「…そ、それ私の!」

「…なんだ?ケチ臭い魔法使いだな?」


体長15cmくらいのネズミは、そう言ってチーズを丸呑みした。


「…え……?喋った………?」

ルエリーヌの言葉にネズミは焦ったように慌てて口を手で押さえた。



おっと!喋っちゃいけないな。…せっかくＡクラスのネズミ小屋から逃げ出して来たっていうのに………。



「…そう。貴方、Ａクラスから逃げ出たのね」

「…なっ!?何を言っている!」

とぼけているつもりだろうが、動物の心(気持ち)が分かるルエリーヌには無駄な抵抗であった。


「…Ａクラスでは、ネズミに言葉を話せるよう魔法がかけられていると聞いた事があるわ」

「…な、なんでそれを低クラスが知っている?」

「…あら。これくらい誰でも知っているわよ?」

そう。Ａクラスはクラスの中でも魔力が1番大きく、魔法をかけるのが長けている。

動物に言葉を話せる魔法をかけているのは、皆が知っている事であった。




「…ちっ!私とした事が不覚だった!…低クラスなら知らないと思っていたのだが……」

どこかに逃げようとしたので、ルエリーヌは部屋の扉を閉め、ある提案を思い付いた。



「…ねえ、ラフィーチープ……?」

ネズミの首にかけられていた名前の入った札を見ながら言ったルエリーヌに対し、ラフィーでいいとぶっきらぼうに答えた。



「…ここに貴方が居る事、誰にも言わないし、貴方専用の部屋も作る。……だから、私と友達になってくれないかしら?」

「…な!?と、友達??」

突然の提案に驚くラフィー。その顔はなんとも言えないくらい可愛かった。

「…そう。貴方にとって都合が良いと思わない?だって私しか知らないし、寝床も手に入るのよ?」

「…うう……それもそうだが…」

「…ね?」

ラフィーに向かって手を差し出すルエリーヌ。ラフィーは少しばかり嫌な顔をしたが、小さな手をルエリーヌの手に乗せた。


………これで交渉成立だ。