和楽器バンドの夢専用の名前になります♪
風に舞う
君の名前は?
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「……………。」
「こっち。」
エレベーターが開き、降りようとすると、無言でフリーズしている浅葱。
「おぅ、ケン坊、珍しく女なんか連れてきたのか。」
俗に言う「ソープランド」の中にある俺の部屋に行くのに、フリーズしたままの浅葱を連れて降りると、受付に座るおっさんが新聞を畳んでこっちを見た。
気にせず通り過ぎると、個室から出てきた女が俺を見上げる。
「ケンおかえりー。彼女~?」
茶化すように身を乗り出して浅葱を見ようとするから、浅葱の腕を引っ張り部屋に入れる。
「そんなんじゃねぇよ。早く仕事しろ。」
適当にあしらってドアを閉めてる。
「適当に座れよ。」
ベッドに携帯と財布を放り投げて冷蔵庫を開ける。
でも、浅葱は入り口から動く気配もなく固まってる。
隣の部屋からは風俗特有の音が響いてくる。
「俺、親居なくてここが家みたいなもんだから、気にすんな。」
笑いながらペットボトルを出して呼べば、オズオズとドア近くに座り込む。
「………。」
まぁ、環境の事を驚くのは当たり前だろう。
タケミッチが来た時もそうだったから。
「コーラで良いか?」
これしかねぇけど。
そう言いながら浅葱の前にグラスを置けば、そっと受け取って飲み始める。
「あちぃな。」
さっきから俺だけ話してる気はするけど。
エアコンが効き始めるのを待ってベッドに腰掛けると、浅葱を見つめる。
浅葱は1口飲んだグラスをテーブルに戻して俯いている。
見たところ、荷物は学校に通うくらいしかない。
家出にしては荷物が少なすぎる。
色々聞いても良いけど、今はそのタイミングでもない気がする。
ふぅ、とため息を吐き立ち上がると、浅葱の体がピクりと動いた。
「わりぃ、汗かいて気持ち悪いから風呂入ってくるわ。」
適当にやってろ。
そう言い残すと、着替えを持って風呂に向かった。
一日中暑かったせいで、軽くシャワーを浴びればさっぱりする。
首にタオルを下げて上半身裸のままスウェットパンツを履き、エアコンの効いた部屋に戻ると。
部屋を見渡していた浅葱と目が合う。
「あ………」
見渡していた事をバツが悪いと思ったのか、すぐに目を逸らした。
「涼しいなぁ。
浅葱、お前も入ってくれば?」
髪を拭きながら名前を呼べば、今まで以上に跳ねる浅葱の体。
(あ、そっか。)
俺が名前を知ってる事は浅葱は知らない。
「今日、タケミッチのクラス行ったらお前見つけてさ。
ヒナちゃんに名前聞いた。
俺は龍宮寺堅。
ドラケンでいい。
浅葱のこと、深くは聞いてねぇけど、帰りたくないなら下手に外居るよりここのが安全だろ。
帰りたくなったら帰ればいいし。」
とりあえず、汗かいてるだろうし、風呂入ってくれば?
と、タオルとTシャツとスウェットを目の前に置くと。
少しそれを見つめたまま固まってたけど。
「………お借りします………。」
ポツリと呟くと、タオルとかを抱えて風呂に向かっていった。
ドアが閉まり、しばらくしてシャワーの水音が聞こえると。
「………やっぱり。
ちゃんと喋れるじゃん………。」
なんだか色々疲れてベッドに倒れ込む。
ヒナちゃんや学校にいるヤツらがどんなイメージを持って浅葱と接してるかはわからねぇけど。
なんとなく困った顔はわかるようになった。
帰ると殴られるってことは、親か、兄弟か。
どっちにせよ、顔に傷が付くくらいなんだからまともではない。
(………まぁ、そのうち話するだろ………。)
ベッドの横にある救急箱から湿布や絆創膏を出してテーブルに置いておく。
たぶん必要だから。
気にせずに雑誌をパラパラ見ていると。
髪の毛を拭きながら浅葱が出てきた。
俺の服を着て、制服は綺麗に畳んで。
「………ありがとうございました。」
ぺこりとお礼を言い、また同じ所に座ろうとするから。
「ちょっと、こっち来い。」
手招きをしてテーブルの横に呼べば、目は合わせないけど、大人しく近くに座る。
アザになってる所に湿布を、口元の傷に絆創膏を貼ると、少し痛そうに顔を顰める。
「口の中、まだ切れてるのか?」
聞けば、浅葱は頷く。
まぁ、大概殴られてこれだけアザになってたら口の中は切れてるだろう。
殴り合いなんてしょっちゅうだから、痛みくらいわかる。
「じゃあ、喋りずらいわな。」
笑いながらゴミを片付けて、ベッドに腰掛ける。
「髪の毛、乾かしてやるからこっち来い。」
足の間に座らせて乾かしてやろうとしたけど。
自分でやると首を振っていた。
それでもドライヤーを持って待ってると、諦めたのか、足の間に座り込む。
「ドライヤーあちぃからさっさとやるぞー。」
熱風を当てながら髪を乾かせば、柔らかい髪が手に絡む。
(細い体だな………。)
手も足も首も、細い体。
なんとなく、乾かしながら首筋を見れば、またアザを見つける。
たぶん体はもっとアザだらけだろ。
少しだけムカつく。
女、子供に手を上げる奴は許せないってのもあるけど。
自分が持っていない「家族」だからこそ、大切にしてほしかった。
「………終わり。」
髪を乾かし終えて、ドライヤーを片付けると、浅葱は少し離れたところに座り直した。
「こんな環境だから、女の体見ても欲情しないから安心しろ。」
笑って横になると。
お互い会話することも無く時間が過ぎていく。
俺は雑誌読んでるけど、浅葱は何もせずぼんやりしている。
そのせいか、時々眠そうに目を閉じる。
「………ったく。」
眠いなら寝ればいいのに。
少しだけ可笑しくて。
そして、そんな姿が少しだけ可愛いと思えた。
「浅葱。」
声を掛ければ、ウトウトしていたのか目が開く。
「そんなとこでウトウトするならこっちで寝ろ。」
そう言いながら腕を引っ張りベッドに上げれば。
一瞬驚いて固まった。
でも、そんなの気にしない。
横に寝かせて、毛布をかけると、また雑誌を開いた。
「寝たいなら勝手に寝ろ。」
ぶっきらぼうに言ってまた視線を雑誌に戻せば。
モゾモゾと、毛布に包まり俺の横で丸くなった。
「………ありがとう………。」
ポソりと呟いて、毛布に顔を埋めてしまった。
少しだけ嬉しくなり、雑誌に目を向けたままポンポンと頭を撫でれば。
次第に聞こえてくる規則正しい寝息。
雑誌を横に置いて毛布を捲れば。
疲れた顔をして眠る姿。
「可愛いとこもあるじゃねぇか。」
クスリと笑うと。
電気を消して俺も毛布に潜り込む。
ベッドが広いわけじゃないから。
浅葱を抱えて目を閉じる。
力いっぱい抱きしめたら骨が折れそうな華奢な体。
死にたくなるほど何を経験したのか。
全く想像できねぇけど。
話したくなったら話せばいい。
無表情と困った顔しか見てない。
これが、笑うようになったら。
少しは可愛いんじゃねぇかって。
そんなことを考えながら、眠りに落ちていった………。