１年も後半に入った頃。

あんな事があってから"煙突の下のルエリーヌ"というあだ名がすっかり皆に定着していた。


ふと、ルエリーヌが前を見ると、学校の掲示板(ここには校内での出来事が刑事されている)の前に生徒が集まっていた。


それに気付いた誰かか叫ぶ。

「…"煙突のルエリーヌ"のお出ましだー!みんな、散れ〜!」

その声に反応して、蜘蛛の子を散らすようにしてどこかへと消えていく生徒。


あの生物学室での出来事以来、あまり魔法を使わないようにしていたルエリーヌは恐る恐る掲示板に近付くと、そこには大きな文字でー。




"煙突の下のルエリーヌ"Ａクラスの高嶺の花、クテラ・バリマースを激怒させた！


そう書かれていた。これを見たルエリーヌは視界が歪んだ事で自分が泣いていると気付いた。


「…あの子、泣いているわ」

「…ふふ。いい気味!あのバリマースを怒らせるからよ」

「…可哀想にね〜あのバリマースを怒らせたらどうなるのか分からないのかしら?」

小声で聞こえてきた声に、授業を受ける気力を失ったルエリーヌは、知らず知らずの内に中庭のベンチに腰を降ろしていた。



誰もいない中庭はとても静かで、心を落ち着かせてくれた。

目から溢れる涙を拭いたルエリーヌは古代文字の本を開き１人勉強を始めた。


そんなルエリーヌの後ろ姿を誰かが見ていた事に気付かずにー。





その日の夕方。皆を避けるように授業を受け終えたルエリーヌは自分の宿舎へと戻り、今日は色々あったな…と思いながら、部屋の扉を開けたのだが、小さな悲鳴を上げてしまった。


………そこには、両親から届いたチーズを1欠片食べようとしている、1匹のネズミがいたからだ。