短編
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愛情カロリーオーバー
「ちょっとダイエットしようかと思ってるんだよねー」
昨日久しぶりに乗った体重計は、今まで見たことない数字を叩き出していた。
だってラビがいろんなところに連れて行ってくれるし、ラビと一緒だと何でも美味しくて食べ過ぎちゃうし、今だって家に来る前に寄ったドーナツ屋で悩んだのを全部買ってくれた。お互い目の前にあるのは2つずつだけど箱にはあと3つ入っていて、たぶん食べきれなかった分は全部持ち帰らせてくれるだろう。さすがに甘やかされすぎている自覚はある。ラビは見た目について本当に何も言わないから、自分で危機感を持たないといけないんだとようやく気付いた。
甘いカフェラテを啜ってこういうのも今度から我慢しなきゃなぁと思いながらラビを見たら、悪の司令官みたいに手を組んでものすごい目でこちらを睨みつけていた。
「うわ、どうしたの」
「…今、なんて…?」
「え、ダイエット、するって…」
「はぁ…?」
今度はものすごく低い声で凄まれた。喧嘩も滅多にしないけど、極たまに怒った時でさえこんな態度は見たことがなくてちょっとだけ怖くなる。また低い声で何故と聞かれたから、久しぶりに体重計に乗った話を素直にした。黙ってじとりと見つめられるのに耐えられなくて思い切って数字を言ってみてもラビは眉ひとつ動かさないし、むしろ「知ってる」とか言ってきて怖い。一度だけ、付き合ったばかりの頃の体重しか教えたことないのに。
「***の身長なら平均よりちょっと多いくらいじゃん、痩せる必要ないさ」
「いや多いんだから、痩せないと…」
「何で?そんな決まりないけど?」
そうだけど。彼女が痩せるって言ったら普通喜ぶんじゃないの?ちょっと意味がわからない。困惑していたらラビは急にタブレットを取り出して、女性の平均体重のデータや無理なダイエットのリスクについての論文をいくつも見せてくる。まるであたしが3日でマイナス10キロとか言って暴れ散らしたかのような諭し方だ。世間話程度、明日から頑張りますくらいのテンションだった気がしたんだけど。今ドーナツ食べてるし。
ラビが熱弁しながら息をするように「可愛い」「好き」を入れてくるのでちょっと絆されそうになって、あたしも譲れないので慌ててダイエットしたい理由をいくつか挙げる。
「ちょっとキツくなっちゃった服あるし…」
「もっと合うの買ってあげる」
「体重いし…」
「オレが抱っこできるから大丈夫」
「去年の写真より明らかに大きくなってて…」
「何がダメなの?あ、オレがデカくなれば気にならなくなる…?」
さっきまでデータだソースだ言ってたのにだんだん支離滅裂になってきてさすがに面白い。ありのままで愛してもらえるのは嬉しいけど、あたしは大好きなラビの隣にいる自分をベストな状態で保ちたいだけだ。
「ラビ、ありがとね心配してくれて…あのさ、まず健康になりたいんだけど、その結果痩せるんだったらいい?」
「健康…?う〜ん…まぁ、それなら…」
「取り敢えず、3ヶ月後のデートで着たい服着れるように頑張るね」
「…うん、じゃあオレも筋トレでもしよっかな…」
「ふふ、お互い頑張ろうね」
「絶ッッッ対無理しちゃダメだからね?!」
「わかったわかった」
食事管理しようか?と提案してくれたけど、何でも知識を吸収する彼の頭にあんまり不必要な情報を溜めさせるのはどうかと思った。あとシンプルにそこまで厳格にやろうとは思っていないので、いつか本格的にボディメイクがやりたくなった時はお願いすると言って納得させる。取り敢えず今日は、好きなだけドーナツを食べることにした。
───────────────────────
3ヶ月後、無駄に食べないようにしたのと出来るだけ歩くようにしただけで体重は3キロ近く落とせていた。ちょうど平均体重くらいだし、体調も全く崩してないので許されるだろう。この3ヶ月間は普通にデートもして、いつも通りたくさん愛し合った。ラビは会う度あたしの体を見て真顔で「減ってる…」と呟いてきた。本当に無理せず緩やかに落としているはずだし頻繁に会っているのに何で見た目でわかるのか、ちょっと怖い。
それと、ラビは本当に筋トレを始めたらしくて彼の方が脱いだ時の見た目が大きく変わった。羨ましいけど男の人と比べたって仕方ないし、ますます素敵になってしまったラビに釣り合う自分にならなくてはと思って頑張れたので良かったかもしれない。
約束の日、着たかった服を着てデートの待ち合わせ場所に向かうと、ラビが既に立っていた。元々スタイルはいいけど無駄がなくなった体はシンプルな服装がもっと似合うようになっていて、こんなにカッコいい人があたしのことを好きだなんていまだにちょっと信じられない。手を振るといつもの優しい笑顔で手を振り返してくれた。
「***、今日も可愛いさ」
「ありがと…ラビも、カッコいいよ」
「まぁねー」
おどけて手を繋ぎながら、ラビがあたしのジーンズを指差した。
「あ、それ一緒に買いに行ったやつ?」
「うん、これ穿けなくなったら困るから」
「ふーん…」
ラビが初めて、あたしが痩せることに関して肯定的な顔をした気がする。手を握り直してダイエットお疲れ様会、スイーツ食べ放題に向けて歩き出した。
(***、これも、これも、これも美味しいさ)
(うん、一旦カレー挟むから待って)
「ちょっとダイエットしようかと思ってるんだよねー」
昨日久しぶりに乗った体重計は、今まで見たことない数字を叩き出していた。
だってラビがいろんなところに連れて行ってくれるし、ラビと一緒だと何でも美味しくて食べ過ぎちゃうし、今だって家に来る前に寄ったドーナツ屋で悩んだのを全部買ってくれた。お互い目の前にあるのは2つずつだけど箱にはあと3つ入っていて、たぶん食べきれなかった分は全部持ち帰らせてくれるだろう。さすがに甘やかされすぎている自覚はある。ラビは見た目について本当に何も言わないから、自分で危機感を持たないといけないんだとようやく気付いた。
甘いカフェラテを啜ってこういうのも今度から我慢しなきゃなぁと思いながらラビを見たら、悪の司令官みたいに手を組んでものすごい目でこちらを睨みつけていた。
「うわ、どうしたの」
「…今、なんて…?」
「え、ダイエット、するって…」
「はぁ…?」
今度はものすごく低い声で凄まれた。喧嘩も滅多にしないけど、極たまに怒った時でさえこんな態度は見たことがなくてちょっとだけ怖くなる。また低い声で何故と聞かれたから、久しぶりに体重計に乗った話を素直にした。黙ってじとりと見つめられるのに耐えられなくて思い切って数字を言ってみてもラビは眉ひとつ動かさないし、むしろ「知ってる」とか言ってきて怖い。一度だけ、付き合ったばかりの頃の体重しか教えたことないのに。
「***の身長なら平均よりちょっと多いくらいじゃん、痩せる必要ないさ」
「いや多いんだから、痩せないと…」
「何で?そんな決まりないけど?」
そうだけど。彼女が痩せるって言ったら普通喜ぶんじゃないの?ちょっと意味がわからない。困惑していたらラビは急にタブレットを取り出して、女性の平均体重のデータや無理なダイエットのリスクについての論文をいくつも見せてくる。まるであたしが3日でマイナス10キロとか言って暴れ散らしたかのような諭し方だ。世間話程度、明日から頑張りますくらいのテンションだった気がしたんだけど。今ドーナツ食べてるし。
ラビが熱弁しながら息をするように「可愛い」「好き」を入れてくるのでちょっと絆されそうになって、あたしも譲れないので慌ててダイエットしたい理由をいくつか挙げる。
「ちょっとキツくなっちゃった服あるし…」
「もっと合うの買ってあげる」
「体重いし…」
「オレが抱っこできるから大丈夫」
「去年の写真より明らかに大きくなってて…」
「何がダメなの?あ、オレがデカくなれば気にならなくなる…?」
さっきまでデータだソースだ言ってたのにだんだん支離滅裂になってきてさすがに面白い。ありのままで愛してもらえるのは嬉しいけど、あたしは大好きなラビの隣にいる自分をベストな状態で保ちたいだけだ。
「ラビ、ありがとね心配してくれて…あのさ、まず健康になりたいんだけど、その結果痩せるんだったらいい?」
「健康…?う〜ん…まぁ、それなら…」
「取り敢えず、3ヶ月後のデートで着たい服着れるように頑張るね」
「…うん、じゃあオレも筋トレでもしよっかな…」
「ふふ、お互い頑張ろうね」
「絶ッッッ対無理しちゃダメだからね?!」
「わかったわかった」
食事管理しようか?と提案してくれたけど、何でも知識を吸収する彼の頭にあんまり不必要な情報を溜めさせるのはどうかと思った。あとシンプルにそこまで厳格にやろうとは思っていないので、いつか本格的にボディメイクがやりたくなった時はお願いすると言って納得させる。取り敢えず今日は、好きなだけドーナツを食べることにした。
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3ヶ月後、無駄に食べないようにしたのと出来るだけ歩くようにしただけで体重は3キロ近く落とせていた。ちょうど平均体重くらいだし、体調も全く崩してないので許されるだろう。この3ヶ月間は普通にデートもして、いつも通りたくさん愛し合った。ラビは会う度あたしの体を見て真顔で「減ってる…」と呟いてきた。本当に無理せず緩やかに落としているはずだし頻繁に会っているのに何で見た目でわかるのか、ちょっと怖い。
それと、ラビは本当に筋トレを始めたらしくて彼の方が脱いだ時の見た目が大きく変わった。羨ましいけど男の人と比べたって仕方ないし、ますます素敵になってしまったラビに釣り合う自分にならなくてはと思って頑張れたので良かったかもしれない。
約束の日、着たかった服を着てデートの待ち合わせ場所に向かうと、ラビが既に立っていた。元々スタイルはいいけど無駄がなくなった体はシンプルな服装がもっと似合うようになっていて、こんなにカッコいい人があたしのことを好きだなんていまだにちょっと信じられない。手を振るといつもの優しい笑顔で手を振り返してくれた。
「***、今日も可愛いさ」
「ありがと…ラビも、カッコいいよ」
「まぁねー」
おどけて手を繋ぎながら、ラビがあたしのジーンズを指差した。
「あ、それ一緒に買いに行ったやつ?」
「うん、これ穿けなくなったら困るから」
「ふーん…」
ラビが初めて、あたしが痩せることに関して肯定的な顔をした気がする。手を握り直してダイエットお疲れ様会、スイーツ食べ放題に向けて歩き出した。
(***、これも、これも、これも美味しいさ)
(うん、一旦カレー挟むから待って)
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