リクエスト
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
My Dearest Blemished Apple
「***さん!大丈夫ですか***さん!!」
AKUMAは破壊した。なのに何であたしは仰向けにひっくり返っているんだっけ。心臓がどくどく鳴っていて、体にじっとりと服が張り付いている感じがする。体のあちこちが痛いし寒くて、顔を濡らす水滴に雨か、と呑気に思う。あたしの顔を覗き込む探索部隊の顔を見て、よかった生きてると思った瞬間、意識が飛んだ。
久しぶりにあの時の夢を見て飛び起きた。窓の外は朝なのに薄暗くて、あぁ雨か、と思う。夢のせいか、もう何ともない傷跡が痛む気がして胸を抑えた。今日は少し肌寒い。
いつもの朝食より少し早い時間だった。そういえばそろそろラビが帰ってくる頃だとぼーっと考えていたら、スリープ状態のゴーレムに通信が入って肩が跳ねる。指でつついて起こすと、いちばん聞きたい声が聞こえてきた。
『***おはよ〜、起きてた?』
「うん、今起きたとこ…ラビ帰ってきたの?」
『おー今さっき報告終わったとこ、朝メシ一緒に食おうと思ってさぁ』
「顔洗ったらすぐ行くね」
『うん、食堂の前で待ってるさ』
通信が切れる。元気そうな声にほっとして、思わずゴーレムを指で撫でる。ふよふよ飛んで何となく嬉しそうに見えるのが不思議だと思いつつ、支度して食堂に向かった。
ラビはあたしを見つけると、少し早めの時間とはいえ人の多い食堂前の廊下で躊躇いもせず抱きしめてきた。恋人になってからしばらく経つけど、ラビのストレートな愛情表現にはまだ少し驚く時がある。
いつもヘラヘラしていて女の子はみんな好き、みたいな態度は付き合ってからもあまり変わらないけど、あたしに対して向ける顔は明らかに他の女の子とは違う、気がする。少なからず誰彼構わずハグしたりはしていない。
「会いたかったー、***」
「うん、ラビおかえり」
もともと垂れている目が細められてもっと柔らかい印象になる。砂糖みたいな甘い顔にあたしもつられて顔が緩んだ。
「久しぶりに***と同じもの食べれて嬉しいさー」
下から掬うようにして優しく手が繋がれる。こんな何でもないことでも大切にされていると感じられるのが嬉しくて、たかだか食堂の列に並ぶだけなのにやたらと密着してしまった。
───────────────────────
「やる気出ねー、ねみー」
「寝なよ」
「やだ、***ともっと喋りたい…」
お腹も膨れてシャワーも浴びて、完全に寝る体勢なのにぐずぐず言っているラビを眺める。雨の日のラビはだいたいやる気がないけど、雨じゃなくても何かと理由をつけて本を読んだり昼寝しているのであまり変わらない気がする。少し肌寒い気温に温かい飲み物と大好きな人の体温、あたしも今日はやる気がない。ベッドサイドに置かれたラビのカフェラテの横にミルクティーを並べて、あたしもシーツに倒れ込む。
「あたしも二度寝しようかな…」
「ほんと?おいでー」
気の抜けた声に少し笑って、ラビが広げた腕にすっぽり収まってシーツを被る。ラビがあたしの額にキスを落として、息を吐いた。
「はー、幸せ…」
同じ気持ちで、温かいラビの胸にぴったりくっついて目を閉じた。
雨の音のせいか、目を閉じながらあの日のことを考えてしまう。
破壊したAKUMAの破片が最後の執念のように飛んできて、探索部隊がいる方に向かうので咄嗟に飛び出してしまったことを覚えている。数年前のあの時はやっと戦闘に慣れてきた頃で、今考えるといくらでもやりようはあったのに機転が利かなかった。生き物みたいに変な飛び方をする破片はあたしの右胸の上あたりから左の脇腹を斜めに切り裂いて、地面に跳ね返り転がった先で崩れて消えた。
報告後に分析してもらったら、レベル1が破壊直前に進化しようとした名残ではないかということだった。場所が場所だし、一緒に髪が一房切れてしまったこともあってみんなとても気を遣ってくれた。何より庇った探索部隊はこの世の終わりみたいな顔をしていたけど、奇跡的に傷は深くなく予後も好調で、医師の指示通りにしていたら傷も少しだけ小さくなった。痕は残ると言われたけど別に見せる相手もいないし、何よりここには体に傷痕のある人なんかいくらでもいるから、徐々に気にならなくなっていった。
ラビが入団するまでは。
「***、***大丈夫…?」
「……っ、はぁっ…」
声をかけられてはっとした。目を開けるとあたしの方を掴んで揺さぶるラビに見下ろされていて、どきりとして飛び起きる。荒い息をするあたしをラビが心配そうに見つめていた。
「大丈夫?呼吸変だったから起こしちゃったんだけど…」
「え?!…ごめん、大丈夫…」
「飲める?」
ベッドサイドに置いたミルクティーを渡される。すっかり冷めてしまっていたけど、そのおかげでだんだん頭がすっきりしてきた。いつの間にか考え込んで過呼吸みたいになってしまったのかもしれない。カップを置いたらラビがお医者さんみたいに首筋を触ったり脈や瞳孔をチェックしてきて、大丈夫なのは信じてもらえたみたいだった。
「ごめんね、起こしちゃって…」
「ううん…傷、痛むの?」
「えっ?!」
胸を指さされて心臓が跳ねた。ラビに傷痕のことを言ったことはない。どうして、と呟きながら、傷痕に沿うように腕を置いていたことに気付いた。
「手そうやるの癖だろ?鍛錬の時も庇ってるみたいな動きする時あるし…古傷でもあんのかなって。合ってる?」
「う、うん…」
「あと、今日雨だし」
雨の日といえば古傷が痛むだろ、と戯けたように言うので思わず笑ってしまった。なんだ、バレてたのか。それなのに今まで何も聞いてこなかったのはどうしてなんだろう。
「なんで、聞かなかったの…?」
「言いたくないのかと思って…***もオレに右目のこと聞かないじゃん、お互い様っていうか」
まぁ今言っちゃったけど、とまた心配そうな顔で覗き込まれる。その優しさが嬉しくて、体の緊張が少しずつ解けていく。何だか急に昔のことを思い出した。
「…ねぇ、ラビが教団に来てちょっと経った頃さ、医務室から出てきたあたしに声かけてきたよね。覚えてる?」
「あー…?…あ、怪我の様子見てもらってるって言ってたっけ?」
「うん。あの時も、怪我のことあんまり聞いてこなかったよね」
「んー?…それはたまたまじゃね…?」
「おしゃべり好きなのにそういう詮索はしないんだなーって思った」
「言い方悪いさ、情報収集」
ちょっと拗ねたような顔に笑ってしまう。近付いてキスをしたら、一瞬驚いた顔をしたけどすぐ受け入れてくれた。あの時のことはラビに負けないくらいすぐに思い出せる。
───────────────────────
ラビが入団したのはあたしが怪我をしてから半年くらい経った頃だ。その頃怪我の具合はだいぶ良くなってきていたけど、経過観察のために定期的に医務室に通っていた。医師も出来るだけ傷を薄くしようと丁寧にやってくれていたんだと思う。目敏いラビはそれを見つけて話しかけてきたけど、理由を知ってもへー大変、みたいなドライな反応だった。別に珍しくもないからだろう。何処を怪我したとかは言っていないけど傷が少しずつ薄くなってきて嬉しいと話したら、さっきの何でもないような返事と違って嬉しそうな顔で良かったな、と言ってくれた。
会う機会が少なくてまだあまりパーソナルなことを話したことがなく、同じくらいの年なのに大人びていて貼り付けたような笑顔が少し怖いと思っていたくらいだけど、その時の顔がすごく優しかったのをよく覚えている。共感力のある人なんだと思ったのは正解で、どんな話も一緒に笑ったり怒ったりしてくれるし、真面目な話は真剣な顔で聞いてくれる。ラビは誰とでも上手くやれるのかもしれないけど、あたしは彼と話している時だけ話し上手になった気分で居心地が良かった。
どんなに仲良くなっても他人と一線を引いたような態度のラビと恋人になれるとは思っていなかったけど、なんだか吹っ切れたようになったのは方舟から帰ってきたあたりだと思う。あの時は本当に二度と会えなくなったかと思って、泣きながら思わず抱きしめたらラビの方から好きだと言われたのだった。
念願叶って恋人になっても今までと特に変わりなく、ラビは優しくてよく話を聞いてくれた。変わったことといえば、あたしに向ける視線にだけ熱が混ざるようになったこと。あたしも子どもじゃないからそれが何を意味するかすぐわかったし、キスまでは喜んで受け入れた。ラビとならその先もしていいと思っていたのに、いざその先を連想させる熱っぽい触り方をされると駄目だった。不自然に固まるあたしにラビは別に先を急ぐこともなく、たまに一緒に寝ても無理やり触られたことなんか一度もない。だからこそ、初めては絶対ラビがいいと思った。いつか勇気が出たらと思っていたけど、今がその時なのかもしれない。
「ラビってさ…キス以上のこと、したいと思う…?」
「え…あ、え?!な、何の話?!」
普段の歳上ぶった態度からは想像できない裏返った声と慌てぶりに、彼も年相応の男の子であることを思い出す。部屋は薄暗いけどその顔が赤く染まっていることは十分わかった。
「したい…って思われてたと思うんだけど、違った…?ちなみにあたしは、したいけど」
「えっ何でバレて…え、***したいの…?!」
「うん…ラビ、二人のときすごくそういう目で見てくるんだもん…あと、触り方もなんか、フェザータッチみたいな…あれ後で思い出してすごいドキドキしちゃうんだから…」
「何それエロ…いやごめんだって優しく触んなきゃと思って…え、待ってオレそんなやらしい顔してた…?」
「うん」
「めちゃくちゃ恥ずいんだけど…てかダセー…」
「嫌じゃなかった、全然」
あんなにあからさまな目を向けておいて自分で気付いてなかったなんて、ラビにもそつなく出来ないことがあると知ってたまらなく愛しくなる。それからぽつぽつと、体を重ねること以上に傷痕を見せる勇気がなくて躊躇っていたことを話した。ついでに初めて話した時に感じたこととか、あたしを尊重してずっと大事にしてくれる優しいラビが大好きな気持ちを滾々と湧くまま長い手紙を書くように吐き出した。
一人で何分喋っていたのか、相槌だけでラビは一度も口を挟まなかった。ふと目を上げるとずび、と音がして、ラビの頬が濡れていた。
「え?!ない…てる…?!」
「え…?!うわ、なんで?!?!!」
「なんでって何で…?」
「いやなんか、嬉しいなーと思ってただけなんだけど…」
あたしより驚いている彼がなんだかおかしくて笑ってしまったあと、ラビが眼帯の下に指を突っ込んで目を拭うので思わず口に出てしまった。
「…そっちも、涙出るんだ」
「え…?あー…普通にこっちにも目ぇあるからな…別に開けなきゃ眼帯は外してもいいんさ」
「…わー!!!」
「なになになに?!」
渡したティッシュで涙を拭くラビがあたしの前で初めて眼帯を外した。初めて見る、ラビの右目瞼。
「…触っていい…?」
「何を…?」
「そっちの、まぶた…」
「い、いいけど…?」
近付いて、親指ですっとまぶたをなぞる。眼球の膨らみに妙に感動した。この下にラビの右目があるんだ。そう思ったら愛しくて、思わずキスを落とした。
「ふふ、かわいい」
「目ん玉が…?」
「ラビのだもん」
ついでに頭をぎゅっと抱きしめて涙の乾いた眼帯を戻したら、どちらともなく唇が近付く。もう何も怖くない気がした。
───────────────────────
もう何度も抱きしめ合ってきたけど、下着だけになったらさすがに緊張した。頭を支えながら丁寧に寝かされて、壊れ物みたいな扱いがくすぐったい。可愛い下着なんか一枚も持っていないけど、ラビが可愛い可愛いと言うからその不安は薄れていった。
「***、脱がせていい?」
「うん…」
何の色気もない被るタイプのインナーを丁寧に脱がされる。隠したいけど隠したくなくて、行き場なく彷徨った手をラビがそっと握って優しく笑った。
「かわいい、***」
「…ん、」
「…ここ、触ってもいい?」
「うん…」
頷くと、ラビは下から上にかけて指の先だけでなでるように傷の線をなぞった。優しい触り方に背中がぞくりとする。
「…っ、ぅ」
「ごめ、痛い?」
「ちが…あの…くすぐったく、て…」
「あぁ、ごめん…」
もう全然痛くないことを伝えたら安心したような顔をした。最近はリナリーがくれたオイルのおかげでだいぶ傷痕が薄くなったことも話したらあの時と同じ顔で良かったねと笑ってくれて、あぁ大好きだなと思う。
「あ、そーだ見てこれ」
「ん…?え、どうしたのそれ」
「旅に出たばっかの頃流れ弾に当たったことあってさー、死にかけたんさ。よく生きてたよなー」
「そうなんだ…」
左脇腹の銃創。同じように触っていいか尋ねてから手を伸ばす。よく見たらそれ以外にも細かい傷がたくさんあった。そういえば男の人の体をこんなにまじまじと見るのは初めてで、率直に思ったことが口から滑り落ちる。
「…かっこいい…」
「え…?…これも、かっこいいと思うよ」
今度は少しだけしっかりした触り方で、もう一度ラビがあたしの傷痕をなぞる。嬉しくて、少し涙の滲んだ目元にすかさずキスが落ちてきた。
───────────────────────
お互いに手探りで、ラビはひとつずつ確認しながら進めてくれた。初めて人に触られる場所は手が当たるだけでくすぐったいけど、ラビにされていると思うとすごく気持ちいい。胸を丸みに沿って掬うように優しく包まれて、硬くなった突起を親指で撫でられる。そこへの刺激と一緒に傷の線をなぞられるとさすがに変な声が出た。
「あっ…ん、だ、め…」
「ごめん、いやだった…?」
「いや、じゃない、けど…ちょっと、恥ずかしい…」
「…ふふ、***かわいい」
照れ隠しに腕を伸ばしてキスを求めるとすごく嬉しそうに応じてくれて、ラビになら何をされてもいいと思ってしまう。
いつの間にかラビの手のひらは太腿を撫で始めていて、下着に指を引っ掛けてずらすような仕草をするのでその手を重ねて握って促すと丁寧に脱がせてくれた。太腿をマッサージするみたいに丁寧に触りながら少しずつ中心に指が近付いて、くすぐったいくらいの優しい触り方で指の腹がそこに触れた。触られてみて初めて濡れすぎていることを実感して恥ずかしくなる。
「すごい濡れてる…」
「…変じゃない…?」
「え、全然…ていうかめちゃくちゃ嬉しいけど…」
赤い顔を見られたくなくてラビの胸に額を引っ付けたら、優しく頭を撫でてくれる。指の腹が丁寧に突起やひだを擦るたび中からどんどん液体が溢れてきて恥ずかしいけど、ラビが嬉しそうだからなんとか耐えられた。頭を抱えられたまま、守られてるみたいな体勢で愛撫されるのは安心するし気持ちいい。
「痛くない?」
「うん、きもちいい…」
「そっか、嬉しい」
表面を行き来するだけの指先に、少しずつ中に入り込もうと力がこもるのを感じる。ラビがあたしの目を見て、優しい声で名前を呼んだ。
「***、指、挿れていい…?」
「う、ん」
「痛かったら言ってね」
「うん」
「ち、ちょっとずつね…?」
「わかったってば」
何故かラビの方が慎重で少しおかしい。でもそれが嬉しくて、やっぱりラビがいいと思った。心配そうな顔をするラビの首にしっかりしがみついて、少しずつ侵入してくる指の感覚に耐える。何度も確認しながら少しずつ時間をかけて、指が2本、奥まで入るようになったらしい。らしいというのは、あたしには正直じんわりとした痛みがある以外よくわからないからだ。表面の愛撫はあんなに嬉しいし気持ちいいのに、内側となるとあんまり楽しいものではなくてこんなもんなのかと正直思った。
「ラビ、たぶんもう大丈夫だから…いい、よ」
「ほんと?無理してない?別に今日全部しなくても…」
「やだ、絶対今日最後までする、今日がいい」
「えぇ…」
「ラビ」
「わかった、わかったから」
ラビは困ったように笑って、宥めるように頭を撫でられた。普通逆かもと思ったけど、無理やりされるよりはずっといい。ベッドの淵に座ったラビがどこか隠すように準備するのに気付いて、起き上がって近くで見てみた。初めて見る大きく勃ち上がったそれに少しだけ恐怖心が湧いたけど、好奇心の方が勝っていた。
「…触っていい?」
「えぇ?!い、いいよそんなことしなくて…」
「さわりたい、だめ…?」
「だ、だめではない、けどさ…あー…いいよ…」
緊張しながら、教えてもらった通りそっと握ってみる。思ったより熱くて硬いそれに、本当に人体の一部なのかと不思議な気分になる。
「…これ、入るのかな…」
「わかんない…が、頑張るけど…」
「ラビが頑張るの…?」
指より遥かに太いそれを見て当然と言えば当然の疑問が生まれる。どっちかというと頑張るのはあたしの方なのではと思ったけど、何故かラビの方が決意を固めたような顔をしていて逆に冷静になった。そういえば体格差ってどれくらいが許容範囲なんだろう、と頭ひとつ分以上身長差のある自分たちのことを考えていたらラビはいつの間にか準備を終えていた。最初みたいに丁寧に寝かせてくれるラビの顔がすごく真剣で、目が離せなかった。
「無理だったらすぐやめるからね」
「うん」
「痛かったら肩噛んでもいいし髪掴んでもいいよ」
「うん」
「あと…」
「ラビ」
「うん?」
「大好き」
「…うん、オレも大好き、***」
熱いものがひたりと当てられて、指とは比べ物にならない質量がゆっくり中に入ってきた。思わず体に力が入って、ラビの背中を思いっきり掴む。ラビがキスをしたり頭を撫でたりしてくれてようやく少しずつ力が抜けてきた。体全体でとにかくラビにしがみついて、ゆっくり息をしながらじわじわと強くなってくる痛みに耐える。どれくらい経ったのか、ラビに名前を呼ばれて我に帰った。
「***、***」
「な、に…」
「入ったよ、全部」
「…え、ほんと?」
「うん…大丈夫?」
「だい、じょ…うーん…?とりあえず、いたい、かも…」
「抜く?」
「…もうちょっと、このまま…」
「うん」
痛みを誤魔化すようにキスを求めた。少しだけ動かしてもらったけどやっぱりじんわりとした痛み以外のものを感じなくて、察してくれたのかしばらく経ってゆっくり引き抜かれた。ぼんやりとした頭で初めてって案外あっけないしロマンチックでもないんだなと思ったけど、ラビが嬉しそうで、それだけで幸せだった。
───────────────────────
「…あれ」
いつの間にか寝ていたらしい。雨も上がって、窓から差し込む光が隣に眠るラビの髪を橙色に光らせていた。ラビがやってくれたのか体はベタベタしていないし服も着ている。頭がすっきりしてくると徐々に下半身のだるさを体が思い出してきて、本当にしたんだ、と不思議な気分になる。ラビの肩に頭を寄せるとぴくりと瞼が動いて、気怠げな翡翠と目が合った。
「…ん、***…大丈夫?」
「うん、大丈夫」
頷いたら、ラビが覆い被さるように抱き締めてくる。優しく頭を撫でられて、どこか労わるようだった。
「…ありがとね」
「…なにが…?」
「なんか…いろいろ…ありがとう」
「…あたしも、ありがとう」
「なにが?」
「ぜんぶ、大事にしてくれて」
「…また泣かそうとしてる…?」
「違うけど、泣いてもいいよ」
笑ったラビが、体を離してあたしをじっと見つめる。指が服の上から胸の傷をなぞったあと、首筋を辿って優しく頬を撫でた。
「…綺麗だね、***」
蜂蜜みたいに甘い瞳にたまらなくなって、腕を伸ばしてキスをねだった。
(今日はオレが全部やるから、***ベッドから出なくていいよ…!)
(いやそこまででは…嬉しいけど)
⭐︎お礼⭐︎
アップルサイダー様
リクエストありがとうございました!
いろいろ設定を入れ込んでちょっと長くなってしまいましたが読み辛くないですかね…でも付き合うタイミングとか初夜とか、短編ではなかなか書かないこともちょっとだけ書けて楽しかったです!良きシチュをありがとうございます!
勝手に初夜にしてしまったのであんまり楽しい交わりにできなかったのが少し気がかりなんですが、また機会があればもう少し慣れた二人も書いてあげたいですね。ラビのために笑
その後を見守りたい愛しい子たちになりました。二人に幸あれ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!何度も読み返していただけると嬉しいです(*^^*)
「***さん!大丈夫ですか***さん!!」
AKUMAは破壊した。なのに何であたしは仰向けにひっくり返っているんだっけ。心臓がどくどく鳴っていて、体にじっとりと服が張り付いている感じがする。体のあちこちが痛いし寒くて、顔を濡らす水滴に雨か、と呑気に思う。あたしの顔を覗き込む探索部隊の顔を見て、よかった生きてると思った瞬間、意識が飛んだ。
久しぶりにあの時の夢を見て飛び起きた。窓の外は朝なのに薄暗くて、あぁ雨か、と思う。夢のせいか、もう何ともない傷跡が痛む気がして胸を抑えた。今日は少し肌寒い。
いつもの朝食より少し早い時間だった。そういえばそろそろラビが帰ってくる頃だとぼーっと考えていたら、スリープ状態のゴーレムに通信が入って肩が跳ねる。指でつついて起こすと、いちばん聞きたい声が聞こえてきた。
『***おはよ〜、起きてた?』
「うん、今起きたとこ…ラビ帰ってきたの?」
『おー今さっき報告終わったとこ、朝メシ一緒に食おうと思ってさぁ』
「顔洗ったらすぐ行くね」
『うん、食堂の前で待ってるさ』
通信が切れる。元気そうな声にほっとして、思わずゴーレムを指で撫でる。ふよふよ飛んで何となく嬉しそうに見えるのが不思議だと思いつつ、支度して食堂に向かった。
ラビはあたしを見つけると、少し早めの時間とはいえ人の多い食堂前の廊下で躊躇いもせず抱きしめてきた。恋人になってからしばらく経つけど、ラビのストレートな愛情表現にはまだ少し驚く時がある。
いつもヘラヘラしていて女の子はみんな好き、みたいな態度は付き合ってからもあまり変わらないけど、あたしに対して向ける顔は明らかに他の女の子とは違う、気がする。少なからず誰彼構わずハグしたりはしていない。
「会いたかったー、***」
「うん、ラビおかえり」
もともと垂れている目が細められてもっと柔らかい印象になる。砂糖みたいな甘い顔にあたしもつられて顔が緩んだ。
「久しぶりに***と同じもの食べれて嬉しいさー」
下から掬うようにして優しく手が繋がれる。こんな何でもないことでも大切にされていると感じられるのが嬉しくて、たかだか食堂の列に並ぶだけなのにやたらと密着してしまった。
───────────────────────
「やる気出ねー、ねみー」
「寝なよ」
「やだ、***ともっと喋りたい…」
お腹も膨れてシャワーも浴びて、完全に寝る体勢なのにぐずぐず言っているラビを眺める。雨の日のラビはだいたいやる気がないけど、雨じゃなくても何かと理由をつけて本を読んだり昼寝しているのであまり変わらない気がする。少し肌寒い気温に温かい飲み物と大好きな人の体温、あたしも今日はやる気がない。ベッドサイドに置かれたラビのカフェラテの横にミルクティーを並べて、あたしもシーツに倒れ込む。
「あたしも二度寝しようかな…」
「ほんと?おいでー」
気の抜けた声に少し笑って、ラビが広げた腕にすっぽり収まってシーツを被る。ラビがあたしの額にキスを落として、息を吐いた。
「はー、幸せ…」
同じ気持ちで、温かいラビの胸にぴったりくっついて目を閉じた。
雨の音のせいか、目を閉じながらあの日のことを考えてしまう。
破壊したAKUMAの破片が最後の執念のように飛んできて、探索部隊がいる方に向かうので咄嗟に飛び出してしまったことを覚えている。数年前のあの時はやっと戦闘に慣れてきた頃で、今考えるといくらでもやりようはあったのに機転が利かなかった。生き物みたいに変な飛び方をする破片はあたしの右胸の上あたりから左の脇腹を斜めに切り裂いて、地面に跳ね返り転がった先で崩れて消えた。
報告後に分析してもらったら、レベル1が破壊直前に進化しようとした名残ではないかということだった。場所が場所だし、一緒に髪が一房切れてしまったこともあってみんなとても気を遣ってくれた。何より庇った探索部隊はこの世の終わりみたいな顔をしていたけど、奇跡的に傷は深くなく予後も好調で、医師の指示通りにしていたら傷も少しだけ小さくなった。痕は残ると言われたけど別に見せる相手もいないし、何よりここには体に傷痕のある人なんかいくらでもいるから、徐々に気にならなくなっていった。
ラビが入団するまでは。
「***、***大丈夫…?」
「……っ、はぁっ…」
声をかけられてはっとした。目を開けるとあたしの方を掴んで揺さぶるラビに見下ろされていて、どきりとして飛び起きる。荒い息をするあたしをラビが心配そうに見つめていた。
「大丈夫?呼吸変だったから起こしちゃったんだけど…」
「え?!…ごめん、大丈夫…」
「飲める?」
ベッドサイドに置いたミルクティーを渡される。すっかり冷めてしまっていたけど、そのおかげでだんだん頭がすっきりしてきた。いつの間にか考え込んで過呼吸みたいになってしまったのかもしれない。カップを置いたらラビがお医者さんみたいに首筋を触ったり脈や瞳孔をチェックしてきて、大丈夫なのは信じてもらえたみたいだった。
「ごめんね、起こしちゃって…」
「ううん…傷、痛むの?」
「えっ?!」
胸を指さされて心臓が跳ねた。ラビに傷痕のことを言ったことはない。どうして、と呟きながら、傷痕に沿うように腕を置いていたことに気付いた。
「手そうやるの癖だろ?鍛錬の時も庇ってるみたいな動きする時あるし…古傷でもあんのかなって。合ってる?」
「う、うん…」
「あと、今日雨だし」
雨の日といえば古傷が痛むだろ、と戯けたように言うので思わず笑ってしまった。なんだ、バレてたのか。それなのに今まで何も聞いてこなかったのはどうしてなんだろう。
「なんで、聞かなかったの…?」
「言いたくないのかと思って…***もオレに右目のこと聞かないじゃん、お互い様っていうか」
まぁ今言っちゃったけど、とまた心配そうな顔で覗き込まれる。その優しさが嬉しくて、体の緊張が少しずつ解けていく。何だか急に昔のことを思い出した。
「…ねぇ、ラビが教団に来てちょっと経った頃さ、医務室から出てきたあたしに声かけてきたよね。覚えてる?」
「あー…?…あ、怪我の様子見てもらってるって言ってたっけ?」
「うん。あの時も、怪我のことあんまり聞いてこなかったよね」
「んー?…それはたまたまじゃね…?」
「おしゃべり好きなのにそういう詮索はしないんだなーって思った」
「言い方悪いさ、情報収集」
ちょっと拗ねたような顔に笑ってしまう。近付いてキスをしたら、一瞬驚いた顔をしたけどすぐ受け入れてくれた。あの時のことはラビに負けないくらいすぐに思い出せる。
───────────────────────
ラビが入団したのはあたしが怪我をしてから半年くらい経った頃だ。その頃怪我の具合はだいぶ良くなってきていたけど、経過観察のために定期的に医務室に通っていた。医師も出来るだけ傷を薄くしようと丁寧にやってくれていたんだと思う。目敏いラビはそれを見つけて話しかけてきたけど、理由を知ってもへー大変、みたいなドライな反応だった。別に珍しくもないからだろう。何処を怪我したとかは言っていないけど傷が少しずつ薄くなってきて嬉しいと話したら、さっきの何でもないような返事と違って嬉しそうな顔で良かったな、と言ってくれた。
会う機会が少なくてまだあまりパーソナルなことを話したことがなく、同じくらいの年なのに大人びていて貼り付けたような笑顔が少し怖いと思っていたくらいだけど、その時の顔がすごく優しかったのをよく覚えている。共感力のある人なんだと思ったのは正解で、どんな話も一緒に笑ったり怒ったりしてくれるし、真面目な話は真剣な顔で聞いてくれる。ラビは誰とでも上手くやれるのかもしれないけど、あたしは彼と話している時だけ話し上手になった気分で居心地が良かった。
どんなに仲良くなっても他人と一線を引いたような態度のラビと恋人になれるとは思っていなかったけど、なんだか吹っ切れたようになったのは方舟から帰ってきたあたりだと思う。あの時は本当に二度と会えなくなったかと思って、泣きながら思わず抱きしめたらラビの方から好きだと言われたのだった。
念願叶って恋人になっても今までと特に変わりなく、ラビは優しくてよく話を聞いてくれた。変わったことといえば、あたしに向ける視線にだけ熱が混ざるようになったこと。あたしも子どもじゃないからそれが何を意味するかすぐわかったし、キスまでは喜んで受け入れた。ラビとならその先もしていいと思っていたのに、いざその先を連想させる熱っぽい触り方をされると駄目だった。不自然に固まるあたしにラビは別に先を急ぐこともなく、たまに一緒に寝ても無理やり触られたことなんか一度もない。だからこそ、初めては絶対ラビがいいと思った。いつか勇気が出たらと思っていたけど、今がその時なのかもしれない。
「ラビってさ…キス以上のこと、したいと思う…?」
「え…あ、え?!な、何の話?!」
普段の歳上ぶった態度からは想像できない裏返った声と慌てぶりに、彼も年相応の男の子であることを思い出す。部屋は薄暗いけどその顔が赤く染まっていることは十分わかった。
「したい…って思われてたと思うんだけど、違った…?ちなみにあたしは、したいけど」
「えっ何でバレて…え、***したいの…?!」
「うん…ラビ、二人のときすごくそういう目で見てくるんだもん…あと、触り方もなんか、フェザータッチみたいな…あれ後で思い出してすごいドキドキしちゃうんだから…」
「何それエロ…いやごめんだって優しく触んなきゃと思って…え、待ってオレそんなやらしい顔してた…?」
「うん」
「めちゃくちゃ恥ずいんだけど…てかダセー…」
「嫌じゃなかった、全然」
あんなにあからさまな目を向けておいて自分で気付いてなかったなんて、ラビにもそつなく出来ないことがあると知ってたまらなく愛しくなる。それからぽつぽつと、体を重ねること以上に傷痕を見せる勇気がなくて躊躇っていたことを話した。ついでに初めて話した時に感じたこととか、あたしを尊重してずっと大事にしてくれる優しいラビが大好きな気持ちを滾々と湧くまま長い手紙を書くように吐き出した。
一人で何分喋っていたのか、相槌だけでラビは一度も口を挟まなかった。ふと目を上げるとずび、と音がして、ラビの頬が濡れていた。
「え?!ない…てる…?!」
「え…?!うわ、なんで?!?!!」
「なんでって何で…?」
「いやなんか、嬉しいなーと思ってただけなんだけど…」
あたしより驚いている彼がなんだかおかしくて笑ってしまったあと、ラビが眼帯の下に指を突っ込んで目を拭うので思わず口に出てしまった。
「…そっちも、涙出るんだ」
「え…?あー…普通にこっちにも目ぇあるからな…別に開けなきゃ眼帯は外してもいいんさ」
「…わー!!!」
「なになになに?!」
渡したティッシュで涙を拭くラビがあたしの前で初めて眼帯を外した。初めて見る、ラビの右目瞼。
「…触っていい…?」
「何を…?」
「そっちの、まぶた…」
「い、いいけど…?」
近付いて、親指ですっとまぶたをなぞる。眼球の膨らみに妙に感動した。この下にラビの右目があるんだ。そう思ったら愛しくて、思わずキスを落とした。
「ふふ、かわいい」
「目ん玉が…?」
「ラビのだもん」
ついでに頭をぎゅっと抱きしめて涙の乾いた眼帯を戻したら、どちらともなく唇が近付く。もう何も怖くない気がした。
───────────────────────
もう何度も抱きしめ合ってきたけど、下着だけになったらさすがに緊張した。頭を支えながら丁寧に寝かされて、壊れ物みたいな扱いがくすぐったい。可愛い下着なんか一枚も持っていないけど、ラビが可愛い可愛いと言うからその不安は薄れていった。
「***、脱がせていい?」
「うん…」
何の色気もない被るタイプのインナーを丁寧に脱がされる。隠したいけど隠したくなくて、行き場なく彷徨った手をラビがそっと握って優しく笑った。
「かわいい、***」
「…ん、」
「…ここ、触ってもいい?」
「うん…」
頷くと、ラビは下から上にかけて指の先だけでなでるように傷の線をなぞった。優しい触り方に背中がぞくりとする。
「…っ、ぅ」
「ごめ、痛い?」
「ちが…あの…くすぐったく、て…」
「あぁ、ごめん…」
もう全然痛くないことを伝えたら安心したような顔をした。最近はリナリーがくれたオイルのおかげでだいぶ傷痕が薄くなったことも話したらあの時と同じ顔で良かったねと笑ってくれて、あぁ大好きだなと思う。
「あ、そーだ見てこれ」
「ん…?え、どうしたのそれ」
「旅に出たばっかの頃流れ弾に当たったことあってさー、死にかけたんさ。よく生きてたよなー」
「そうなんだ…」
左脇腹の銃創。同じように触っていいか尋ねてから手を伸ばす。よく見たらそれ以外にも細かい傷がたくさんあった。そういえば男の人の体をこんなにまじまじと見るのは初めてで、率直に思ったことが口から滑り落ちる。
「…かっこいい…」
「え…?…これも、かっこいいと思うよ」
今度は少しだけしっかりした触り方で、もう一度ラビがあたしの傷痕をなぞる。嬉しくて、少し涙の滲んだ目元にすかさずキスが落ちてきた。
───────────────────────
お互いに手探りで、ラビはひとつずつ確認しながら進めてくれた。初めて人に触られる場所は手が当たるだけでくすぐったいけど、ラビにされていると思うとすごく気持ちいい。胸を丸みに沿って掬うように優しく包まれて、硬くなった突起を親指で撫でられる。そこへの刺激と一緒に傷の線をなぞられるとさすがに変な声が出た。
「あっ…ん、だ、め…」
「ごめん、いやだった…?」
「いや、じゃない、けど…ちょっと、恥ずかしい…」
「…ふふ、***かわいい」
照れ隠しに腕を伸ばしてキスを求めるとすごく嬉しそうに応じてくれて、ラビになら何をされてもいいと思ってしまう。
いつの間にかラビの手のひらは太腿を撫で始めていて、下着に指を引っ掛けてずらすような仕草をするのでその手を重ねて握って促すと丁寧に脱がせてくれた。太腿をマッサージするみたいに丁寧に触りながら少しずつ中心に指が近付いて、くすぐったいくらいの優しい触り方で指の腹がそこに触れた。触られてみて初めて濡れすぎていることを実感して恥ずかしくなる。
「すごい濡れてる…」
「…変じゃない…?」
「え、全然…ていうかめちゃくちゃ嬉しいけど…」
赤い顔を見られたくなくてラビの胸に額を引っ付けたら、優しく頭を撫でてくれる。指の腹が丁寧に突起やひだを擦るたび中からどんどん液体が溢れてきて恥ずかしいけど、ラビが嬉しそうだからなんとか耐えられた。頭を抱えられたまま、守られてるみたいな体勢で愛撫されるのは安心するし気持ちいい。
「痛くない?」
「うん、きもちいい…」
「そっか、嬉しい」
表面を行き来するだけの指先に、少しずつ中に入り込もうと力がこもるのを感じる。ラビがあたしの目を見て、優しい声で名前を呼んだ。
「***、指、挿れていい…?」
「う、ん」
「痛かったら言ってね」
「うん」
「ち、ちょっとずつね…?」
「わかったってば」
何故かラビの方が慎重で少しおかしい。でもそれが嬉しくて、やっぱりラビがいいと思った。心配そうな顔をするラビの首にしっかりしがみついて、少しずつ侵入してくる指の感覚に耐える。何度も確認しながら少しずつ時間をかけて、指が2本、奥まで入るようになったらしい。らしいというのは、あたしには正直じんわりとした痛みがある以外よくわからないからだ。表面の愛撫はあんなに嬉しいし気持ちいいのに、内側となるとあんまり楽しいものではなくてこんなもんなのかと正直思った。
「ラビ、たぶんもう大丈夫だから…いい、よ」
「ほんと?無理してない?別に今日全部しなくても…」
「やだ、絶対今日最後までする、今日がいい」
「えぇ…」
「ラビ」
「わかった、わかったから」
ラビは困ったように笑って、宥めるように頭を撫でられた。普通逆かもと思ったけど、無理やりされるよりはずっといい。ベッドの淵に座ったラビがどこか隠すように準備するのに気付いて、起き上がって近くで見てみた。初めて見る大きく勃ち上がったそれに少しだけ恐怖心が湧いたけど、好奇心の方が勝っていた。
「…触っていい?」
「えぇ?!い、いいよそんなことしなくて…」
「さわりたい、だめ…?」
「だ、だめではない、けどさ…あー…いいよ…」
緊張しながら、教えてもらった通りそっと握ってみる。思ったより熱くて硬いそれに、本当に人体の一部なのかと不思議な気分になる。
「…これ、入るのかな…」
「わかんない…が、頑張るけど…」
「ラビが頑張るの…?」
指より遥かに太いそれを見て当然と言えば当然の疑問が生まれる。どっちかというと頑張るのはあたしの方なのではと思ったけど、何故かラビの方が決意を固めたような顔をしていて逆に冷静になった。そういえば体格差ってどれくらいが許容範囲なんだろう、と頭ひとつ分以上身長差のある自分たちのことを考えていたらラビはいつの間にか準備を終えていた。最初みたいに丁寧に寝かせてくれるラビの顔がすごく真剣で、目が離せなかった。
「無理だったらすぐやめるからね」
「うん」
「痛かったら肩噛んでもいいし髪掴んでもいいよ」
「うん」
「あと…」
「ラビ」
「うん?」
「大好き」
「…うん、オレも大好き、***」
熱いものがひたりと当てられて、指とは比べ物にならない質量がゆっくり中に入ってきた。思わず体に力が入って、ラビの背中を思いっきり掴む。ラビがキスをしたり頭を撫でたりしてくれてようやく少しずつ力が抜けてきた。体全体でとにかくラビにしがみついて、ゆっくり息をしながらじわじわと強くなってくる痛みに耐える。どれくらい経ったのか、ラビに名前を呼ばれて我に帰った。
「***、***」
「な、に…」
「入ったよ、全部」
「…え、ほんと?」
「うん…大丈夫?」
「だい、じょ…うーん…?とりあえず、いたい、かも…」
「抜く?」
「…もうちょっと、このまま…」
「うん」
痛みを誤魔化すようにキスを求めた。少しだけ動かしてもらったけどやっぱりじんわりとした痛み以外のものを感じなくて、察してくれたのかしばらく経ってゆっくり引き抜かれた。ぼんやりとした頭で初めてって案外あっけないしロマンチックでもないんだなと思ったけど、ラビが嬉しそうで、それだけで幸せだった。
───────────────────────
「…あれ」
いつの間にか寝ていたらしい。雨も上がって、窓から差し込む光が隣に眠るラビの髪を橙色に光らせていた。ラビがやってくれたのか体はベタベタしていないし服も着ている。頭がすっきりしてくると徐々に下半身のだるさを体が思い出してきて、本当にしたんだ、と不思議な気分になる。ラビの肩に頭を寄せるとぴくりと瞼が動いて、気怠げな翡翠と目が合った。
「…ん、***…大丈夫?」
「うん、大丈夫」
頷いたら、ラビが覆い被さるように抱き締めてくる。優しく頭を撫でられて、どこか労わるようだった。
「…ありがとね」
「…なにが…?」
「なんか…いろいろ…ありがとう」
「…あたしも、ありがとう」
「なにが?」
「ぜんぶ、大事にしてくれて」
「…また泣かそうとしてる…?」
「違うけど、泣いてもいいよ」
笑ったラビが、体を離してあたしをじっと見つめる。指が服の上から胸の傷をなぞったあと、首筋を辿って優しく頬を撫でた。
「…綺麗だね、***」
蜂蜜みたいに甘い瞳にたまらなくなって、腕を伸ばしてキスをねだった。
(今日はオレが全部やるから、***ベッドから出なくていいよ…!)
(いやそこまででは…嬉しいけど)
⭐︎お礼⭐︎
アップルサイダー様
リクエストありがとうございました!
いろいろ設定を入れ込んでちょっと長くなってしまいましたが読み辛くないですかね…でも付き合うタイミングとか初夜とか、短編ではなかなか書かないこともちょっとだけ書けて楽しかったです!良きシチュをありがとうございます!
勝手に初夜にしてしまったのであんまり楽しい交わりにできなかったのが少し気がかりなんですが、また機会があればもう少し慣れた二人も書いてあげたいですね。ラビのために笑
その後を見守りたい愛しい子たちになりました。二人に幸あれ。
ここまで読んでいただきありがとうございます!何度も読み返していただけると嬉しいです(*^^*)