冷えきった空気が心地よい。

自販機で買ったコーヒーを飲みながらベンチに腰かけるとタバコに火をつけた。

紫煙が漂う。

誰も居ない。
誰にも咎められない空間。


(タバコ………旨いな………(笑))

いつもイライラや仕事で息が詰まったとき、気が付くと吸ってたから旨いとか考える余裕もなかった。

ただ当たり前にそこにあるもの。

それは今まで自分が和楽器バンドの中にある姿を彷彿とさせていた。

ぼーっと考えもせずタバコとコーヒーなんていつぶりだろうか？


浅葱は、きっとそれを与えてくれたんだ。



タバコの灰が終わる頃、ふいに後ろから両手で頬を包まれた。

「！？」

「し～んさ～ん。
ほっぺた冷たくなってますよ～？」
俺が居なくなった後に目を覚ましたのだろう。
いままで眠ってた浅葱の手は暖かくて。


「すみませーん。
一服してました～(笑)」

頬を包まれたまま真上に顔を見上げると
ズルいという表情でこちらを見つめている。

「一人だけコーヒーとか、タバコとか。
ズルくないですか？」

「なんでずっと敬語(笑)
ハイハイ。お嬢さん、椅子を暖めておきましたのでこちらへどうぞ？
私はコーヒーでも買ってきましょう。」
俺が立ち上がると、俺が座ってた場所に浅葱が座る。
それを確認して浅葱の大好きなカフェラテを買いに。


浅葱も、俺ほどではないけど、たまにタバコを吸う。


浅葱いわく、「深呼吸」なんだそうだ。

それも、俺にはわからない世界だったけど、
旨いと思えることは深呼吸できてるのかなと。

カフェラテを持っていくと嬉しそうに飲んでいた。
何かを口にする時とか、嬉しいとき、本当に犬みたいだなと思う。