「…今日は、植物に簡単な言葉を話せる魔法を練習してみましょう。呪文は、アルーシェ"言葉を話せ"です」

先生の言葉に生徒達は呪文を唱えていく。


……それから数分後。
１人の生徒が魔法をかけるのを成功させた。…クテラ・バリマースだ。


皆から拍手をもらう中、ルエリーヌも呪文を唱えたが、中々思うようにはいかなかった。

呪文を唱える度に、植物の葉っぱが揺れたりするものの、一向にそこから魔法が効かなくなったかのように、ピクリとも動かないのだ。

それでも、何度かやっていう内に出来そうな予感がしたのだがー。


その予感は見事に外れた。

葉を揺らしながら宙に浮いた植物は突然暴れだし、止めようとするが勢い良くバリマースの方へ飛んでいった。


……ああ!もう駄目だ!

そう思った瞬間。その植物はベルケット先生が止めるより先に、バリマースが放った魔法により動きを止め、静かに机に落ちた。




「…ご、ごめんなさい!!」

慌てて駆け寄り青ざめているルエリーヌを見たバリマースは、金色の髪を揺らして睨みつけた。



「……"煙突の下のルエリーヌ"よくもやってくれたわね?…良いこと?私は貴方を許さない!…覚えてなさい？このお礼はたっぷりさせてもらうわ?…まあ、そうならないよう注意するのね?」

そう言ったバリマースの剣幕に教室内が緊張感に包まれる。





ーあれほど、容姿端麗なバリマースが激怒するなんて、そうそう見られたものではない。


そう呑気に感じた自分に驚きつつ、授業が終わった後も暫く席に座ったままでいた。(情けない事に、腰が抜けてしまったのだ)


その後、先生から注意されたが、ルエリーヌの頭の中にはバリマースの言葉がずっと耳に残っていた。


ルエリーヌにとっては、先生に注意されたのと、魔法がまた上手く使えなかったのと、ましてやあのバリマースを怒らせてしまったのが1番衝撃的だった。


頭の中を整理し、冷静になって考えてみるとやはり、とんでもない事をしたと再び青ざめ、その日はどうやって宿舎に帰ったのかさえ覚えておらず、眠れないでいたのだったー。