短編
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あいのかたち
「…あ、ちなみにこれ、人の好意が目に見えるんだよね」
「…え?」
ジョニーがバリバリ食べていたので安全だと思って気軽にもらって食べたんだが。口の中で崩れるブドウ糖の甘さを感じながら眉を顰める。
「…普通にうめぇ…」
「食べる人によってはただのラムネだからね」
「どゆこと?」
「恋人からの愛情が目に見えるようになるんだよ。量とか大きさとか様々みたいで結構面白そうなんだけど、みんな照れてあんまり教えてくれないんだよね〜」
「ふーん…?」
また変なもの作ったな。しかしこれに関してはパートナーがいる人間にしか発動しないし、発動したとて特に害もないので単なる糖分補給として食べているのが他にも何人かいるらしい。オレも***からの愛情が可視化されたところで困らないどころかむしろ嬉しいのでまぁいいかと思った。
ラボを出てぶらぶら散歩する。当然今のところ視界に変化はない。どんなものが見えるか少し興味があったので、効果が切れる前に***に会いたいものだ。…何も見えなかったらどうしよう、と少しだけ思ったりして、何となく積極的に探しに行く気はまだ起きない。そこの角を曲がったところでひょっこり現れたりしないだろうか、とか都合の良いことを考える。
中庭の花をつけ始めた枝を眺めていると、何かが足元に転がってきた。見ると拳より少し小さいくらいの大きさの、薄いピンク色をしたハート。明らかに自然界に存在しないものに驚いていると、すぐに名前を呼ぶ声がする。
「ラビ、いた!」
声の方を向くと***が嬉しそうに近付いてきた。どこから生み出されているのか、***の側でさっき転がってきたみたいなハートがシャボン玉みたいにポンポン生まれている。平静を装って返事のかわりに片手を上げると***の顔が綻ぶのと一緒に小さいハートがたくさん弾けた。ちょっと待てよ、可愛すぎないか。
「おー…もしかして探してた?」
「うん」
「…なんか用だった?」
「んーん、会いたかっただけ」
「…そっか」
いつも通り可愛い***がハートのおかげでもっと可愛く見える。抱きしめたくなって、いつものように伸ばしたオレの手に***が触れた瞬間、弾かれたように手が離れた。何事かと思ったら、***が目を瞬かせて不思議そうな顔をしている。
「ん…?」
「どした?」
「…なんか、変なものが見えた気が…」
「えっ?!」
ハートはオレにしか見えていないはずだ。***が足元をキョロキョロと見渡す。そこかしこにハートが落ちては消えているのがオレの視界には映っているが、もしかして。
「触ったら見えるようになんの…?」
「えっ何の話?」
***が訝しげにオレを見るのでさっきの出来事を話すと、もっと訝しげな顔をした。
「じゃあさっき見えたのはあたしの…?」
「そう、だね…」
「今も見えてる?」
「…足の踏み場がないくらい」
「……」
ちょっと気まずそうだ。しかし実際には何もないはずの場所を目で追うオレが気になるのか、***がそっと手を伸ばしてきた。触れた瞬間、***が地面を見てギョッとする。
「えっなにこれ?!」
「***って本当にオレのこと好きなんだ…?」
「あ、あたりまえじゃん…」
体が触れるとますますハートが増える。別に***の気持ちを疑ったことはないが、まさかこんなに、見た通り溢れる愛情を向けてくれているとは思っていなかった。可視化されたものがどれほど正確かは本人にしかわからないと思うが、***は別に異論はないようだ。
ハートは強い衝撃で消えてしまうようで、***はしばらく足で払ってパチパチと消える様を楽しんでいたが、飽きたのかすぐやめた。何よりキリがない。
「ねー、ラビのも見たい」
「え、いいじゃんオレのは…」
「見たい見たい見たいー」
自分のが変だったらどうしようと思って誤魔化したが、オレは***のを勝手に見たわけだし確かにフェアじゃないので渋々頷く。***がハートを落としながらジョニーのところに走っていく後ろ姿を愛しく眺めて、確かに恋人のこんな可愛いところは誰にも教えたくないと思った。足元に残ったハートがぱちぱち消えていくのを楽しみながら、愛しい恋人が戻ってくるのを部屋で待つことにした。
───────────────────────
いつも科学班の作るものには悩まされるけど、今回のはちょっと楽しい。まさか自分の愛情があんなにあからさまだとは思わなかったけど、別に隠してないしわかりやすく伝わって嬉しいくらいだ。
ラビが食べたのと同じラムネを口の中でほろほろ崩しながら部屋へ急ぐ。ラムネとして普通に美味しいし、変なもの作るならこういうパーティーグッズみたいなもの程度にしてほしいものだ。珍しく発明品を迷惑がられなくてジョニーも嬉しそうだったし。
「ただいまー」
自分の部屋だけどラビがいるはずなので、一応ノックする。どんなものが見えるかとわくわくしながら扉を開けた。
「おかえり…なんか見える…?」
「えっと…え…?」
ベッドに座ったラビは何となく緊張しているように見える。扉を閉めて、見えているものを確認した。
でかくてごろっとしたものが床に転がっている。
人一人が丸まったらこれくらいかな、という大きさのハートがいくつか。さっき見たあたしのとは違ってずっしりと重そうだ。あと色が濃く見えるのはなんでだろう。
「…なんか書いてある…?」
「なー見して見して」
ラビが腕を広げてくるのでそこに収まったらラビにも見えて、目を丸くした。あとあたしのも見えるようになったから視界がうるさい。ラビの大きくごろっとしたハートの隙間を埋めるように、あたしの小さくて大量のハートがころころ転がっていく。あたしのは何かにぶつかったらすぐ消えてしまうけど、ラビのは端にたまってなかなか消えないようだ。
「何これ…?」
「ねぇ、なんか書いてない?」
「どれ…?」
お互いに触れていないと見えなくなってしまうので、手を繋いで転がった大きなハートをひとつずつ見て回る。ラビのハートには何か細かく文字みたいなのが浮かんでいて、色が濃く見えるのはたぶんそのせいだ。よく見るとどのハートにも違うものが書かれているように見える。英語じゃないみたいで何が書いてあるか聞こうとしたら、口を塞ぐようにキスされた。そのままハートまみれのシーツに押し倒される。
「んー、なに」
「なんでもない、別に読まなくていいさあんなのは…」
「えー教えてよ」
「大したこと書いてないから!」
「ふーん…ねぇ」
ラビの首に腕を回して引き寄せる。シーツの上に無限に生み出されるハートに逸れるラビの視線を奪うようにキスをして、翡翠をじっと見つめた。
「…このまま、してみる…?」
特大のハートがごろりと落ちた。
───────────────────────
「んっ、ラビ、っ……あっ」
「っ…、かわい、***」
奥を突きながら、ラビがあたしの頭を愛しそうに撫でてくれる。それだけで嬉しくて、大好きの気持ちがハートになってぽろぽろ溢れた。
「***、きもちい、ね…」
「ん、きもち…」
「…今のは、何で…?」
急にハートが大量発生してラビが不思議そうにする。ハートはずっと出続けているけど、ラビが優しかったり触られて嬉しかったりするとわかりやすくハートが増える。あたしには思っている通りでもラビにとってはよくわからない時もあるようだった。
「…ラビが気持ちいいの、嬉しいから…」
「そうなんだ…もー、可愛い…」
「あ、あっ…」
溢れ出たハートが、ラビが腰を揺らす度ぱちぱちと消える。ラビのはタイミングがよくわからなくて、というより果実が実るように定期的に現れては床に転がっていく。ふと目線を向けたときに数があまり変わらないから、生まれるたび古いものと入れ替わっているのかもしれない。大きくてすぐベッドから落ちてどこかへ行ってしまうから、組み敷かれている状態では気付きにくくてちょっと悔しい。
投げ出された手にラビの手のひらが重なって、嬉しくなる。ぎゅっと握ったらラビが優しく笑った。
「手繋ぐの、好きなんだ」
「ん、すき」
「これは知ってたさ」
優しく微笑まれてどきりとした。ゆるく中を擦っていたのがとんどん速度が上がっていく。ぎゅっと抱きしめられて、奥に押し付けるようにしてラビが達したのを感じた。お互い荒い息を整えるようにゆっくりキスをする。
「***、あいしてる」
微睡む中、ラビの声が聞こえた気がした。
一眠りしたら視界はすっかりクリアになっていた。ラビはいつにも増してずっとニコニコしている。
「どうしたの…?」
「だって、今もずっとハート出てるんだなって思ったら、可愛くて」
「…ねぇラビ、あのさ…」
ラビのハートには何が書いてあったのか。聞こうとしたけどやっぱりやめた。なんだか聞くのは野暮な気がする。
「なに?」
「ううん…ラビ、あたしも」
あいしてる。
そう言うと、とても優しいキスが降ってきた。
(ラビのは思った通りだったなー)
(え、どういうこと?)
(大きくて重い感じ…ごめん、そういうとこ好きって話だから!)
「…あ、ちなみにこれ、人の好意が目に見えるんだよね」
「…え?」
ジョニーがバリバリ食べていたので安全だと思って気軽にもらって食べたんだが。口の中で崩れるブドウ糖の甘さを感じながら眉を顰める。
「…普通にうめぇ…」
「食べる人によってはただのラムネだからね」
「どゆこと?」
「恋人からの愛情が目に見えるようになるんだよ。量とか大きさとか様々みたいで結構面白そうなんだけど、みんな照れてあんまり教えてくれないんだよね〜」
「ふーん…?」
また変なもの作ったな。しかしこれに関してはパートナーがいる人間にしか発動しないし、発動したとて特に害もないので単なる糖分補給として食べているのが他にも何人かいるらしい。オレも***からの愛情が可視化されたところで困らないどころかむしろ嬉しいのでまぁいいかと思った。
ラボを出てぶらぶら散歩する。当然今のところ視界に変化はない。どんなものが見えるか少し興味があったので、効果が切れる前に***に会いたいものだ。…何も見えなかったらどうしよう、と少しだけ思ったりして、何となく積極的に探しに行く気はまだ起きない。そこの角を曲がったところでひょっこり現れたりしないだろうか、とか都合の良いことを考える。
中庭の花をつけ始めた枝を眺めていると、何かが足元に転がってきた。見ると拳より少し小さいくらいの大きさの、薄いピンク色をしたハート。明らかに自然界に存在しないものに驚いていると、すぐに名前を呼ぶ声がする。
「ラビ、いた!」
声の方を向くと***が嬉しそうに近付いてきた。どこから生み出されているのか、***の側でさっき転がってきたみたいなハートがシャボン玉みたいにポンポン生まれている。平静を装って返事のかわりに片手を上げると***の顔が綻ぶのと一緒に小さいハートがたくさん弾けた。ちょっと待てよ、可愛すぎないか。
「おー…もしかして探してた?」
「うん」
「…なんか用だった?」
「んーん、会いたかっただけ」
「…そっか」
いつも通り可愛い***がハートのおかげでもっと可愛く見える。抱きしめたくなって、いつものように伸ばしたオレの手に***が触れた瞬間、弾かれたように手が離れた。何事かと思ったら、***が目を瞬かせて不思議そうな顔をしている。
「ん…?」
「どした?」
「…なんか、変なものが見えた気が…」
「えっ?!」
ハートはオレにしか見えていないはずだ。***が足元をキョロキョロと見渡す。そこかしこにハートが落ちては消えているのがオレの視界には映っているが、もしかして。
「触ったら見えるようになんの…?」
「えっ何の話?」
***が訝しげにオレを見るのでさっきの出来事を話すと、もっと訝しげな顔をした。
「じゃあさっき見えたのはあたしの…?」
「そう、だね…」
「今も見えてる?」
「…足の踏み場がないくらい」
「……」
ちょっと気まずそうだ。しかし実際には何もないはずの場所を目で追うオレが気になるのか、***がそっと手を伸ばしてきた。触れた瞬間、***が地面を見てギョッとする。
「えっなにこれ?!」
「***って本当にオレのこと好きなんだ…?」
「あ、あたりまえじゃん…」
体が触れるとますますハートが増える。別に***の気持ちを疑ったことはないが、まさかこんなに、見た通り溢れる愛情を向けてくれているとは思っていなかった。可視化されたものがどれほど正確かは本人にしかわからないと思うが、***は別に異論はないようだ。
ハートは強い衝撃で消えてしまうようで、***はしばらく足で払ってパチパチと消える様を楽しんでいたが、飽きたのかすぐやめた。何よりキリがない。
「ねー、ラビのも見たい」
「え、いいじゃんオレのは…」
「見たい見たい見たいー」
自分のが変だったらどうしようと思って誤魔化したが、オレは***のを勝手に見たわけだし確かにフェアじゃないので渋々頷く。***がハートを落としながらジョニーのところに走っていく後ろ姿を愛しく眺めて、確かに恋人のこんな可愛いところは誰にも教えたくないと思った。足元に残ったハートがぱちぱち消えていくのを楽しみながら、愛しい恋人が戻ってくるのを部屋で待つことにした。
───────────────────────
いつも科学班の作るものには悩まされるけど、今回のはちょっと楽しい。まさか自分の愛情があんなにあからさまだとは思わなかったけど、別に隠してないしわかりやすく伝わって嬉しいくらいだ。
ラビが食べたのと同じラムネを口の中でほろほろ崩しながら部屋へ急ぐ。ラムネとして普通に美味しいし、変なもの作るならこういうパーティーグッズみたいなもの程度にしてほしいものだ。珍しく発明品を迷惑がられなくてジョニーも嬉しそうだったし。
「ただいまー」
自分の部屋だけどラビがいるはずなので、一応ノックする。どんなものが見えるかとわくわくしながら扉を開けた。
「おかえり…なんか見える…?」
「えっと…え…?」
ベッドに座ったラビは何となく緊張しているように見える。扉を閉めて、見えているものを確認した。
でかくてごろっとしたものが床に転がっている。
人一人が丸まったらこれくらいかな、という大きさのハートがいくつか。さっき見たあたしのとは違ってずっしりと重そうだ。あと色が濃く見えるのはなんでだろう。
「…なんか書いてある…?」
「なー見して見して」
ラビが腕を広げてくるのでそこに収まったらラビにも見えて、目を丸くした。あとあたしのも見えるようになったから視界がうるさい。ラビの大きくごろっとしたハートの隙間を埋めるように、あたしの小さくて大量のハートがころころ転がっていく。あたしのは何かにぶつかったらすぐ消えてしまうけど、ラビのは端にたまってなかなか消えないようだ。
「何これ…?」
「ねぇ、なんか書いてない?」
「どれ…?」
お互いに触れていないと見えなくなってしまうので、手を繋いで転がった大きなハートをひとつずつ見て回る。ラビのハートには何か細かく文字みたいなのが浮かんでいて、色が濃く見えるのはたぶんそのせいだ。よく見るとどのハートにも違うものが書かれているように見える。英語じゃないみたいで何が書いてあるか聞こうとしたら、口を塞ぐようにキスされた。そのままハートまみれのシーツに押し倒される。
「んー、なに」
「なんでもない、別に読まなくていいさあんなのは…」
「えー教えてよ」
「大したこと書いてないから!」
「ふーん…ねぇ」
ラビの首に腕を回して引き寄せる。シーツの上に無限に生み出されるハートに逸れるラビの視線を奪うようにキスをして、翡翠をじっと見つめた。
「…このまま、してみる…?」
特大のハートがごろりと落ちた。
───────────────────────
「んっ、ラビ、っ……あっ」
「っ…、かわい、***」
奥を突きながら、ラビがあたしの頭を愛しそうに撫でてくれる。それだけで嬉しくて、大好きの気持ちがハートになってぽろぽろ溢れた。
「***、きもちい、ね…」
「ん、きもち…」
「…今のは、何で…?」
急にハートが大量発生してラビが不思議そうにする。ハートはずっと出続けているけど、ラビが優しかったり触られて嬉しかったりするとわかりやすくハートが増える。あたしには思っている通りでもラビにとってはよくわからない時もあるようだった。
「…ラビが気持ちいいの、嬉しいから…」
「そうなんだ…もー、可愛い…」
「あ、あっ…」
溢れ出たハートが、ラビが腰を揺らす度ぱちぱちと消える。ラビのはタイミングがよくわからなくて、というより果実が実るように定期的に現れては床に転がっていく。ふと目線を向けたときに数があまり変わらないから、生まれるたび古いものと入れ替わっているのかもしれない。大きくてすぐベッドから落ちてどこかへ行ってしまうから、組み敷かれている状態では気付きにくくてちょっと悔しい。
投げ出された手にラビの手のひらが重なって、嬉しくなる。ぎゅっと握ったらラビが優しく笑った。
「手繋ぐの、好きなんだ」
「ん、すき」
「これは知ってたさ」
優しく微笑まれてどきりとした。ゆるく中を擦っていたのがとんどん速度が上がっていく。ぎゅっと抱きしめられて、奥に押し付けるようにしてラビが達したのを感じた。お互い荒い息を整えるようにゆっくりキスをする。
「***、あいしてる」
微睡む中、ラビの声が聞こえた気がした。
一眠りしたら視界はすっかりクリアになっていた。ラビはいつにも増してずっとニコニコしている。
「どうしたの…?」
「だって、今もずっとハート出てるんだなって思ったら、可愛くて」
「…ねぇラビ、あのさ…」
ラビのハートには何が書いてあったのか。聞こうとしたけどやっぱりやめた。なんだか聞くのは野暮な気がする。
「なに?」
「ううん…ラビ、あたしも」
あいしてる。
そう言うと、とても優しいキスが降ってきた。
(ラビのは思った通りだったなー)
(え、どういうこと?)
(大きくて重い感じ…ごめん、そういうとこ好きって話だから!)