その建物はマゼラブ魔法学校だった。

その煙は学校内を暴れまわった後、学校を取り囲むように黒い煙で包んでゆく………。


そこでルエリーヌは目が覚めた。
理由は、ラフィーが鼻をつまんでおり、息苦しさで目を覚ましたのだ。

「…苦しいじゃないの!……もう!レディの鼻をつまむなんて失礼しちゃうわ?」

「…んん?レディ?どこに居るんだ?」

とぼけるラフィーに呆れたようにため息をついたルエリーヌは、今までより更に鮮明になってゆく夢に恐怖心を覚えていた。



そして事件は起こった。

それは飛び級を見事合格し、6年生へと(飛び級には段階があり、魔力の大きさと学問の能力により、1年飛ばす者もいれば、最上級生の6年生へと進級する者もいる)進級したある日。
いつもと変わらない風景だったが、どこかルエリーヌは胸騒ぎがした。


空からは黒く渦を巻いたものが迫りつつあった。

……そんな中、ルエリーヌは闇の魔術で闇を払う呪文の勉強をしていた。


黒い煙は大きくなり、やがて複数の塊のようになり、凄まじい勢いでマゼラブ魔法学校へと風を裂き、渦を巻いて学校へと空から矢を刺すようにして一直線に降ってきた。


そして、一瞬にして建物の中へと入り込む。


このただならぬおぞましいような気配に気付いたルエリーヌは、ジテリア先生に伝えると教室を出て、その気配のする方へと駆けた。


黒い煙は大広間に居た数人の生徒の体めがけ、その体をすり抜けた。

体をすり抜けられた生徒は固まり、石のように動かない。


大広間へと辿り着いたルエリーヌは、あの夢が予知夢であった事を知り、黒い煙が次々と生徒の体をすり抜けていくのを見て、先程教わったばかりの闇払いの呪文を口にした。


「……リグリシオ!」"闇の力よ去れ"

放たれた魔法は黒い煙を巻き込み消え去っていく。

と、後ろから学校長の声が聞こえた。

「…マヴェゼ・ラルフ！」"結界よ学校を包め"

学校長の圧倒的な魔法により、学校に結界がはられた。


「…ひとまずこれで一安心だろう。しかし、驚いた。闇払いの呪文を使いこなせるとはな」