第4章 もう落ちこぼれとは呼ばせない

翌日。  

今日は筆記試験だ。ルエリーヌはラフィーの分の朝食を机に置いた後、試験教室に向かった。

だが、そこには怖いくらい笑顔を浮かべたバリマースが待ち構えていた。



「……ご、ごきげんよう」

「…昨日はまぐれで合格したのでしょうけど、今日はどうかしらね?」

そう言ったバリマースに対し、ルエリーヌは黙っていた。

「…まあ良いわ。今日は正々堂々、勝負しなさい?……これで私よりも良い点数を取れたら少しは貴方の事、認めてあげるわ?……でも、私より低い点数だったら……。そうね、ラフィーチープを私に返すと約束しなさい?」

「……なぜ今になってからラフィーを?」

ラフィーがバリマースに魔法をかけられているネズミだというのは前から知っていたが、ルエリーヌから取り返すのは簡単な事だろう。

……しかし、バリマースはそうはしなかった。

それどころか一切、関わってこようともしなかったのに、なぜ今更?という疑問ばかりが浮かんでは消えていく。


「…あのネズミが必要なだけよ。…魔法は解くつもりはないから安心しなさい?」

「…分かったわ。その勝負……喜んで受けるわ」

慎重に言葉を選んでいるようにも見えたバリマースを見たルエリーヌには、断る理由などなかった。


むしろ、良い機会でもあった。

何せ、あだ名を付けた本人から認めても良いと言ってくれているのだから。

ほんの少しでも認めてくれるのならばと、可能性を捨てたくないルエリーヌはそう思ったのだ。


「…ふふ。皆さん聞きまして?私からの挑戦状を"煙突の下のルエリーヌ"が受けたわ?」

その瞬間。バリマースに盛大な拍手が送られ……それを待っていたように、着席を告げる鐘の音と、学校長が教室に入ってきた。
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