短編
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citrus
散歩がてらラボに立ち寄ったら、ひとつ様子の違う実験テーブルが目についた。なんだか楽しそうなので近寄ってみたら、ティモシーの勉強の時間らしい。いつもは座っていられない彼も作業をするのは楽しいようで、エミリアに見守られて珍しく自発的に取り組んでいた。
オレもドサクサに紛れて講師役の科学班員に質問したらちょっとめんどくさそうな顔をされたが、突っ込んだことを聞くと答えながら顔がイキイキしてくるところは面白い。ティモシーの手元を見ながら一緒にはしゃいでいたら、肩に誰かの手が触れた。
「なにやってんの?なんか楽しそう」
「あ、***ねーちゃん!一緒にやろーよ」
「やるやるー」
***はオレに軽くハグしてティモシーの相手をし始めた。女の子同士エミリアとも楽しそうに話し始めて、なんか癒される光景だ。背もたれのない椅子に座っている***の腰を軽く抱くようにして後ろから見ていたら、エミリアの目線がこちらにあることに気付いた。
「ん?どした?」
「…あなたたちっていっつもくっついてるわね、あなたはともかく***はそういうタイプに見えないから意外だわ」
「オレは違うんかい…まー、くっついてない時間があるのもったいないからなー」
「なぁにそれ…」
「はは、そーいうもんなんさ」
エミリアは不思議そうな顔をしたが、ただの惚気と思われたのか深追いはされなかった。
きっかけは数か月前、今日みたいに部屋の外で会ったとき、***がオレに真っ直ぐ近付いてきてさり気なく体を寄せてきたことだった。それまで別に隠してはいないが外でわかりやすく手を繋いだり腰を抱いたりはしていなくて、特に求めて来ないし人前でそういうことはしたくないんだと思っていた。だから驚いたが、「だって、もったいないし」と言われただけで特に説明はされなかった。確かに限られた時間で一緒にいるのだから触れ合わないのはもったいない。真意を深掘りしたことはないが、そういうことだと解釈して勝手に納得した。オレもどこかでずっとそう思っていたのかもしれない。
不思議なことに、隠さなくなったら周りが気を遣ってくれることが増えた。席が決まっていない集まりは隣同士になれるようにしてくれたり、特に聞いていなくても居場所を教えてもらったり。誰かを特別にするということは結局多数の人間を巻き込むことなのだと知った。それは良くないことだと思っていたが、それが***だとどうしようもなく嬉しくなってしまう。
***が二人きりのときオレにだけ見せていた可愛い顔を外でも見せるようになったのは少し困ったことでもあるけれど、それ以上に二人きりの時間が濃厚になった気がするのでやっぱり困っていないかもしれない。
───────────────────────
ラボを離れて***と二人手を繋いで散歩する。***はさっきの実験について楽しそうに話していた。
「ねぇ、オレがあそこにいるって知ってた?」
「ううん、ラビが美女と楽しそうにしてるって教えてもらったの」
***がおどけて腕に抱きついてくる。知らないところで誰かを通して見られているみたいで、悪いことは出来ないなと思う。それ以上に何処にいても見つけてもらえるのはなんだか嬉しい。腰を抱いてもっと密着すると***が楽しそうに笑って、愛しさが込み上げてくる。どうして触れているだけでこんなに嬉しいんだろう。思いっきり抱きしめてから、歩きやすいように少し腕の力を緩めてまた手を繋ぎ直す。ゆっくり歩きながら、さっきエミリアに言われたことを***にも話した。
「こういうの意外だと思われてるんだな、なんか新鮮さ」
「もう慣れちゃったしね…何であんなに…遠慮してたんだろ」
確かに、遠慮していたのかもしれない。今ではどこでもかしこでもお構いなしにくっついて呆れられるくらいだし、オレはなんなら記録のときも膝の上にいてほしいと思っているくらいだ。
いつか来るその時のために帳尻を合わせているみたいに、お互いに吸い寄せられるように触れ合っている。
人気がないのをいいことに***の唇を奪ったら、さっき使ったレモンのほろ苦さがふわりと香った。
(なんかレモンティー飲みたくなったかも)
(あー、そう?)
(…なんか違うこと考えてる?)
散歩がてらラボに立ち寄ったら、ひとつ様子の違う実験テーブルが目についた。なんだか楽しそうなので近寄ってみたら、ティモシーの勉強の時間らしい。いつもは座っていられない彼も作業をするのは楽しいようで、エミリアに見守られて珍しく自発的に取り組んでいた。
オレもドサクサに紛れて講師役の科学班員に質問したらちょっとめんどくさそうな顔をされたが、突っ込んだことを聞くと答えながら顔がイキイキしてくるところは面白い。ティモシーの手元を見ながら一緒にはしゃいでいたら、肩に誰かの手が触れた。
「なにやってんの?なんか楽しそう」
「あ、***ねーちゃん!一緒にやろーよ」
「やるやるー」
***はオレに軽くハグしてティモシーの相手をし始めた。女の子同士エミリアとも楽しそうに話し始めて、なんか癒される光景だ。背もたれのない椅子に座っている***の腰を軽く抱くようにして後ろから見ていたら、エミリアの目線がこちらにあることに気付いた。
「ん?どした?」
「…あなたたちっていっつもくっついてるわね、あなたはともかく***はそういうタイプに見えないから意外だわ」
「オレは違うんかい…まー、くっついてない時間があるのもったいないからなー」
「なぁにそれ…」
「はは、そーいうもんなんさ」
エミリアは不思議そうな顔をしたが、ただの惚気と思われたのか深追いはされなかった。
きっかけは数か月前、今日みたいに部屋の外で会ったとき、***がオレに真っ直ぐ近付いてきてさり気なく体を寄せてきたことだった。それまで別に隠してはいないが外でわかりやすく手を繋いだり腰を抱いたりはしていなくて、特に求めて来ないし人前でそういうことはしたくないんだと思っていた。だから驚いたが、「だって、もったいないし」と言われただけで特に説明はされなかった。確かに限られた時間で一緒にいるのだから触れ合わないのはもったいない。真意を深掘りしたことはないが、そういうことだと解釈して勝手に納得した。オレもどこかでずっとそう思っていたのかもしれない。
不思議なことに、隠さなくなったら周りが気を遣ってくれることが増えた。席が決まっていない集まりは隣同士になれるようにしてくれたり、特に聞いていなくても居場所を教えてもらったり。誰かを特別にするということは結局多数の人間を巻き込むことなのだと知った。それは良くないことだと思っていたが、それが***だとどうしようもなく嬉しくなってしまう。
***が二人きりのときオレにだけ見せていた可愛い顔を外でも見せるようになったのは少し困ったことでもあるけれど、それ以上に二人きりの時間が濃厚になった気がするのでやっぱり困っていないかもしれない。
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ラボを離れて***と二人手を繋いで散歩する。***はさっきの実験について楽しそうに話していた。
「ねぇ、オレがあそこにいるって知ってた?」
「ううん、ラビが美女と楽しそうにしてるって教えてもらったの」
***がおどけて腕に抱きついてくる。知らないところで誰かを通して見られているみたいで、悪いことは出来ないなと思う。それ以上に何処にいても見つけてもらえるのはなんだか嬉しい。腰を抱いてもっと密着すると***が楽しそうに笑って、愛しさが込み上げてくる。どうして触れているだけでこんなに嬉しいんだろう。思いっきり抱きしめてから、歩きやすいように少し腕の力を緩めてまた手を繋ぎ直す。ゆっくり歩きながら、さっきエミリアに言われたことを***にも話した。
「こういうの意外だと思われてるんだな、なんか新鮮さ」
「もう慣れちゃったしね…何であんなに…遠慮してたんだろ」
確かに、遠慮していたのかもしれない。今ではどこでもかしこでもお構いなしにくっついて呆れられるくらいだし、オレはなんなら記録のときも膝の上にいてほしいと思っているくらいだ。
いつか来るその時のために帳尻を合わせているみたいに、お互いに吸い寄せられるように触れ合っている。
人気がないのをいいことに***の唇を奪ったら、さっき使ったレモンのほろ苦さがふわりと香った。
(なんかレモンティー飲みたくなったかも)
(あー、そう?)
(…なんか違うこと考えてる?)
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