和楽器バンドの夢専用の名前になります♪
短編
君の名前は?
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都会の夜明け前。
昼間とは全く違う、殆ど人なんて歩いてない。
車もそんなに走ってない。
まるで、この世界に取り残された気分になる。
自分が選んだ夢のためにここに来た。
まだ、自分の夢の為に働き出した浅葱は地元に残ってる。
もう、1年以上会ってない……。
俺は忙しすぎて。
メールの返信すら疎らなのに。
いつも、気を使ってくれて。
「無理だけはしないで?」
まだ浅葱は俺を待っててくれてるのかな?
俺がちゃんと基盤を作って、大丈夫だって思えたら、浅葱を迎えに行くって決めてたのに………。
「………はぁ………。」
誰も聞いてない大きなため息が響く。
こんな時間にスタジオを出て、家路についているけど。
毎日続く先の見えない仕事。
作らなきゃいけない曲。
好きで始めたはずなのに。
今は、追い詰められる度に逃げ出したくなる。
(君に会いたい、抱きしめたい……)
見上げた夜空はまだ薄暗く。
きっと浅葱はまだ眠っている時間。
もしかしたら、もう浅葱を好きでいるのは自分だけで、浅葱は俺に気持ちなんて無いのかもしれない。
だから、会いたいとも言わないのかもしれない。
仕事で煮詰まりすぎて、嫌なことばっかりが頭を回る。
ぼんやりと、誰もいない駅前広場のベンチに座り、タバコに火をつける。
ふわりと舞い上がる紫煙を見つめ、またため息をつく。
(………帰りたいな………。)
地元に?
それとも、何にでも本気で取り組めたあの頃に?
それとも、笑ってくれる浅葱の横に………?
出ない答えに、
吐き出せない弱さに。
鼻の奥がツンとして、視界が少しだけ霞む。
「浅葱の声、聞きたいな………」
タバコを消して、立ち上がると、また歩き始める。
重い足取りで俯きながらポケットから携帯を取り出せば。
最後に浅葱から連絡が来たのは2週間も前。
レコーディングが忙しくて、大した返事すらしてなくて。
きっと眠ってる時間だから。
電話もできない。
会いたいのに、声が聞きたいのに。
すぐに行ける距離じゃない。
それが、辛い………。
(もう帰りたい。
此処に留まる事に疲れた。
夢なんて見るべきじゃなかった。
僕の両手では支えきれない。)
(今すぐ此処を離れて
君の町まで迎えに行くから
誰にも触れられない場所で
このまま静かに暮らそう。)
今、浅葱の声を聞いたら、そんな弱音が出そうで。
画面を消してまたポケットに戻す。
帰って眠れば少しはこの心も変わるはずだから。
そう言い聞かせて、また俯いて歩き出す。
空は少しだけ明るくなり始めて。
もうすぐ家に着く道に出る。
ー~♪♪~♪ー
不意に鳴り響く携帯の着信音に体が跳ねる。
(こんな時間に誰だ……?)
跳ねる心臓を落ち着かせながら携帯を見れば。
今、1番声が聞きたい人………。
「………はい?」
冷静を装い着信に出ると。
「あ、眞?おはよ!!」
絶対起きてると思ってなかったのに。
浅葱は嬉しそうに話し始める。
「おはよ。早起きだね。」
冷静に、落ち着いて。
今にも崩れそうな心を抑えながら、俯いて歩き続ける。
「えへへ。今日はね。
眞に話したいことあって。」
浅葱は元気なのに、少し落ち着いた口調。
あぁ、別れがくるのか………。
切り出されるであろう、別れ話を、俺は落ち着いて聞けるだろうか………。
何?
そっけなく言ってみるけど。
内心、聞きたくはなかった。
「今って、帰ってる途中?」
そう聞く浅葱の後ろも車が通るような音がしてるけど。
「あぁ、もうすぐ家。」
そっか。
と。
別れ話なら早くしてほしいとすら思ったのに。
「ねぇ、眞。
顔、上げて?」
まるで、今の俺を見透かしたような言葉。
なんのことだろうと思ったけど。
歩いている歩道橋の上を見上げると。
そこには。
会いたくて、抱きしめたくて仕方なかった姿。
やっと人の顔が認識できるくらいの明るさの中、携帯を耳に当てて手を振ってる。
「浅葱!なんでっ………」
あまりの驚きで言葉が繋げない。
まるで幻のように。
地元で見送ってくれたあの日と変わらない、暖かい笑顔。
通話を終了させて、ゆっくりと歩いてくる。
「おはよ?」
目の前まで来ると、頬を赤く染めて笑う。
まだ少し寒い夜明けに、なんでここに居るのか分からなくて。
「なんで、ここに居るの?」
浅葱だって仕事があるはず。
平日なんだからなおのこと。
深くを話さない浅葱に疑問だらけで。
さっきまでの黒い気持ちが霞む。
「ごめんね。
会いたくて、来ちゃった(笑)」
イタズラをした子供のように、えへっと笑う浅葱は、あの日と変わらなくて。
これが夢だったら、本当に嫌だから。
浅葱の腕を掴む。
色んな事を話したいのに、すんなり出てこなくて。
また、俯いてしまう。
浅葱は、そっと、暖かい手で俺の頬を包んで顔を上げさせてくれる。
「こんな時間まで、お疲れ様。
忙しいのに、頑張ったね。」
心配そうに、見つめる瞳と視線が絡む。
周りに言われる言葉とは違う、浅葱の言葉。
他人事の『頑張って』じゃない。
自分を認めてくれる『頑張ったね』。
欲しかった言葉。
鼻の奥が痛くなって。
思わず浅葱を抱きしめる。
溢れる涙を見られたくなくて。
浅葱の感触が懐かしくて。
強く、強く抱きしめる。
「眞………、ちょっと苦し………。」
クスクスと笑いながら、腰に手を回して抱きしめ返してくれる手。
「もう、辞めたいんだ………。疲れた………。
浅葱と2人で、誰も知らないとこで暮らしたい………。」
止まらない涙で、鼻声で。
肩に頭を埋めて話す。
浅葱は何も言わないで聞いてくれる。
「辛いんだ………。
期待されるのも、頑張ってるのにそれ以上を求められるのも。
浅葱と会えないのも、触れられないのも辛いんだ………。」
背中に回された手は優しく撫でてくれる。
「そっか………。
眞は、今それを辞めて後悔しない?」
たぶん、浅葱はわかってる。
俺が辞めるって言えば止めないのも。
そして、辞めることを選択できないのも。
「後悔する………。
辞めたいけど、投げ出したくない………。」
矛盾だらけの纏まらない言葉が溢れてしまう。
それでも、浅葱は落ち着いて聞いてくれる。
「そうだね………。
眞が、「よし、もういいや」って思える所までやるのを、私は一緒に見届けたいな……。」
そう言うと、ゆっくりと体を離して涙でぐしゃぐしゃの俺の顔を袖で拭ってくれる。
「でも、すぐに会えない距離だから、辛い………。」
ずっとそうだった。
選んだのは俺なのに。
傍に居ないことが辛くて、不安で。
それなのに、浅葱は笑ってる。
「言ったでしょ?一緒に見届けたいなって。
私、向こうで納得いくまで夢叶えてきたよ。」
笑ってまだ零れる涙を拭ってくれるけど。
浅葱の瞳も潤んでいる。
浅葱の言っていることが分からなくて。
言葉が出ないでいると。
両手で包んでいてくれた顔が引き寄せられて、触れるだけのキスをくれる。
「眞が大変な時、支えてあげたいから。
幸せな時、一緒に横で笑いたいから。
仕事辞めてきちゃった(笑)」
そう言って笑う。
一緒に居たいから仕事を辞める選択に唖然とする。
夢を諦めたんじゃなくて、やるだけやって辞めた。
「それに、私の仕事は地元じゃなくても出来るしね。」
朝日が登り始めて浅葱の顔を照らせば。
スッキリした顔をしてる。
「浅葱………」
仕事も辞めて地元も離れて。
それでも一緒に居たいって言ってくれた。
今の自分が1番欲しかった言葉と、存在。
「………ありがと………。
もう少し、頑張ってみるから一緒に居て……?」
やっと止まった涙を拭いて笑うと。
浅葱は笑って頷いてくれる。
「頑張るのはいいけど、あんまり無理しないで………?」
少しだけ心配そうに見つめてくれる。
時々全てが嫌になって、投げ出して逃げたくなるけど。
横に浅葱が笑っていてくれるなら、もう少しだけこの都会で足掻いても良いかもしれない。
例え無駄なことかもしれなくても。
浅葱と笑って居られれば、それでいい………。
ーおしまいー
昼間とは全く違う、殆ど人なんて歩いてない。
車もそんなに走ってない。
まるで、この世界に取り残された気分になる。
自分が選んだ夢のためにここに来た。
まだ、自分の夢の為に働き出した浅葱は地元に残ってる。
もう、1年以上会ってない……。
俺は忙しすぎて。
メールの返信すら疎らなのに。
いつも、気を使ってくれて。
「無理だけはしないで?」
まだ浅葱は俺を待っててくれてるのかな?
俺がちゃんと基盤を作って、大丈夫だって思えたら、浅葱を迎えに行くって決めてたのに………。
「………はぁ………。」
誰も聞いてない大きなため息が響く。
こんな時間にスタジオを出て、家路についているけど。
毎日続く先の見えない仕事。
作らなきゃいけない曲。
好きで始めたはずなのに。
今は、追い詰められる度に逃げ出したくなる。
(君に会いたい、抱きしめたい……)
見上げた夜空はまだ薄暗く。
きっと浅葱はまだ眠っている時間。
もしかしたら、もう浅葱を好きでいるのは自分だけで、浅葱は俺に気持ちなんて無いのかもしれない。
だから、会いたいとも言わないのかもしれない。
仕事で煮詰まりすぎて、嫌なことばっかりが頭を回る。
ぼんやりと、誰もいない駅前広場のベンチに座り、タバコに火をつける。
ふわりと舞い上がる紫煙を見つめ、またため息をつく。
(………帰りたいな………。)
地元に?
それとも、何にでも本気で取り組めたあの頃に?
それとも、笑ってくれる浅葱の横に………?
出ない答えに、
吐き出せない弱さに。
鼻の奥がツンとして、視界が少しだけ霞む。
「浅葱の声、聞きたいな………」
タバコを消して、立ち上がると、また歩き始める。
重い足取りで俯きながらポケットから携帯を取り出せば。
最後に浅葱から連絡が来たのは2週間も前。
レコーディングが忙しくて、大した返事すらしてなくて。
きっと眠ってる時間だから。
電話もできない。
会いたいのに、声が聞きたいのに。
すぐに行ける距離じゃない。
それが、辛い………。
(もう帰りたい。
此処に留まる事に疲れた。
夢なんて見るべきじゃなかった。
僕の両手では支えきれない。)
(今すぐ此処を離れて
君の町まで迎えに行くから
誰にも触れられない場所で
このまま静かに暮らそう。)
今、浅葱の声を聞いたら、そんな弱音が出そうで。
画面を消してまたポケットに戻す。
帰って眠れば少しはこの心も変わるはずだから。
そう言い聞かせて、また俯いて歩き出す。
空は少しだけ明るくなり始めて。
もうすぐ家に着く道に出る。
ー~♪♪~♪ー
不意に鳴り響く携帯の着信音に体が跳ねる。
(こんな時間に誰だ……?)
跳ねる心臓を落ち着かせながら携帯を見れば。
今、1番声が聞きたい人………。
「………はい?」
冷静を装い着信に出ると。
「あ、眞?おはよ!!」
絶対起きてると思ってなかったのに。
浅葱は嬉しそうに話し始める。
「おはよ。早起きだね。」
冷静に、落ち着いて。
今にも崩れそうな心を抑えながら、俯いて歩き続ける。
「えへへ。今日はね。
眞に話したいことあって。」
浅葱は元気なのに、少し落ち着いた口調。
あぁ、別れがくるのか………。
切り出されるであろう、別れ話を、俺は落ち着いて聞けるだろうか………。
何?
そっけなく言ってみるけど。
内心、聞きたくはなかった。
「今って、帰ってる途中?」
そう聞く浅葱の後ろも車が通るような音がしてるけど。
「あぁ、もうすぐ家。」
そっか。
と。
別れ話なら早くしてほしいとすら思ったのに。
「ねぇ、眞。
顔、上げて?」
まるで、今の俺を見透かしたような言葉。
なんのことだろうと思ったけど。
歩いている歩道橋の上を見上げると。
そこには。
会いたくて、抱きしめたくて仕方なかった姿。
やっと人の顔が認識できるくらいの明るさの中、携帯を耳に当てて手を振ってる。
「浅葱!なんでっ………」
あまりの驚きで言葉が繋げない。
まるで幻のように。
地元で見送ってくれたあの日と変わらない、暖かい笑顔。
通話を終了させて、ゆっくりと歩いてくる。
「おはよ?」
目の前まで来ると、頬を赤く染めて笑う。
まだ少し寒い夜明けに、なんでここに居るのか分からなくて。
「なんで、ここに居るの?」
浅葱だって仕事があるはず。
平日なんだからなおのこと。
深くを話さない浅葱に疑問だらけで。
さっきまでの黒い気持ちが霞む。
「ごめんね。
会いたくて、来ちゃった(笑)」
イタズラをした子供のように、えへっと笑う浅葱は、あの日と変わらなくて。
これが夢だったら、本当に嫌だから。
浅葱の腕を掴む。
色んな事を話したいのに、すんなり出てこなくて。
また、俯いてしまう。
浅葱は、そっと、暖かい手で俺の頬を包んで顔を上げさせてくれる。
「こんな時間まで、お疲れ様。
忙しいのに、頑張ったね。」
心配そうに、見つめる瞳と視線が絡む。
周りに言われる言葉とは違う、浅葱の言葉。
他人事の『頑張って』じゃない。
自分を認めてくれる『頑張ったね』。
欲しかった言葉。
鼻の奥が痛くなって。
思わず浅葱を抱きしめる。
溢れる涙を見られたくなくて。
浅葱の感触が懐かしくて。
強く、強く抱きしめる。
「眞………、ちょっと苦し………。」
クスクスと笑いながら、腰に手を回して抱きしめ返してくれる手。
「もう、辞めたいんだ………。疲れた………。
浅葱と2人で、誰も知らないとこで暮らしたい………。」
止まらない涙で、鼻声で。
肩に頭を埋めて話す。
浅葱は何も言わないで聞いてくれる。
「辛いんだ………。
期待されるのも、頑張ってるのにそれ以上を求められるのも。
浅葱と会えないのも、触れられないのも辛いんだ………。」
背中に回された手は優しく撫でてくれる。
「そっか………。
眞は、今それを辞めて後悔しない?」
たぶん、浅葱はわかってる。
俺が辞めるって言えば止めないのも。
そして、辞めることを選択できないのも。
「後悔する………。
辞めたいけど、投げ出したくない………。」
矛盾だらけの纏まらない言葉が溢れてしまう。
それでも、浅葱は落ち着いて聞いてくれる。
「そうだね………。
眞が、「よし、もういいや」って思える所までやるのを、私は一緒に見届けたいな……。」
そう言うと、ゆっくりと体を離して涙でぐしゃぐしゃの俺の顔を袖で拭ってくれる。
「でも、すぐに会えない距離だから、辛い………。」
ずっとそうだった。
選んだのは俺なのに。
傍に居ないことが辛くて、不安で。
それなのに、浅葱は笑ってる。
「言ったでしょ?一緒に見届けたいなって。
私、向こうで納得いくまで夢叶えてきたよ。」
笑ってまだ零れる涙を拭ってくれるけど。
浅葱の瞳も潤んでいる。
浅葱の言っていることが分からなくて。
言葉が出ないでいると。
両手で包んでいてくれた顔が引き寄せられて、触れるだけのキスをくれる。
「眞が大変な時、支えてあげたいから。
幸せな時、一緒に横で笑いたいから。
仕事辞めてきちゃった(笑)」
そう言って笑う。
一緒に居たいから仕事を辞める選択に唖然とする。
夢を諦めたんじゃなくて、やるだけやって辞めた。
「それに、私の仕事は地元じゃなくても出来るしね。」
朝日が登り始めて浅葱の顔を照らせば。
スッキリした顔をしてる。
「浅葱………」
仕事も辞めて地元も離れて。
それでも一緒に居たいって言ってくれた。
今の自分が1番欲しかった言葉と、存在。
「………ありがと………。
もう少し、頑張ってみるから一緒に居て……?」
やっと止まった涙を拭いて笑うと。
浅葱は笑って頷いてくれる。
「頑張るのはいいけど、あんまり無理しないで………?」
少しだけ心配そうに見つめてくれる。
時々全てが嫌になって、投げ出して逃げたくなるけど。
横に浅葱が笑っていてくれるなら、もう少しだけこの都会で足掻いても良いかもしれない。
例え無駄なことかもしれなくても。
浅葱と笑って居られれば、それでいい………。
ーおしまいー
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