第2章 "煙突の下のルエリーヌ"

翌日。

3時間目の授業が終わり、ルエリーヌは古代文字学の教室に居た。


「…出来るようになりましたか?」

「…はい。好きなものではありませんが、出来るようになりました」

アレブレッソ先生の問に対し、ルエリーヌは羽根に向けて呪文を唱え、小さな箒にしてみせた。


「…良いでしょう。でも、なぜ箒なのです?」

「…上手く出来たのがこれしかなかったので」

先生の言葉にルエリーヌは困ったように首を傾げた。



「…貴方は魔法があまり得意ではないのですね?…でも、しっかりと勉強している。大切な事です」

アレブレッソ先生は少しぼろぼろになった教科書を指差して、もう行きなさいと言った。

ルエリーヌはお礼を言うと急いで、3階の東にある生物学の教室へと向かった。



気を取り直し、教室に入ろうとするとー。

「…なあ、あのルエリーヌとかいう子、1人だけ出来なかったらしいぜ?」

「…やっぱりな。これで魔力が1番大きいのはAクラスのバリマースだって言われるのも納得だよな」

……と。先程の事をどうやって知ったのか、男子生徒2人が話していた。


隅の方へ座ったルエリーヌは、やっぱりそう思われても仕方ないと思いつつも、心の中では悔しい気持ちが溢れてしまいそうだった。


ルエリーヌだって、好きで失敗している訳ではない。魔法を上手く操る事が出来るのならば、とっくにそうしている。


だが、その思いとは裏腹に魔法が上手く操れないでいたのだ。


その理由はよく分からないが、魔法使いなのに魔法が上手く使いこなせないというのはなかり苦痛だった。


暗い気分になったルエリーヌはベルケット先生が教室に入ってきたので、それを払うように首を小さく左右に振るった。
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