授業が始まり、担当のアレブレッソ先生が白い羽根を一枚ずつ生徒に配る中、ルエリーヌはどこか落ち着かなかった。


それもそのはず。
今日は初めて魔法を使う授業だ。古代文字学は、魔法に使う文字や呪文を教わるだけでなく、魔法使いの基本となる白魔術を実際に使い、練習する授業もするのだ。



初めて経験する魔法を使うという行為に、興奮しつつも不安を覚えていた。


「…さて、皆さん。今日は簡単な魔法を使って、この羽根を好きなもの、あるいは思い浮かべたものに変化させる授業を行います。…呪文はこうです。ジチューテ!"その姿を変えよ"」

そう言ったアレブレッソ先生は羽根を雪の結晶へと変化させた。


「…では皆さん、それぞれ各自やってみて下さい。コツは好きなものを思い浮かべる事です。難しいものではなく、簡単なもので構いません。思い浮かべ呪文を唱えてみて下さい」


その声に反応した生徒達は一斉に呪文を唱えてゆく。

ある者は、本に。またある者は、羽根ペンに。そして、バリマースは見せつけるようにして鳥に変化させた後、青い炎へと変化させ消えさせた。


それを見ていたルエリーヌも呪文を唱えたが、羽根は宙を浮いたかと思うとただの燃えカスとなってしまった。


上手く羽根を変化させれなかったルエリーヌは他に出来なかった生徒と一緒に授業が終わってからも教室に残る事となった。


それを横目で通り過ぎてゆく生徒達。

ルエリーヌを含め3人にもう1度羽根を渡したが、結局は上手くできずルエリーヌただ１人だけ、羽根に足の生えたよく分からないものが出来上がった。



「……ルエリーヌ、2人はもう帰りましたよ?まだ上手くいかないようですね?また明日、授業が終わったらここへ来なさい」

「………はい先生」

１人残された教室を出て、宿舎に帰ったルエリーヌは何度も練習する事にした。