第2章 "煙突の下のルエリーヌ"

翌朝。

早くに目を覚ましたルエリーヌは部屋の窓を開け、大きく深呼吸した。


…と、そこに。

誰かが部屋の前に、何かを置く音と靴の音が去っていく音が聞こえたので、ルエリーヌはなんだろう?と思いながら部屋の扉をそっと開けると、小包が2つ置いてあった。


包みを開けてみると、それは両親からの贈り物で食料品などが入っていた。

懐かしさに心が暖かくなる気持ちのまま朝食を済ませたルエリーヌは、1時間目の授業である、古代文字学の教室へと向かった。



3階の南側にある古代文字学の教室。
そこへ入ろうとした時、誰かの話し声が聞こえてきたので、ルエリーヌは思わず立ち止まった。

「…ねえねえ!あの子、知ってる?」

「…ああ、あの子でしょ?…煙突が沢山ついている宿舎部屋に居る子」

「…ふふ!ねえ、良いこと思い付いたわ!あの子にあだ名付けない?」

「…そうね?あの子Gクラスだし"煙突の下のルエリーヌ"なんてどうかしら?」

教室を見ると、数人の女子生徒の真ん中にいる金髪の女子生徒……クテラ・バリマースがいた。

「…ふふふ!良いあだ名!」

女子生徒の笑い声を上げる中、ルエリーヌはなんとも言えない気持ちになった。


"落ちこぼれ"のGクラスに居るだけでも毛嫌いされるのに、自分が居る部屋は1番端にある煙突が沢山付いた奇妙な部屋。


……そんなところに居ては、あの子はどうせ落ちこぼれなのだからと言われ続けるのは、目に見えていた。



その事をなるべく気にしないように、1番後ろの席に座ろうとしたのだが、ルエリーヌに気付いたバリマースが近付いてきた。


「…あら、噂をすれば"煙突の下のルエリーヌ"じゃなくて?……今日から貴方は"煙突の下のルエリーヌ"よ?」

「…ふふ喜びなさい?」

「…そうよそうよ。バリマース様が付けて下さったのですもの」

…どうやらこの女子生徒はバリマースを慕っているようだ。


「………はい」

「…ふふ。聞き分けの良い子だこと」

消え入りそうな声で静かに返事をしたルエリーヌを下から上まで舐め回すようにして見るバリマースの視線に耐えれなかったので、ルエリーヌはお辞儀をして出来るだけ隅の席へ座った。
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