
でも、ちゃんと。
クリスマスの日に奇跡は起きた。
もう、後悔しないように。
いつでも伝えるから。
もう、過去形じゃなくていい。
これからはずっと。
大好きだって言えるから…………。
「本当に、大好きです………。」
-finale-
奇跡を信じますか?
きっと、昨日までの俺だったら。
確実に
『NO』
と、答えてた。
いくら待っても、奇跡なんておきない。
信じてるって言葉を吐きながら
心の片隅では
もう、ずっと前から少し諦めてたのかもしれない。
神なんて信じない…………
なのに………。
「眞………。」
嬉しそうに、笑いながら。
力なく座り込む俺の手を取ってくれる。
「………浅葱………。
なんで………」
ここに居れるの?
目の前に居る浅葱の姿が信じられなくて。
うまく言葉が出なくて。
ただ、握った手は暖かくて。
確かめるように頬に触れれば。
くすぐったそうに首を竦める。
「本当に浅葱……?」
あまりにも信じられなくて問いかければ、笑ってくれる。
「どうやら、本物みたい。」
痩せてしまって腕も手も細くなってしまったけど。
笑顔はあの日のまま。
(あぁ、本当に浅葱だ………。)
手の震えは止まらないけど。
ふと、浅葱の後ろを見れば。
離れた所に親父と浅葱のお父さんが居る。
視線が合うと、お父さんはゆっくりと頭を下げて。
親父に促されて離れていった。
(だから、今日お父さんが来てたんだ。)
わざわざ親父が来たんじゃなくて。
浅葱を連れてきてくれるために。
ごめん、落ち着かせて。
そう言うと、ベンチに腰かけてタバコを吸う。
煙は浅葱にかからないように、違う方向に吐き出して。
「いつ、目が覚めたの?」
目が覚めた時は連絡してほしいってお父さんには言っていたから。
「半年前かな?夏くらい。
ずっと、耳元で眞の歌が聞こえててね。
起きなきゃって思えたの。」
歌は、たぶん送ったCDだろう。
お父さんがかけててくれたと思うと、ありがたい。
でも、なんで教えてくれなかったんだろう……?
そんなことを考えてると浅葱はクスクスと笑った。
「ごめんね………。私が、お父さんに連絡しないでって言ったの。
歩けるようになって、眞のライブ行って驚かせたかったの。
でも、まだ歩けないんだけどね。」
本当にごめんね。
そう言って笑ったけど。
「本当………。
ずっと、ただ似てる人だって思ってたよ。」
悔しいけど。
まんまとやられた。
「………そういえば!!俺のこと、忘れなかったの?」
それだけは、すごく不安だった。
目覚めた時、俺のことなんて全て忘れてたら。
そんなことも考えてた。
「やってた仕事とか、思い出せないことはけっこうあったんだけどね。
眞の事は、目覚めた時に真っ先に思い出して。
見送り行かなきゃって言ったら笑われた。」
そっか、浅葱の中では俺との記憶は上京する日で止まってるのか………。
本当に、あの日の事を思い出すと、後悔しかなくて。
悔しくなる。
「ねぇ………。」
繋いだままの浅葱の手は少しだけ冷えてきて。
そっと引っ張ると、キョトンとした瞳がこちらを見る。
「冷えちゃうから、こっち来て。」
そっと、車椅子から抱き上げると、そのままベンチの俺の膝の上に抱える。
「え?え?ちょっとっっ!」
焦るように、ジタバタとしたけど。
「寒いからこのまま。」
そう言って、腕の中に閉じ込めた。
軽くなってしまったけど。
ここにいるのは紛れもなく浅葱で。
確かめるように抱き締めて首に顔を埋めれば。
鼻先に当たるネックレスチェーン。
「あ………。」
まだ、俺のあげたネックレスを着けててくれたことが嬉しい。
「お父さんに聞いた。
眞がネックレスくれたんだって。
私のブレスレットも着けててくれたんだね。」
そう言うと、そっと俺の手首を撫でる。
あの日から、外すことなくずっと過ごしてるブレスレットは、少しだけくすんでしまってはいたけど。
「………俺の宝物だから………。」
撫でる手を捉えて繋ぐと、優しく握り返してくれる浅葱の手。
愛しくて。
抱きしめる腕に力がこもる。
「東京行って、成功したら、ずっと言おうと思ってたことがあるんだ。」
浅葱の首に顔を埋めたまま、ぽつり、ぽつりと話はじめる。
伝えたい言葉は、伝えたい時じゃなきゃ後悔するってわかったから………
鼻がツンとして、目が潤むのは
寒さのせいかな………?
「………うん。」
なぁに?
と、落ち着いて話を聞いてくれようとする浅葱。
「東京に出る前から………浅葱と出会ってから………ずっと、好きだったんだ………。
もう、後悔したくないから………。」
少しだけ鼻声で、耳元で話すと。
クスクスと笑って、体を離すと。
ポケットからハンカチを出してくれた。
「眞………泣いてる(笑)」
優しく涙を拭ってくれる浅葱の瞳も溢れるくらい涙がたまってて。
「浅葱も………泣いてる……(笑)」
浅葱のハンカチで涙を拭うと、クスクスと二人で笑う。
あの日みたい………。
浅葱は両手で俺の顔を包むと、潤んだ瞳でしっかりとこちらを見てくれる。
「私も、初めて会った時から、好きになってたよ………。」
そう言うと、優しくキスを落としてくれる。
触れるだけのキスは暖かくて。
ゆっくりと目を開けると、恥ずかしそうに笑う浅葱がいる。
「………足りない。」
ぽそりと呟くと、戸惑う浅葱の後頭部を押さえて噛みつくように口付ける。
心臓が壊れそうなくらい痛いけど。
それが、生きてるって教えてくれる。
「ちょっと………し……んっ………」
苦しそうに浅葱はもがくけど。
何年も待ったんだ。
これくらいしたって良いだろ………?
唇を離せば、浅葱は、はぁっとため息をついて力の抜けた体を支える。
「ずっと、待ってた分、まだ足りない。」
何度も口付けを交わしても、きっと、足りない。
それくらい待ったんだから。
「………ずっと、俺の物でいて………。」
もう、後悔したくないから。
そう囁くと。
俺の服に顔を埋めた浅葱は微かに頷いて。
ずっと、信じなかった奇跡。
神にすら、呪いをかけたいほど恨んだ。
でも、ちゃんと。
クリスマスの日に奇跡は起きた。
もう、後悔しないように。
いつでも伝えるから。
もう、過去形じゃなくていい。
これからはずっと。
大好きだって言えるから…………。
「本当に、大好きです………。」
-finale-
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