第2章 "煙突の下のルエリーヌ"

ルエリーヌのおでこに向かって勢い良くでこピンを食らわせた。


「…いった〜!なにするのよ〜」

「…ふん!そんなの聞く暇があるなら、さっさと教科書開いたらどうだ?」

鼻を鳴らし、逃げるようにして自分の部屋へ戻るラフィー。


……そんなの言われなくても分かっているわよ!と叫んだルエリーヌは気持ちを鎮めるように教科書を開くが……。

あんなネズミと友達になろうと言った自分が馬鹿らしくなり、暫くは勉強が手につかなかったのは言うまでもない。





翌朝。

「…エール!おい、起きろ!」

どこかで聞いた事のあるような声に、ぼんやりと目を開くと、小さな体が映り込んだ。

やがてはっきりとしてきた正体を見れば、視界いっぱいに映るラフィーの顔にルエリーヌは慌てて飛び起きた。


「…きゃあ!ね、ネズミ!……ってラフィー……?」

「…ネズミで悪かったな。君はいつもこんな時間まで寝ているのか?」

起こしてきたネズミがラフィーだと知ったルエリーヌは時計を見ると、時刻は6時30を過ぎていた。(授業は早くて8時30から始まる)


「…ご、ごめんなさい」

「…ふん。君が遅刻しようと勝手だが生憎、私にご飯は作れないのでね」

どうして起こしたのか分からなかったが、この言葉でその理由がはっきりした。


「…ちょっと待ってて?今、作るから」

「…ああ、気にするな。"煙突の下のルエリーヌ"が作るのなんて、期待してないから安心しろ」

かなり不機嫌なラフィーを横目で見ながらルエリーヌは朝食の準備に取り掛かった。

ルエリーヌは、料理も得意だった。……それは、魔法を使うよりずっと簡単だからだ。



「…はい、ラフィー」

「……トーストか」

出来たてのトーストを見て1口かじるラフィー。実はラフィーの分には、チーズを挟めていた。
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