短編
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Magic Word
何だかイライラしていた。
妙に悲しいし、何となく疲れている気もするし、暴れたいし何もしたくない。
全ての状態異常が起きているような心情で、何をやっても解消されない。
ベッドで溶けて別の何かになりそうなほど寝返りを打って、ふいにラビの顔が浮かぶ。優しい声と温かい手を思い出したら、なんだか無性に。
めちゃくちゃにされたいと、思ってしまった。
ラビを探していそうな場所を一通り歩いてみたけどいなかった。任務ではないことはわかっているので、たぶん機密文書の書庫だ。あそこは限られた人たちしか入れない場所なのであたしはあの周辺に行くことさえあまりない。でも今日はどうしてもラビに会いたくて、入れないのは承知で扉の前まで来てしまった。来てみたものの緊急の用事でもないのにノックするのは躊躇われて、ただ部屋の前をうろうろする。廊下を行って戻ってを5回くらい繰り返した頃、突然目当ての赤毛が顔を出した。びっくりして意味もなく壁に張り付く。
「***…?」
壁に付けた額を一瞬ラビに向けて、また戻す。ラビの抑えた笑い声と、中に「ちょっと休憩してくる」と声をかけるのが聞こえて、扉が閉まる音がする。
「ニンジャごっこ?」
「…うん……」
「ふーん…」
視線を感じながらしばらく黙っていたけど耐えられなくなって、今度はラビの胸に張り付いたら笑って受け止めてくれた。
「なんか用だった?」
「…何でもない……」
「…ずっといたみたいだけど、ほんとに?」
「…あい、たかった」
「そっか、嬉しい」
なんだ、バレてたんだ。ブックマンがラビに見に行かせたのかもしれない。仕事を中断させてしまって申し訳ないと思ったけど、ついでに何か飲むと言うから着いて行った。食堂で温かい飲み物をもらって木陰のベンチに座る。
「あ〜つっかれた…」
「お疲れ様…」
「コーヒーうめー」
ベンチでいろんな崩れ方をするラビはどのポーズでもその長い脚が邪魔そうだ。しばらく見ていたらラビが視線に気付いて、座り直して腕を広げた。迷わず隙間に入り込んだら、ピースがぴたりとはまったような安心感。額にキスが落ちてきて嬉しくなる。
「珍しいさ、***があんなとこまで会いに来るなんて」
「…ごめんね、邪魔しちゃって」
「んーん、なんかあった?」
「…別に……」
「…ふーん?」
頬杖をついてコーヒーを啜るのも妙に様になっているのは何なんだろう。さすがにいきなり抱いてくれ、とは言えないので何となく目線を泳がせる。あたしの様子がおかしいことにラビは気付いているようだ。
ラビが鋭いのはこういう時だけ、ではない。彼はいつでもあたしの変化に敏感で、他の誰も気付かない些細なことでも気付いてくれる。外見に関しては記憶力によるところもあるのかもしれないけど、内面に関してもよく気付いてくれるのは観察力のなせる技だと思う。そして、無理に聞き出そうともしない。ただこうやって側にいてくれて、だからラビなら何とかしてくれると思ってしまう。
少し首を伸ばしたらラビが自然と屈んでくれるので、耳元にできるだけ口を近づけた。
「ラビ…今日、したい…」
「…え」
ラビが驚いた顔をする。
あたしから誘うことがないわけじゃないけど、最近は慣れてきて一緒に寝る時に何となくそういう雰囲気になって何となく始めることが多かったから、はっきり言葉にすることは少なかった。だから驚いたのかと思ったけど、その表情はどんどん険しくなっていき、最終的に顎に手を当てて考え込むような顔をした。あまりにもじっと見るので居た堪れなくなって自分のミルクティーを啜ったけど、それが半分なくなってもラビの表情は変わらなかった。何なの。
「…何なの」
「いや、それはこっちのセリフっていうか…」
「はぁ?」
「いやごめん、だってさぁ…」
仮にも可愛い彼女が誘ってるのになんて言い草だ、と少し我儘なことを思ったけど、何か言いたげなので言葉の続きを待ってみる。
「***、本当にしたいの…?」
「…はぁ?!」
「だって全然…なんていうか…ムラムラしてる感じじゃない気がするけど…なーんか誤魔化してない?」
「えっ」
今度はあたしがびっくりした。確かに、誤魔化したかった。でも何も言ってないのに顔を見ただけで何でそんなことわかるんだろうか。
長い沈黙の後、意を決して口を開いた。
「…なんかね今日、おかしくて…」
「うん?」
「なにしてもダメだから、どうにかしたくて…」
「…うん」
ぽろぽろと、今の気持ちを口に出す。途中からよくわからない涙が出てきて言葉は支離滅裂だったけど、ラビは手を握ったり腕をさすったりしながら何も言わずに全部聞いてくれた。
「ごめん、ごめんね」
「ん、いいよ」
ラビがカップを渡してきて、そういえばいつの間にか持っていなかったことに気付いた。途中でハンカチをくれたときに渡した気がする。避けて置いてくれていたみたいで、受け取って口をつけたらもうすっかり冷たかったけどすごく甘く感じた。気持ちも涙も出し切ってすっきりした気がして、泣いていてしばらく見ていなかったラビの顔を見てみたら、とても優しい顔をしていた。きっと、ずっとこういう顔で聞いていてくれたんだろう。首を伸ばして顔を近づけたら、同じように顔を近づけてキスしてくれた。嬉しくて、やっぱりラビが大好きだなぁと思う。
「ねぇ、ラビ」
「うん?」
「やっぱり今日、したい…だめ…?」
自分がどんな顔をしてるかわからないけど、今は純粋にラビがほしい。じっと見つめたらすごく嬉しそうに笑ってくれた。
「うん、オレも、したいな」
その後たくさんキスをしてラビは書庫に戻って行った。
今夜がすごく楽しみだ。
───────────────────────
「たでーまー」
「…長い休憩だったな」
「んだよお茶持ってきてやったろ」
「お前…いや何でもない」
「…ンなわけねーだろ!!」
何を言いたいのか察して、ちょっとムカついたので久しぶりに強めに背中を叩いてしまった。結構な老人のくせにカカと笑っただけでびくともしない。いろんな意味でとんでもないじじいだ。
今日の分の記録を終えて、約束した通り***の部屋へ出向く。出迎えてくれた***は何だか緊張していて、初めての時を思い出して愛しくなった。オレをベッドまで誘導して座らせた***は、改まって口を開いた。
「昼間は、ありがとね」
「どういたしまして」
「今日はその…お願いが、あります」
「…なんでしょうか…?」
「あの…め…めちっ、め、た…あ、待って」
盛大に噛んだな。水を一口飲んで、改めて改まった***を気長な気持ちで眺める。
「あのね…めちゃくちゃに、してほしいって…昼間、思ってて…」
「…は…え、なに?!」
突然の告白に驚いて素っ頓狂な声を出してしまった。***は髪をいじりながら目を泳がせている。可愛い。じゃなくて。
「そんなこと考えてたの…?」
「あ、あの時は、むしゃくしゃして…」
むしゃくしゃしてめちゃくちゃにされたくなるって破滅的すぎないか。違和感はあったが、さすがににそんな気持ちだったとは思っていなかったので面食らう。なぜか口ごもる***を言葉の先を促すつもりで見つめていると、しばらくして口を開いた。
「あの時はちょっとおかしかったけど、今は…その…え…えっちな気持ち、です、ちゃんと」
「え、あ、はい…」
***がオレの手を握って、上目遣いで見つめてくる。ぴたりと身を寄せてくるので、抱きしめて少し引くと簡単に倒れた。完全にオレを信頼しきっているのが身の預け方でよくわかって、すごく嬉しい。***がオレの首に腕を回してキスをせがむ。
「おねがい、めちゃくちゃに、して…?」
可愛すぎないか、オレの恋人。全身でオレを求めてくれているのが嬉しくて、柔らかい唇を何度も啄む。キスの度に唇が甘くなる気がした。耳元にもキスを落として囁く。
「めちゃくちゃに、してあげる」
***が蕩けた顔で頷いた。
───────────────────────
「ところでめちゃくちゃってどういうこと?」
「んー…え、と…?」
言葉の意味をハッキリさせておきたいのは性分だ。認識の齟齬があっては困る。***は首を傾げているが何かイメージがあるはずなので、取り敢えず前戯を進めながら聞き出すことにする。エッチな話をするときはエッチな気分になるのが一番だ。耳を食んでから首筋に舌を這わせると***の背中がびくりと跳ねた。楽な部屋着は簡単に素肌にたどり着かせてくれて、腹からゆっくり手を滑らせて胸の膨らみをやんわり撫でる。***から甘いため息が漏れて、すっかり体の力が抜けた様子は腹を撫でられているときの猫みたいに無防備だ。
「***はどんなふうにされたいの?」
「んー…ラビの、したいこと、されたい…」
「…そんなこと言って、酷いことされたらどうすんの」
「ラビはそんなことしないもん…」
当たり前みたいに言う。嬉しくて言葉に詰まってしまったので、誤魔化すように取り敢えず***のズボンを奪ってその辺に放り投げ、オレも暑いので上着を脱ぎ捨てる。***も暑かったのか自分で上着を脱いでキャミソールだけになったので、もう上下一枚ずつしか布がない。上を捲り上げて、露わになった可愛い突起をつつく。舌と指の腹で左右同時に撫でると甘い声が漏れた。
「オレは***がされたいことをしたいんだけど…」
「えー…」
「何を期待して『めちゃくちゃ』って言ってるわけ?」
「き、たい…」
快感にぼんやりしていた***が目を泳がせ始めた。何か思うところがあったらしい。追いかけて目を合わせたらまた逸らされるので、胸の愛撫を続けながら追いかけ続けたら腕を伸ばして密着してきた。二人しかいないのに、耳元に口を寄せて小さい声で囁く。
「あ、あの」
「うん」
「いっぱい、いじめてほしい、かも…」
「っ…ちょっ、***…」
可愛すぎて変な声が出た。しかも密着しているので今のでわかりやすく下半身が反応してしまったのがバレバレだ。
「ラビ…」
「***が可愛いこと言うから!…いじめる、ねぇ」
具体的に何をしたものか、と考えたところで、無防備に放り出された***の腕を見て思い付いた。
「***ちゃんバンザーイ」
「…?」
既に捲れ上がっているキャミソールを脱がそうとすると***が素直に腕を上げてくれるので、腕から抜く前にそれで緩く手首を固定する。何をされたか気付いて***が顔を赤くした。
「ラビ、これ…」
「いや?」
「いや、じゃ、ない…」
嫌じゃないのか。可愛いな。腕を上げただけなのに居心地悪そうに身じろぎするだけで妙にエロティックに見える。そのままショーツに手を掛けようとして、やめた。もっとエッチな脱がせ方があるはずだ。
「***、膝立てて、脚開いて?」
「…こう?」
「うん、じょーず」
頭を撫でて、開いた脚の間に入り込む。太腿をマッサージでもするように撫でながら脚の付け根までたどり着いて、指をV字にして下着の淵に沿うように指を這わせた。そのうち周りばかり擦るじれったい指の動きに***がぐずるような声を出す。
「んー…、ら、び」
「なぁに?」
「さわっ、て」
「…しょうがないなぁ」
今度は指一本で下着の上から割れ目のあたりをゆるゆるなぞる。***が耐えるように脚を閉じようとするので何度も挟まれた。
「***きもちい?」
「ん、きもち…」
「ふふ、可愛い」
最初は撫でるような触り方でも満足そうだったが、いつまでも布の上からばかりだとさすがに物足りないのか今度は脚が意図的に動いて強めに挟まれた。
「ちょっと、脚!」
「だってぇ…」
「もー…足癖の悪い子は、お仕置きだからね」
「えー…」
「えーじゃないの」
「んー…」
声は不満そうだが姿勢を変えるよう促すと意外と素直に従った。肘をついてうつ伏せになった***の下腹のあたりに枕を入れて尻を上げさせ、少し膝を開かせる。乱れた髪を直すついでに唇にも額にもキスを落として、割れ目に沿って尻をひと撫でしてから一発ばちりと叩いた。布の上からでもなかなかいい音が鳴る。
「んっ…」
「なぁに、エッチな声出して」
「だしてないもん…」
「自分で聞いてごらん?」
「あぅっ…」
「可愛いね、***」
叩くたびに***が可愛い声を出すので少し余計に叩いてしまったが、いよいよ下着に手を掛ける。ゆっくり引き下ろすと愛液が糸を引いて、それがわかったのかただ脱がされて恥ずかしいのか***がもぞもぞと身じろぎした。丸見えになったそこにそっと指を差し込んで、愛液を塗り広げるようにゆっくりとなぞる。擦るたび***がびくりと背中を震わせて快感を享受するのをじっくり観察して、改めて露わになった尻を叩いた。
「あぁ、んっ」
「ちゃんと反省してるの?ここ、こんなとろとろにして」
「して、る」
「ほんとかなぁ…ごめんなさいは?」
「んっ、ごめん、なさい…」
難癖をつけながら***の尻が可愛い桃色になるまで撫でるのと叩くのを繰り返す。その頃には中もすっかり蕩けて、指を出し入れすると音が鳴るくらい粘度の高い愛液が溢れ出た。
「***可愛い…このまま挿れていい…?」
「ん…ラビ、ほしい…」
準備したモノを蕩けたそこにあてがって、奥まで挿入する。***に覆い被さって、もうまとわりつくだけですっかり意味のなくなった手元の布を外した。かわりに***の手を上から包むようにして握ると、揺さぶられながら一生懸命その手にキスを落としてくれて嬉しくなる。
「かわい…***、だいすき…」
「んっ、ら、び、だいすきっ…」
首を伸ばしてキスをする。少々しんどい体勢でも気持ちがいいからしばらくそのまま続けていたが、***が何度も名前を呼ぶので動きを緩める。
「どした…?」
「前、から、ぎゅってしたい…」
「…うん、しよ」
***はすっかりおねだりが上手になってしまったらしい。一旦抜くと向きを変えてくれたので、引っかかったままの下着を脚から抜いたら軽く脚を開いてくれる。***がオレを求めてくれることが嬉しくて、脚を掴んで奥まで一気に突いた。しばらく好き勝手揺さぶってから、身を屈めて上半身を密着させる。抱きしめると嬉しそうにため息を漏らすので愛しさが込み上げた。
「気持ちいいね、***」
「ん、きもちい…ラビ、だいすき」
「うん、***、だいすき」
そういえば、めちゃくちゃにしてくれって言われたんだった。もはや何も考えられなくてオレの方が***の可愛さでめちゃくちゃな気がする。細い指がオレの髪を撫でるのを上から握って、***の中に欲を吐き出した。
お互いぐったりして引っ付き合う。汗をかいてじっとりしているのに、まだくっついていたくて起き上がれない。目が合って、キスして、微睡んでを繰り返した。
「ラビー」
「んー」
「またされたい、めちゃくちゃ…」
「もー、可愛いこと言う…」
こうやって二人だけで通じる言葉が増えていくのかと思うと、どうしようもなく愛しくなった。
(なんか「めちゃくちゃ」って言葉が使いづらくなっちゃった…)
(そ、それは***がそういう使い方するから…)
何だかイライラしていた。
妙に悲しいし、何となく疲れている気もするし、暴れたいし何もしたくない。
全ての状態異常が起きているような心情で、何をやっても解消されない。
ベッドで溶けて別の何かになりそうなほど寝返りを打って、ふいにラビの顔が浮かぶ。優しい声と温かい手を思い出したら、なんだか無性に。
めちゃくちゃにされたいと、思ってしまった。
ラビを探していそうな場所を一通り歩いてみたけどいなかった。任務ではないことはわかっているので、たぶん機密文書の書庫だ。あそこは限られた人たちしか入れない場所なのであたしはあの周辺に行くことさえあまりない。でも今日はどうしてもラビに会いたくて、入れないのは承知で扉の前まで来てしまった。来てみたものの緊急の用事でもないのにノックするのは躊躇われて、ただ部屋の前をうろうろする。廊下を行って戻ってを5回くらい繰り返した頃、突然目当ての赤毛が顔を出した。びっくりして意味もなく壁に張り付く。
「***…?」
壁に付けた額を一瞬ラビに向けて、また戻す。ラビの抑えた笑い声と、中に「ちょっと休憩してくる」と声をかけるのが聞こえて、扉が閉まる音がする。
「ニンジャごっこ?」
「…うん……」
「ふーん…」
視線を感じながらしばらく黙っていたけど耐えられなくなって、今度はラビの胸に張り付いたら笑って受け止めてくれた。
「なんか用だった?」
「…何でもない……」
「…ずっといたみたいだけど、ほんとに?」
「…あい、たかった」
「そっか、嬉しい」
なんだ、バレてたんだ。ブックマンがラビに見に行かせたのかもしれない。仕事を中断させてしまって申し訳ないと思ったけど、ついでに何か飲むと言うから着いて行った。食堂で温かい飲み物をもらって木陰のベンチに座る。
「あ〜つっかれた…」
「お疲れ様…」
「コーヒーうめー」
ベンチでいろんな崩れ方をするラビはどのポーズでもその長い脚が邪魔そうだ。しばらく見ていたらラビが視線に気付いて、座り直して腕を広げた。迷わず隙間に入り込んだら、ピースがぴたりとはまったような安心感。額にキスが落ちてきて嬉しくなる。
「珍しいさ、***があんなとこまで会いに来るなんて」
「…ごめんね、邪魔しちゃって」
「んーん、なんかあった?」
「…別に……」
「…ふーん?」
頬杖をついてコーヒーを啜るのも妙に様になっているのは何なんだろう。さすがにいきなり抱いてくれ、とは言えないので何となく目線を泳がせる。あたしの様子がおかしいことにラビは気付いているようだ。
ラビが鋭いのはこういう時だけ、ではない。彼はいつでもあたしの変化に敏感で、他の誰も気付かない些細なことでも気付いてくれる。外見に関しては記憶力によるところもあるのかもしれないけど、内面に関してもよく気付いてくれるのは観察力のなせる技だと思う。そして、無理に聞き出そうともしない。ただこうやって側にいてくれて、だからラビなら何とかしてくれると思ってしまう。
少し首を伸ばしたらラビが自然と屈んでくれるので、耳元にできるだけ口を近づけた。
「ラビ…今日、したい…」
「…え」
ラビが驚いた顔をする。
あたしから誘うことがないわけじゃないけど、最近は慣れてきて一緒に寝る時に何となくそういう雰囲気になって何となく始めることが多かったから、はっきり言葉にすることは少なかった。だから驚いたのかと思ったけど、その表情はどんどん険しくなっていき、最終的に顎に手を当てて考え込むような顔をした。あまりにもじっと見るので居た堪れなくなって自分のミルクティーを啜ったけど、それが半分なくなってもラビの表情は変わらなかった。何なの。
「…何なの」
「いや、それはこっちのセリフっていうか…」
「はぁ?」
「いやごめん、だってさぁ…」
仮にも可愛い彼女が誘ってるのになんて言い草だ、と少し我儘なことを思ったけど、何か言いたげなので言葉の続きを待ってみる。
「***、本当にしたいの…?」
「…はぁ?!」
「だって全然…なんていうか…ムラムラしてる感じじゃない気がするけど…なーんか誤魔化してない?」
「えっ」
今度はあたしがびっくりした。確かに、誤魔化したかった。でも何も言ってないのに顔を見ただけで何でそんなことわかるんだろうか。
長い沈黙の後、意を決して口を開いた。
「…なんかね今日、おかしくて…」
「うん?」
「なにしてもダメだから、どうにかしたくて…」
「…うん」
ぽろぽろと、今の気持ちを口に出す。途中からよくわからない涙が出てきて言葉は支離滅裂だったけど、ラビは手を握ったり腕をさすったりしながら何も言わずに全部聞いてくれた。
「ごめん、ごめんね」
「ん、いいよ」
ラビがカップを渡してきて、そういえばいつの間にか持っていなかったことに気付いた。途中でハンカチをくれたときに渡した気がする。避けて置いてくれていたみたいで、受け取って口をつけたらもうすっかり冷たかったけどすごく甘く感じた。気持ちも涙も出し切ってすっきりした気がして、泣いていてしばらく見ていなかったラビの顔を見てみたら、とても優しい顔をしていた。きっと、ずっとこういう顔で聞いていてくれたんだろう。首を伸ばして顔を近づけたら、同じように顔を近づけてキスしてくれた。嬉しくて、やっぱりラビが大好きだなぁと思う。
「ねぇ、ラビ」
「うん?」
「やっぱり今日、したい…だめ…?」
自分がどんな顔をしてるかわからないけど、今は純粋にラビがほしい。じっと見つめたらすごく嬉しそうに笑ってくれた。
「うん、オレも、したいな」
その後たくさんキスをしてラビは書庫に戻って行った。
今夜がすごく楽しみだ。
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「たでーまー」
「…長い休憩だったな」
「んだよお茶持ってきてやったろ」
「お前…いや何でもない」
「…ンなわけねーだろ!!」
何を言いたいのか察して、ちょっとムカついたので久しぶりに強めに背中を叩いてしまった。結構な老人のくせにカカと笑っただけでびくともしない。いろんな意味でとんでもないじじいだ。
今日の分の記録を終えて、約束した通り***の部屋へ出向く。出迎えてくれた***は何だか緊張していて、初めての時を思い出して愛しくなった。オレをベッドまで誘導して座らせた***は、改まって口を開いた。
「昼間は、ありがとね」
「どういたしまして」
「今日はその…お願いが、あります」
「…なんでしょうか…?」
「あの…め…めちっ、め、た…あ、待って」
盛大に噛んだな。水を一口飲んで、改めて改まった***を気長な気持ちで眺める。
「あのね…めちゃくちゃに、してほしいって…昼間、思ってて…」
「…は…え、なに?!」
突然の告白に驚いて素っ頓狂な声を出してしまった。***は髪をいじりながら目を泳がせている。可愛い。じゃなくて。
「そんなこと考えてたの…?」
「あ、あの時は、むしゃくしゃして…」
むしゃくしゃしてめちゃくちゃにされたくなるって破滅的すぎないか。違和感はあったが、さすがににそんな気持ちだったとは思っていなかったので面食らう。なぜか口ごもる***を言葉の先を促すつもりで見つめていると、しばらくして口を開いた。
「あの時はちょっとおかしかったけど、今は…その…え…えっちな気持ち、です、ちゃんと」
「え、あ、はい…」
***がオレの手を握って、上目遣いで見つめてくる。ぴたりと身を寄せてくるので、抱きしめて少し引くと簡単に倒れた。完全にオレを信頼しきっているのが身の預け方でよくわかって、すごく嬉しい。***がオレの首に腕を回してキスをせがむ。
「おねがい、めちゃくちゃに、して…?」
可愛すぎないか、オレの恋人。全身でオレを求めてくれているのが嬉しくて、柔らかい唇を何度も啄む。キスの度に唇が甘くなる気がした。耳元にもキスを落として囁く。
「めちゃくちゃに、してあげる」
***が蕩けた顔で頷いた。
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「ところでめちゃくちゃってどういうこと?」
「んー…え、と…?」
言葉の意味をハッキリさせておきたいのは性分だ。認識の齟齬があっては困る。***は首を傾げているが何かイメージがあるはずなので、取り敢えず前戯を進めながら聞き出すことにする。エッチな話をするときはエッチな気分になるのが一番だ。耳を食んでから首筋に舌を這わせると***の背中がびくりと跳ねた。楽な部屋着は簡単に素肌にたどり着かせてくれて、腹からゆっくり手を滑らせて胸の膨らみをやんわり撫でる。***から甘いため息が漏れて、すっかり体の力が抜けた様子は腹を撫でられているときの猫みたいに無防備だ。
「***はどんなふうにされたいの?」
「んー…ラビの、したいこと、されたい…」
「…そんなこと言って、酷いことされたらどうすんの」
「ラビはそんなことしないもん…」
当たり前みたいに言う。嬉しくて言葉に詰まってしまったので、誤魔化すように取り敢えず***のズボンを奪ってその辺に放り投げ、オレも暑いので上着を脱ぎ捨てる。***も暑かったのか自分で上着を脱いでキャミソールだけになったので、もう上下一枚ずつしか布がない。上を捲り上げて、露わになった可愛い突起をつつく。舌と指の腹で左右同時に撫でると甘い声が漏れた。
「オレは***がされたいことをしたいんだけど…」
「えー…」
「何を期待して『めちゃくちゃ』って言ってるわけ?」
「き、たい…」
快感にぼんやりしていた***が目を泳がせ始めた。何か思うところがあったらしい。追いかけて目を合わせたらまた逸らされるので、胸の愛撫を続けながら追いかけ続けたら腕を伸ばして密着してきた。二人しかいないのに、耳元に口を寄せて小さい声で囁く。
「あ、あの」
「うん」
「いっぱい、いじめてほしい、かも…」
「っ…ちょっ、***…」
可愛すぎて変な声が出た。しかも密着しているので今のでわかりやすく下半身が反応してしまったのがバレバレだ。
「ラビ…」
「***が可愛いこと言うから!…いじめる、ねぇ」
具体的に何をしたものか、と考えたところで、無防備に放り出された***の腕を見て思い付いた。
「***ちゃんバンザーイ」
「…?」
既に捲れ上がっているキャミソールを脱がそうとすると***が素直に腕を上げてくれるので、腕から抜く前にそれで緩く手首を固定する。何をされたか気付いて***が顔を赤くした。
「ラビ、これ…」
「いや?」
「いや、じゃ、ない…」
嫌じゃないのか。可愛いな。腕を上げただけなのに居心地悪そうに身じろぎするだけで妙にエロティックに見える。そのままショーツに手を掛けようとして、やめた。もっとエッチな脱がせ方があるはずだ。
「***、膝立てて、脚開いて?」
「…こう?」
「うん、じょーず」
頭を撫でて、開いた脚の間に入り込む。太腿をマッサージでもするように撫でながら脚の付け根までたどり着いて、指をV字にして下着の淵に沿うように指を這わせた。そのうち周りばかり擦るじれったい指の動きに***がぐずるような声を出す。
「んー…、ら、び」
「なぁに?」
「さわっ、て」
「…しょうがないなぁ」
今度は指一本で下着の上から割れ目のあたりをゆるゆるなぞる。***が耐えるように脚を閉じようとするので何度も挟まれた。
「***きもちい?」
「ん、きもち…」
「ふふ、可愛い」
最初は撫でるような触り方でも満足そうだったが、いつまでも布の上からばかりだとさすがに物足りないのか今度は脚が意図的に動いて強めに挟まれた。
「ちょっと、脚!」
「だってぇ…」
「もー…足癖の悪い子は、お仕置きだからね」
「えー…」
「えーじゃないの」
「んー…」
声は不満そうだが姿勢を変えるよう促すと意外と素直に従った。肘をついてうつ伏せになった***の下腹のあたりに枕を入れて尻を上げさせ、少し膝を開かせる。乱れた髪を直すついでに唇にも額にもキスを落として、割れ目に沿って尻をひと撫でしてから一発ばちりと叩いた。布の上からでもなかなかいい音が鳴る。
「んっ…」
「なぁに、エッチな声出して」
「だしてないもん…」
「自分で聞いてごらん?」
「あぅっ…」
「可愛いね、***」
叩くたびに***が可愛い声を出すので少し余計に叩いてしまったが、いよいよ下着に手を掛ける。ゆっくり引き下ろすと愛液が糸を引いて、それがわかったのかただ脱がされて恥ずかしいのか***がもぞもぞと身じろぎした。丸見えになったそこにそっと指を差し込んで、愛液を塗り広げるようにゆっくりとなぞる。擦るたび***がびくりと背中を震わせて快感を享受するのをじっくり観察して、改めて露わになった尻を叩いた。
「あぁ、んっ」
「ちゃんと反省してるの?ここ、こんなとろとろにして」
「して、る」
「ほんとかなぁ…ごめんなさいは?」
「んっ、ごめん、なさい…」
難癖をつけながら***の尻が可愛い桃色になるまで撫でるのと叩くのを繰り返す。その頃には中もすっかり蕩けて、指を出し入れすると音が鳴るくらい粘度の高い愛液が溢れ出た。
「***可愛い…このまま挿れていい…?」
「ん…ラビ、ほしい…」
準備したモノを蕩けたそこにあてがって、奥まで挿入する。***に覆い被さって、もうまとわりつくだけですっかり意味のなくなった手元の布を外した。かわりに***の手を上から包むようにして握ると、揺さぶられながら一生懸命その手にキスを落としてくれて嬉しくなる。
「かわい…***、だいすき…」
「んっ、ら、び、だいすきっ…」
首を伸ばしてキスをする。少々しんどい体勢でも気持ちがいいからしばらくそのまま続けていたが、***が何度も名前を呼ぶので動きを緩める。
「どした…?」
「前、から、ぎゅってしたい…」
「…うん、しよ」
***はすっかりおねだりが上手になってしまったらしい。一旦抜くと向きを変えてくれたので、引っかかったままの下着を脚から抜いたら軽く脚を開いてくれる。***がオレを求めてくれることが嬉しくて、脚を掴んで奥まで一気に突いた。しばらく好き勝手揺さぶってから、身を屈めて上半身を密着させる。抱きしめると嬉しそうにため息を漏らすので愛しさが込み上げた。
「気持ちいいね、***」
「ん、きもちい…ラビ、だいすき」
「うん、***、だいすき」
そういえば、めちゃくちゃにしてくれって言われたんだった。もはや何も考えられなくてオレの方が***の可愛さでめちゃくちゃな気がする。細い指がオレの髪を撫でるのを上から握って、***の中に欲を吐き出した。
お互いぐったりして引っ付き合う。汗をかいてじっとりしているのに、まだくっついていたくて起き上がれない。目が合って、キスして、微睡んでを繰り返した。
「ラビー」
「んー」
「またされたい、めちゃくちゃ…」
「もー、可愛いこと言う…」
こうやって二人だけで通じる言葉が増えていくのかと思うと、どうしようもなく愛しくなった。
(なんか「めちゃくちゃ」って言葉が使いづらくなっちゃった…)
(そ、それは***がそういう使い方するから…)