和楽器バンドの夢専用の名前になります♪
Strong Fate
君の名前は?
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【ジプシー】
なんで、俺はこんな所にいるんだろう………。
もう、どうでも良いか…………。
それから、何日経っても浅葱が帰ってくることはなかった。
当たり前だ。
きっと、今頃黒流の所にいるんだろ………。
あれから、ほとんど眠れなくなった。
強い酒を呑んでも、何も感じない。
ただ、体が重いだけ。
疲れきった体を引きずって、入りすぎている仕事をただこなす日々。
「町屋さん、取材の前にメイク入りますね♪」
バンドのアルバムの制作が佳境に入り、今週は自分のソロの方の仕事。
今は、黒流にも、バンドのメンバーにも会いたくない。
だから、丁度良かった。
「町屋さん、肌の調子わるいですね。ちゃんと寝てますか?」
メイクに入ったスタッフに、ちょこちょこ話かけられるけど、あんまり答えたくもなくて。
「仕事忙しいから、あんまり。」
ぼんやりと答える。
会話はあまり続かず、ただメイクをしてもらうだけ。
取材には、それなりに受け答えする。
写真も、決められたポーズ、求められる表情をするだけ。
ただ、時間だけが過ぎてくれればいい。
あまり気を使われるのも面倒だから、それなりに受け流し、今日も取材が終わった。
「タバコ吸ってから帰るから、先帰って良いよ。」
マネージャーにそう告げると、喫煙所に向かう。
家に帰っても、誰も居ない空間。
ベッドには、もう何日も入ってない。
広すぎるベッドでは、眠れない。
(どこで呑んで帰ろう………。)
紫煙を吐き、ぼんやりと考える。
「あ、町屋さん♪お疲れ様です!」
喫煙所に入ってきたのは、さっきメイクをしてくれたスタッフ。
名前、なんだっけ………。
「あぁ、お疲れ様。」
ぼんやりと返事を返すと、彼女は楽しそうに話し出す。
俺には全く興味のない話だから、聞き流すだけだけど。
「町屋さん、だいぶ疲れきった顔してますよ!こんな時はストレス発散です!飲みに行きません?」
タバコを吸いながら、嬉しそうに誘ってきた彼女。
正直、どうでも良いけど。
一人よりは時間が潰せるから………。
「………あぁ、良いよ………。」
それは、自分にとって
「どうでも良いよ………。」
って、意味…………。
「………ハァッ」
あれからどれくらいの時間がたったんだろう……。
飲み屋で呑んでいて、俺は強い酒ばっかり呑んでた………。
だいぶ酔いが回った頃。
「もっと、楽しいこと、しましょ………?」
誘われるままにホテルに入った。
部屋は薄暗く、テーブルランプがうっすら二人の体を照らし出す。
強い香水と化粧の匂い。
艶かしく揺れる体。
触れれば喜び、息が上がる女。
「町屋さん、もっと触って………。」
うっとりと、自分を求める女の声に、どんどん俺の心が凍りついていく………。
括れた腰に触れても、柔らかな胸に触れても、俺の中のもう一人が
「違う」
と、叫ぶ。
目を閉じても、浮かぶのは嬉しそうな浅葱の顔で、自分を現実に引き戻す。
香水の匂いで、吐きそうになる………。
「ねぇ………キスして………。」
唇を求めて、首にしがみつき、身を寄せられる。
不意に、女の肩を押し、引き離す。
「………やめた。」
身を離し、ベッドから降りる。
乱れた服を直し、上着を羽織る。
急な出来事に、ただ驚く女は身を起こし、
「どうしたの?」
と、戸惑う。
「………無理。帰るわ。」
それだけ告げると、部屋を後にする。
後ろで女が何かキャンキャン騒いでたけど、吐きそうな俺には、どうでも良いことだった………。
部屋を出て、しばらく歩く。
酔いと、香水の匂いで、胸がモヤモヤする。
(浅葱が忘れられなくて他の女が抱けないとか、笑えるわ………。)
今の自分の惨めさに笑いしか出てこない。
なんとなく、向かった先には、いつものバー。
【雪月花】の看板を見つけ、ドアを開ける。
-カランカラン-
入店に気付いた楓さんがこちらを見る。
それと共に、人影が奥の部屋に消えていく。
「あら、一人なんて珍しいじゃない?」
楓さんは、いつもと変わらない口調でおしぼりを出してくれる。
「新しいバイト?」
人影が消えてった方を見ながら問い掛けると、楓さんは一瞬だけそちらを見て、
「まぁ………そんなもんよ。迷子の子猫を拾ったの。
今のまっちには見せてあげないけどね(笑)
食べられたらたまったもんじゃない!」
そう言って笑う。
(迷子の子猫ね……)
「ねぇ、楓さん。
強い酒ちょうだい。」
まだ、さっきまでの匂いが鼻から抜けず、少しだけ苛立つ。
強い酒を呑んで忘れてしまいたい。
少しだけ呆れた顔をした楓さんは、何か作り始めた。
「しかし、あんた、だいぶ女臭いわね。そんなで帰ったら浅葱ちゃんが怒るんじゃない?」
そう言うと、カウンターから出てきて消臭剤をかけられる。
「まぁ………さっきまで女と居たしね。」
匂いを消したかったからありがたかった。
「女って………」
「浅葱、出てった………。俺が忙しかったから、飽きられたのかもね………。
女は、抱けなかった。
浅葱の笑顔が頭から離れなくて………。」
ぼんやりと、出されたナッツを食べながら答える。
楓さんは、あらぁ、と返すだけで、深くは聞かない。
カチャカチャと、シェイカーで何かを作ると、そっとテーブルの上に置いたショートのカクテルグラスに注いでくれる。
「………なに、これ?」
俺には合わないショートグラス。
そこに、黄色いカクテルが注がれる。
「【ジプシー】よ。酒の味もわからないほど酔っ払ってるまっちにはこれで充分。」
量が足りない。
そう思いつつ口をつけると。
「………甘い。」
ウォッカベースだけど、口当たりの甘いカクテル。
「まっちが来たら、これを出してくれって注文してった子がいるのよ。」
楓さんは、タバコに火をつけると、ため息のように吐き出す。
「へぇ、ファンか何か?」
なんでこのカクテルなのか、誰がそんなもの頼んだのか。
理由はわからなかったけど、それもどうでも良かった。
酔いが回り、カウンターに肘をついてぼんやりする。
楓さんも、無駄に話しかけず、居てくれる。
「俺が悪いのはわかってるんだ………。
浅葱に話す間も与えなくキレてた………。」
「わかってるなら、話すればいいじゃない。」
「もう、俺に心は向いてないって言われるのが怖いよ………。」
なんとなく眠くて。
机に突っ伏してしまう。
「…………浅葱に…………会いたい………。」
誰に言うでもなく。
そう呟いて、眠気に身を委ねた。
「【ジプシー】のカクテルの意味は「しばしの別れ」よ。あんたには、きっとわからないでしょうけどね………。」
タバコを揉み消した楓さんは、眠っている眞にそっと呟いた。
「浅葱ちゃん、まっち、眠っちゃったわよ。顔くらい見てあげたら?」
奥の部屋に続くカーテンを上げて声をかければ、奥のソファーにはタオルで顔を覆い、声を殺して泣く姿。
楓さんは近寄ると、優しく頭を撫でる。
「あんた達は、本当にめんどくさいカップルね。」
呆れながら笑ってくれる。
「………ごめんなさい………。」
話は全て聞こえていた。
完全に嫌われてると思ってたのに………。
まだ眞の中に私は居る。
それだけが、嬉しかった………。
お店に出て、カウンターで眠る眞は、心なしか痩せていた。
疲れきった顔。
そっと、ブランケットをかけて背中に額を当てる。
「………眞、ごめんね…………。」
まだ、眞の元へは帰れない。
そっと、頬にキスをすると、奥の部屋に戻った。
(……眞、ごめんね……)
懐かしい匂いがした………。
いつも抱き締めるとする、浅葱の匂い。
「…………。」
ゆっくりと目を開けると、そこには呆れ顔の楓さんがタバコを吸っていた。
「うちは仮眠室じゃないんだけど?」
いつの間にか眠ってたのか。
起きると、肩にはブランケットがかかってた。
浅葱の使うハンドクリームと同じ匂いがした。
「ごめん。コレ、ありがとう。」
畳んで渡すとそっと机の横に置く。
「酒1杯で酔って寝るほど疲れてるなら家に帰って寝なさい!」
怒られて苦笑いするしかない。
「ハイハイ。ご馳走さまでした。」
支払いをして、帰ろうと歩き出したとき。
「まっち!」
急に呼ばれて振り返ると、ミネラルウォーターのボトルが飛んできた。
どうにかキャッチできた。
「真実を、見謝るんじゃないわよ?」
言われた意味はよくわからなかったけど、ありがとう、と手を振って店を出た。
まだ、どれが真実なのかすらわからない俺には、見謝ることすらできない。
でも、楓さんの店を出た俺は少しだけ心が楽になった。
帰ったら、久しぶりにベッドに入ろう。
浅葱の匂いがするあの部屋に
帰ろう…………。
なんで、俺はこんな所にいるんだろう………。
もう、どうでも良いか…………。
それから、何日経っても浅葱が帰ってくることはなかった。
当たり前だ。
きっと、今頃黒流の所にいるんだろ………。
あれから、ほとんど眠れなくなった。
強い酒を呑んでも、何も感じない。
ただ、体が重いだけ。
疲れきった体を引きずって、入りすぎている仕事をただこなす日々。
「町屋さん、取材の前にメイク入りますね♪」
バンドのアルバムの制作が佳境に入り、今週は自分のソロの方の仕事。
今は、黒流にも、バンドのメンバーにも会いたくない。
だから、丁度良かった。
「町屋さん、肌の調子わるいですね。ちゃんと寝てますか?」
メイクに入ったスタッフに、ちょこちょこ話かけられるけど、あんまり答えたくもなくて。
「仕事忙しいから、あんまり。」
ぼんやりと答える。
会話はあまり続かず、ただメイクをしてもらうだけ。
取材には、それなりに受け答えする。
写真も、決められたポーズ、求められる表情をするだけ。
ただ、時間だけが過ぎてくれればいい。
あまり気を使われるのも面倒だから、それなりに受け流し、今日も取材が終わった。
「タバコ吸ってから帰るから、先帰って良いよ。」
マネージャーにそう告げると、喫煙所に向かう。
家に帰っても、誰も居ない空間。
ベッドには、もう何日も入ってない。
広すぎるベッドでは、眠れない。
(どこで呑んで帰ろう………。)
紫煙を吐き、ぼんやりと考える。
「あ、町屋さん♪お疲れ様です!」
喫煙所に入ってきたのは、さっきメイクをしてくれたスタッフ。
名前、なんだっけ………。
「あぁ、お疲れ様。」
ぼんやりと返事を返すと、彼女は楽しそうに話し出す。
俺には全く興味のない話だから、聞き流すだけだけど。
「町屋さん、だいぶ疲れきった顔してますよ!こんな時はストレス発散です!飲みに行きません?」
タバコを吸いながら、嬉しそうに誘ってきた彼女。
正直、どうでも良いけど。
一人よりは時間が潰せるから………。
「………あぁ、良いよ………。」
それは、自分にとって
「どうでも良いよ………。」
って、意味…………。
「………ハァッ」
あれからどれくらいの時間がたったんだろう……。
飲み屋で呑んでいて、俺は強い酒ばっかり呑んでた………。
だいぶ酔いが回った頃。
「もっと、楽しいこと、しましょ………?」
誘われるままにホテルに入った。
部屋は薄暗く、テーブルランプがうっすら二人の体を照らし出す。
強い香水と化粧の匂い。
艶かしく揺れる体。
触れれば喜び、息が上がる女。
「町屋さん、もっと触って………。」
うっとりと、自分を求める女の声に、どんどん俺の心が凍りついていく………。
括れた腰に触れても、柔らかな胸に触れても、俺の中のもう一人が
「違う」
と、叫ぶ。
目を閉じても、浮かぶのは嬉しそうな浅葱の顔で、自分を現実に引き戻す。
香水の匂いで、吐きそうになる………。
「ねぇ………キスして………。」
唇を求めて、首にしがみつき、身を寄せられる。
不意に、女の肩を押し、引き離す。
「………やめた。」
身を離し、ベッドから降りる。
乱れた服を直し、上着を羽織る。
急な出来事に、ただ驚く女は身を起こし、
「どうしたの?」
と、戸惑う。
「………無理。帰るわ。」
それだけ告げると、部屋を後にする。
後ろで女が何かキャンキャン騒いでたけど、吐きそうな俺には、どうでも良いことだった………。
部屋を出て、しばらく歩く。
酔いと、香水の匂いで、胸がモヤモヤする。
(浅葱が忘れられなくて他の女が抱けないとか、笑えるわ………。)
今の自分の惨めさに笑いしか出てこない。
なんとなく、向かった先には、いつものバー。
【雪月花】の看板を見つけ、ドアを開ける。
-カランカラン-
入店に気付いた楓さんがこちらを見る。
それと共に、人影が奥の部屋に消えていく。
「あら、一人なんて珍しいじゃない?」
楓さんは、いつもと変わらない口調でおしぼりを出してくれる。
「新しいバイト?」
人影が消えてった方を見ながら問い掛けると、楓さんは一瞬だけそちらを見て、
「まぁ………そんなもんよ。迷子の子猫を拾ったの。
今のまっちには見せてあげないけどね(笑)
食べられたらたまったもんじゃない!」
そう言って笑う。
(迷子の子猫ね……)
「ねぇ、楓さん。
強い酒ちょうだい。」
まだ、さっきまでの匂いが鼻から抜けず、少しだけ苛立つ。
強い酒を呑んで忘れてしまいたい。
少しだけ呆れた顔をした楓さんは、何か作り始めた。
「しかし、あんた、だいぶ女臭いわね。そんなで帰ったら浅葱ちゃんが怒るんじゃない?」
そう言うと、カウンターから出てきて消臭剤をかけられる。
「まぁ………さっきまで女と居たしね。」
匂いを消したかったからありがたかった。
「女って………」
「浅葱、出てった………。俺が忙しかったから、飽きられたのかもね………。
女は、抱けなかった。
浅葱の笑顔が頭から離れなくて………。」
ぼんやりと、出されたナッツを食べながら答える。
楓さんは、あらぁ、と返すだけで、深くは聞かない。
カチャカチャと、シェイカーで何かを作ると、そっとテーブルの上に置いたショートのカクテルグラスに注いでくれる。
「………なに、これ?」
俺には合わないショートグラス。
そこに、黄色いカクテルが注がれる。
「【ジプシー】よ。酒の味もわからないほど酔っ払ってるまっちにはこれで充分。」
量が足りない。
そう思いつつ口をつけると。
「………甘い。」
ウォッカベースだけど、口当たりの甘いカクテル。
「まっちが来たら、これを出してくれって注文してった子がいるのよ。」
楓さんは、タバコに火をつけると、ため息のように吐き出す。
「へぇ、ファンか何か?」
なんでこのカクテルなのか、誰がそんなもの頼んだのか。
理由はわからなかったけど、それもどうでも良かった。
酔いが回り、カウンターに肘をついてぼんやりする。
楓さんも、無駄に話しかけず、居てくれる。
「俺が悪いのはわかってるんだ………。
浅葱に話す間も与えなくキレてた………。」
「わかってるなら、話すればいいじゃない。」
「もう、俺に心は向いてないって言われるのが怖いよ………。」
なんとなく眠くて。
机に突っ伏してしまう。
「…………浅葱に…………会いたい………。」
誰に言うでもなく。
そう呟いて、眠気に身を委ねた。
「【ジプシー】のカクテルの意味は「しばしの別れ」よ。あんたには、きっとわからないでしょうけどね………。」
タバコを揉み消した楓さんは、眠っている眞にそっと呟いた。
「浅葱ちゃん、まっち、眠っちゃったわよ。顔くらい見てあげたら?」
奥の部屋に続くカーテンを上げて声をかければ、奥のソファーにはタオルで顔を覆い、声を殺して泣く姿。
楓さんは近寄ると、優しく頭を撫でる。
「あんた達は、本当にめんどくさいカップルね。」
呆れながら笑ってくれる。
「………ごめんなさい………。」
話は全て聞こえていた。
完全に嫌われてると思ってたのに………。
まだ眞の中に私は居る。
それだけが、嬉しかった………。
お店に出て、カウンターで眠る眞は、心なしか痩せていた。
疲れきった顔。
そっと、ブランケットをかけて背中に額を当てる。
「………眞、ごめんね…………。」
まだ、眞の元へは帰れない。
そっと、頬にキスをすると、奥の部屋に戻った。
(……眞、ごめんね……)
懐かしい匂いがした………。
いつも抱き締めるとする、浅葱の匂い。
「…………。」
ゆっくりと目を開けると、そこには呆れ顔の楓さんがタバコを吸っていた。
「うちは仮眠室じゃないんだけど?」
いつの間にか眠ってたのか。
起きると、肩にはブランケットがかかってた。
浅葱の使うハンドクリームと同じ匂いがした。
「ごめん。コレ、ありがとう。」
畳んで渡すとそっと机の横に置く。
「酒1杯で酔って寝るほど疲れてるなら家に帰って寝なさい!」
怒られて苦笑いするしかない。
「ハイハイ。ご馳走さまでした。」
支払いをして、帰ろうと歩き出したとき。
「まっち!」
急に呼ばれて振り返ると、ミネラルウォーターのボトルが飛んできた。
どうにかキャッチできた。
「真実を、見謝るんじゃないわよ?」
言われた意味はよくわからなかったけど、ありがとう、と手を振って店を出た。
まだ、どれが真実なのかすらわからない俺には、見謝ることすらできない。
でも、楓さんの店を出た俺は少しだけ心が楽になった。
帰ったら、久しぶりにベッドに入ろう。
浅葱の匂いがするあの部屋に
帰ろう…………。