短編
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▶︎つづきからはじめる
列車の中で***に全部を話した。
適度な雑音で変に緊張しなくて済むからだ。理由を話すにはまずオレが***を好きだということから話さなくてはならないのだから、静まり返った二人きりの空間なんてとても無理だった。
***は頷きながらオレの長い話を聞いてくれた。その顔は優しくて、とても昨日まで冷たくされていたヤツの話を聞く態度ではない。***がオレの想いに応えてくれれば、この話はハッピーエンドだ。
話を聞き終えた***は一度ため息をついて、窓の外を眺めた。どれくらいそうしていたのか、列車がガタンと揺れてお互いに我に帰った。***と目が合う。
「…うん、取り敢えず、わかった」
「取り敢えずって…」
「だって今、ずーっと悩んでたことの理由がわかったんだもん。あと告白されたし…まだ消化できない」
「そ、そう…」
思っていたのと違う反応にビビるオレとは対照的に、***は何だかぼーっとしている。心ここに在らずといった感じだ。目線を窓に向けたまま、***はポーチを探ってチョコレートを一粒口に放り込んだ。
「あたしも、ラビのこと、好き」
手元のコーヒーを一口啜って、まるで普通のことみたいに言った。昨日いい雰囲気になりかけたことで薄々察していたが、やっぱりそうだよな。前は質問があれば何でもオレのところに来ていたし、くだらない話もしてくれたし、広い場所でオレを見つけると嬉しそうにして、よく笑って………
ちょっと待て、それは何ヶ月前の話だ?
最近は二人で話すことなどほぼなかった。会えば挨拶はしてくれるが、わざわざ話しかけられることはなくなった。話は全部リナリー経由だし、今***が食べているチョコレートだって、そんなの好きだったっけとか思っている。
何をやっているんだろう。
「でもね」
***の目線は相変わらず窓の外だった。やっぱり嫌いだって言われたらどうしよう。***の横顔から目を逸らさずに次の言葉を待った。
「冷たくされている間にあなたはわたしの特別ではなくなりました」
熱くも冷たくもない声。嫌い、よりもしんどい言葉があるとは思わなかった。どこか虚な目が、もうオレを映すことはないんじゃないかと怖くなる。
「嫌いにはなってないけど、もう諦めちゃったから」
何を、と口から出かかったが、聞くまでもないことだ。取り戻すにはもう全部遅い。これ以上深追いしたくなくて、終わらせるための言葉を吐こうとした口にチョコレートが放り込まれた。
少し苦い、ビターチョコレート。
「だからもう一回、特別にして」
身を乗り出した***が真っ直ぐオレを見ている。チョコレートを咀嚼しながら頷いたら、嬉しそうに手が差し出された。恐る恐る手を取って、その小ささに驚いた。
「よ、よろしくお願いします…?」
「えへへ、こちらこそ」
ちょっと首を傾けて笑った***が愛しくて、今日二度目の告白をした。
((ただいまー))
(おや、仲良しだねぇ)
列車の中で***に全部を話した。
適度な雑音で変に緊張しなくて済むからだ。理由を話すにはまずオレが***を好きだということから話さなくてはならないのだから、静まり返った二人きりの空間なんてとても無理だった。
***は頷きながらオレの長い話を聞いてくれた。その顔は優しくて、とても昨日まで冷たくされていたヤツの話を聞く態度ではない。***がオレの想いに応えてくれれば、この話はハッピーエンドだ。
話を聞き終えた***は一度ため息をついて、窓の外を眺めた。どれくらいそうしていたのか、列車がガタンと揺れてお互いに我に帰った。***と目が合う。
「…うん、取り敢えず、わかった」
「取り敢えずって…」
「だって今、ずーっと悩んでたことの理由がわかったんだもん。あと告白されたし…まだ消化できない」
「そ、そう…」
思っていたのと違う反応にビビるオレとは対照的に、***は何だかぼーっとしている。心ここに在らずといった感じだ。目線を窓に向けたまま、***はポーチを探ってチョコレートを一粒口に放り込んだ。
「あたしも、ラビのこと、好き」
手元のコーヒーを一口啜って、まるで普通のことみたいに言った。昨日いい雰囲気になりかけたことで薄々察していたが、やっぱりそうだよな。前は質問があれば何でもオレのところに来ていたし、くだらない話もしてくれたし、広い場所でオレを見つけると嬉しそうにして、よく笑って………
ちょっと待て、それは何ヶ月前の話だ?
最近は二人で話すことなどほぼなかった。会えば挨拶はしてくれるが、わざわざ話しかけられることはなくなった。話は全部リナリー経由だし、今***が食べているチョコレートだって、そんなの好きだったっけとか思っている。
何をやっているんだろう。
「でもね」
***の目線は相変わらず窓の外だった。やっぱり嫌いだって言われたらどうしよう。***の横顔から目を逸らさずに次の言葉を待った。
「冷たくされている間にあなたはわたしの特別ではなくなりました」
熱くも冷たくもない声。嫌い、よりもしんどい言葉があるとは思わなかった。どこか虚な目が、もうオレを映すことはないんじゃないかと怖くなる。
「嫌いにはなってないけど、もう諦めちゃったから」
何を、と口から出かかったが、聞くまでもないことだ。取り戻すにはもう全部遅い。これ以上深追いしたくなくて、終わらせるための言葉を吐こうとした口にチョコレートが放り込まれた。
少し苦い、ビターチョコレート。
「だからもう一回、特別にして」
身を乗り出した***が真っ直ぐオレを見ている。チョコレートを咀嚼しながら頷いたら、嬉しそうに手が差し出された。恐る恐る手を取って、その小ささに驚いた。
「よ、よろしくお願いします…?」
「えへへ、こちらこそ」
ちょっと首を傾けて笑った***が愛しくて、今日二度目の告白をした。
((ただいまー))
(おや、仲良しだねぇ)
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