第3章 目覚める魔力

その答えにファイス先生は流石だねと言うように、満足そうに頷いた後、液体を小瓶に入れて渡した。

お礼を言った後、もらった瓶を手に宿舎部屋に戻ったルエリーヌだが、部屋の前には虫の死骸が置いてあった。


最初はラフィーの仕業かと思い気にはしていなかったのだが、毎日続く行為にラフィーではないと確信した。

そんなある日。

日に日に増えていく死骸の量にいい加減我慢できなくなったルエリーヌは、どうして良いか分からなくなり、気付けば中庭のベンチに座り唇を噛み締めていた。


……すると。


「…また泣いているのかね?」

突然上から降ってきた声にルエリーヌは慌てて顔を上げた。

「…が……学校長!!」

立ち上がりそうなルエリーヌを制した学校長は隣に座り静かに口を開いた。


「…隠さなくても良い。君が落ち込んでここに来ていたのは前から知っている」

そう、あの日。ルエリーヌを見ていたのは学校長だったのだ。それを知ったルエリーヌは、肩を竦めてみせた。


「…自分の魔力の少なさに何も出来ない自分が悔しいのです」

「…誰だって最初は皆、どこかで躓くものだ。それをどうやって乗り越えるか。その答えは、これから探せば良い。……違うかね?」

そう言って微笑んだ学校長。

………確かに先生の言う通りだ。そう思ったルエリーヌは黙って頷いた。


「…それに、君には他の生徒には無い不思議な力を感じる。…その力はいつか実を結ぶ。私はそう信じている」

ルエリーヌには、学校長が言ったものが何を表しているのか良く分からなかったが、とても嬉しく感じた。



「…さあもう行きなさい。アレブレッソ先生には上手く言っておこう」

立ち上がった学校長にお礼を言った後、ルエリーヌは急いで古代文字学の教室へと向かった。
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