主は最後までいい顔はしなかった。

せっかく仲間になれるかもと期待したろうに。


申し訳ないことをした。


連れてこられた地下牢には小さな畳と少しだけ地上の光が入る格子窓。

「紅蓮丸、お前、本当に良いのか？」

ここに連れてきたのも、手枷をしたのも和泉守だったけど、ずっとこの調子で聞いてくる。


「………なにも。目覚めてしまった以上、自分が、いつ、どうなるかなんてわからない。
それなら、せめてこうしておいた方が主としても、和泉達も、安心だろう。」

畳に座り外を見上げると、和泉はため息をつきながら牢の鍵を閉めた。


「だからって、お前は今狂ってない。何かあればすぐに声をかけろよ？」


空を見上げたまま返事を返さないでいると、和泉は諦めて去っていった。


これでいい。
このまま何も害をなさず解刀を選ばれたほうがいい。



外からは短刀達だろう、賑やかな笑い声と、走る音が聞こえてきた。