浅葱と出会ったときはあんなに寒くて雪が降っていたのに。

1ヶ月近くになり、関東でも桜の便りがちらつくようになった。


毎日仕事が忙しかった浅葱だけど、それも工場の閉鎖とともに終わりを告げた。

寂しそうに、でも、どこかすっきりした浅葱は仕事で使っていた服などを片付けていた。


「よし！」
何かを思い立ったように浅葱が立ち上がると、パソコンと睨み合ってた俺にかけよってきた。


「忙しい？」
「いや、仕事してるわけじゃないから(笑)
どうしたの？」

パソコンを閉じて浅葱を見上げると嬉しそうに荷物を片付けてと指示した。

「桜見に行こう！！」

珍しいことを言うものだとは思ったけど、最近作詞をするのに家の中ではあんまり良いものが浮かばなく、それも有りかと思った。


「行くか。でも、今から車出したら時間かかるんじゃない？」

そういうと、
「世の中には新幹線とゆー素敵な乗り物があるのです♪」
新幹線で行くような所まで行きたいのかと驚いたけど、まぁ、良いかとなるべく目立たない格好と帽子と眼鏡で浅葱にわからない程度に変装をした。

「私もたまには眼鏡しよっかな～♪」
同じような格好がしたいのか、帽子を目深に被り、眼鏡をかけていた。