短編
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Open-Ended
***が脚立の上で本を読み耽っている。
オレの身長より少し高いくらいの位置で片脚に本を乗せ、片脚を脚立の足場に投げ出して座っている。長いスカートの裾が綺麗に広がって、窓から入る光に照らされて絵画みたいに美しく見えた。
「…***」
驚かせないように、視界に入る位置で静かに声を掛ける。返ってきたのはお手本のような生返事で、本を閉じる気配はない。しばらく眺めて、投げ出された脚に触ったらさすがに顔を上げた。
「…いいとこなの」
「降りて読みなさいよ、危ないから」
「はーい」
栞を挟んでようやく動く素振りを見せる。それとなく脚立を支えていたら***が降りる途中で両手を広げてきたので、仕方ないなと言いながら腰を抱いて降ろしてやったらけらけら笑って喜んだ。何バカップルみたいなことやってんだと思いつつ、満更でもない自覚はある。可愛いやつめ。
「一人で降りられないとこに登んなよ、子猫ちゃん」
「はいはい」
「えー」
さっきの甘い空気が嘘のように流された。***が近くの椅子に座ったので、オレも***を抱くようにして横に座る。読んでいたのは童話の原典版だった。開かれたページは王子が塔から落ちて失明する場面。何がいいとこなのかと思いつつ、既に知っている残りの文を一緒に目で追う。
結末まで目を通した***は大きくため息をついた。とても余韻に浸るような感じではない。
「…やり逃げ男と幸せになれる……?」
「……………あー…えっと……」
それについて、オレの立場から言えることは何もない。本当に、何もなかった。むしろオレが***にとってそうである可能性すらある。もっと何か言うべきなのか、言わないべきなのか、考え込んでいたら***がオレをじっと見つめていることに気付いた。
「な、なに…?」
「今、不安になってたでしょ」
「…うん……」
「…ラビが何してもあたしは不幸にならないから、大丈夫だよ」
「ん…?」
どういうことかと***の顔を覗き込んだら、隙ありとばかりに唇が触れた。面食らったオレに対して***は何事もなかったかのようにオレの顔をじっと見つめ続ける。
「好き、ってこと」
さっきの盛大なため息は何だったのか、何も教訓が生かされていない感情論を嬉しいと思ってしまう自分がいた。
わかる?と言いたげにこてんと首を傾げるのが可愛かったので、吸い寄せられるまま美味そうな唇にかぶりついた。
(ん…も、やだ)
(ちょっと、自分から仕掛けといて…)
(もっとしたいから、ここじゃやだ)
(…お城に帰ろっか、お姫様)
***が脚立の上で本を読み耽っている。
オレの身長より少し高いくらいの位置で片脚に本を乗せ、片脚を脚立の足場に投げ出して座っている。長いスカートの裾が綺麗に広がって、窓から入る光に照らされて絵画みたいに美しく見えた。
「…***」
驚かせないように、視界に入る位置で静かに声を掛ける。返ってきたのはお手本のような生返事で、本を閉じる気配はない。しばらく眺めて、投げ出された脚に触ったらさすがに顔を上げた。
「…いいとこなの」
「降りて読みなさいよ、危ないから」
「はーい」
栞を挟んでようやく動く素振りを見せる。それとなく脚立を支えていたら***が降りる途中で両手を広げてきたので、仕方ないなと言いながら腰を抱いて降ろしてやったらけらけら笑って喜んだ。何バカップルみたいなことやってんだと思いつつ、満更でもない自覚はある。可愛いやつめ。
「一人で降りられないとこに登んなよ、子猫ちゃん」
「はいはい」
「えー」
さっきの甘い空気が嘘のように流された。***が近くの椅子に座ったので、オレも***を抱くようにして横に座る。読んでいたのは童話の原典版だった。開かれたページは王子が塔から落ちて失明する場面。何がいいとこなのかと思いつつ、既に知っている残りの文を一緒に目で追う。
結末まで目を通した***は大きくため息をついた。とても余韻に浸るような感じではない。
「…やり逃げ男と幸せになれる……?」
「……………あー…えっと……」
それについて、オレの立場から言えることは何もない。本当に、何もなかった。むしろオレが***にとってそうである可能性すらある。もっと何か言うべきなのか、言わないべきなのか、考え込んでいたら***がオレをじっと見つめていることに気付いた。
「な、なに…?」
「今、不安になってたでしょ」
「…うん……」
「…ラビが何してもあたしは不幸にならないから、大丈夫だよ」
「ん…?」
どういうことかと***の顔を覗き込んだら、隙ありとばかりに唇が触れた。面食らったオレに対して***は何事もなかったかのようにオレの顔をじっと見つめ続ける。
「好き、ってこと」
さっきの盛大なため息は何だったのか、何も教訓が生かされていない感情論を嬉しいと思ってしまう自分がいた。
わかる?と言いたげにこてんと首を傾げるのが可愛かったので、吸い寄せられるまま美味そうな唇にかぶりついた。
(ん…も、やだ)
(ちょっと、自分から仕掛けといて…)
(もっとしたいから、ここじゃやだ)
(…お城に帰ろっか、お姫様)