短編
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prelude
なんかムカつく。
女の子にこんな感情を抱くのは初めてだ。女の子どころか、オレは普段から他人に怒りを感じることなんか殆どない。そもそもこれが怒りなのかすら定かではないが、***が視界に入る度、無性に何かが込み上げてくるのだ。何だかよくわからないが、苛々することは確かなので暫定的に怒りのカテゴリーに放り込んでいる。
特別何かされたわけではない。ただ、***がいると普段の自分じゃなくなるような気がして、それがますます苛立ちを募らせた。
「部屋、一つしかないの?」
「お陰様でいっぱいなんです...今晩はどの宿もそうかと...」
隣の***と顔を見合わせて、申し訳なさそうにする店主に仕方なく頷いた。店主はホッとした表情で、部屋の準備をするから先に食事を、とオレたちをテーブルに座らせた。
任務を終えて次の汽車まで一泊しなければならなくなった。街は祭りの真っ最中らしく、どの場所も人でいっぱいだ。仕事も済んだしいつもなら喜んで遊びに出掛けるところだが、今回のパートナーが***というだけで楽しく遊ぶ気にはなれなかった。一晩同室なことに対しても***は気にしてなさそうだが、オレは気が気じゃない。部屋があってよかったねぇと無邪気に喜んでいるが何でそんなに呑気なのかとさっそく小さな苛立ちが湧いてきた。
「よくねーって。お前、男と部屋一緒で大丈夫なん?」
「...別に大丈夫だけど」
何でだよ。気にしろ。小さく呟いた言葉は喧騒に飲まれて届かなかったらしい。アレンやユウでも大丈夫なのか。そう言いかけて、何でそんなこと聞く必要があると思い直した。
「ラビは嫌なの?」
「嫌っつーか...気ぃ使うだろ、普通」
「そうなんだ、意外」
「は?」
「女の子と一晩過ごすなんて大歓迎だと思ってたけど」
「***とは...別に...」
「はー?何それー」
頬杖をついて、少し拗ねた顔で首を傾げる。何だそれやめろ可愛い。
可愛い?
そう思ったことに驚いて次の言葉を紡げずにいたら、食事が運ばれてきた。訝しむような顔から一瞬で切り替わった輝く瞳に釘付けになってしまって、混乱したまま食べたから味がよくわからなかった。何故か、食べる間の***の手付きや口から覗く赤い舌、美味そうに食べる表情は目に焼き付いた。混乱しながら食べ終わって満足そうにする***を見ると、その目は窓の外に向いていた。全くわかりやすい。
「せっかくだし外見てこようよ、ラビお祭り好きでしょ?」
「あー、いや...」
「行かないの...?じゃあ先に寝てていいよ」
「あ、いや、行くさ」
「どっちよ」
「行くって、待てよ」
どうしても一人では行かせたくなかった。知らない街だから?人混みは危ないから?理由を必死に考えながら、先を行く***を慌てて追いかけた。
―――――――――――――――――――――――
「楽しかったねー」
「あー、そう」
「...疲れてる?」
「いや別に...先にシャワー行ってこいよ」
「え、あたし長いからラビ先に行ったら?」
「...男が使った後なんか嫌だろ」
「いやあんま変わんないけど...もーわかった先使うから」
無言の圧をかけたら、ため息と共に了承を得た。***がバスルームに消えたのを見届けて、余計なことを考え始める前に報告書の内容を練ってしまおうと思いベッドに腰掛けて目を閉じた。頭の中に用紙を広げて、***の大きめの独り言や隠す気のない鼻歌にたまに思考を逸らされながら任務中の出来事を整理していく。内容がまとまった頃にはシャワーの音が消え、ちらりと目を開けると30分ほど経っていた。あとは帰って頭の中の文を紙に書けばいい。***が把握していることは汽車の中ででも話して追加すればいいだろう。いい具合に時間が潰れたことにほっとしたところで、丁度よくバスルームの扉が開いた。
「ラビお待たせー」
「おー...」
目を上げたら、ラフな格好の***がいた。教団の共有部にいたっておかしくない格好なのに、何となく気まずくてあまり見ないように努めてオレもバスルームに向かった。
―――――――――――――――――――――――
「オレ床でいいから、ベッド使えよ」
「詰めれば入るよ?」
「大丈夫だって」
「えー、明日も移動で疲れるしベッドで寝た方がいいよ」
「いいから」
「...あのさぁ」
オレがバスルームを出てから、座る間もなくこの問答が続いている。譲る気はないので受け流していたら、手を引かれてベッドに座らされた。***が距離を詰めてきて、それ以上近付かれると困ると思ったが、それ以上は来なかった。いや何が困るんだ?
「...ラビ、あたしのこと嫌い?」
「えっ」
「薄っすら思ってたけど、この際はっきりしてくれない?嫌いなら嫌いでいいけど...雰囲気で避けられてるほうが傷付くし、ちゃんと言ってくれればこっちからも距離取るよ」
「...別に、嫌いってわけじゃないけど」
そこまで態度に出ていないと自分では思っていたが、大きなため息を吐く***を見るとどうやらそうではないらしい。少し焦って名前を呼んだら、ちょっと怒った顔をしていた。
「嘘、あたしには明らかに冷たいもん。...他の女の子とは普通に楽しそうなのに」
「...はぁ?同じだろ別に」
「ほら!他の女の子には『はぁ?』とか言ったりしないし!最初そんなじゃなかったじゃん」
「最初...?」
俯き加減のままこちらを見るから、自然と上目遣いになっている。こちらを探るような少し警戒した瞳が、初めて会った時のことを思い出させた。
初対面での***はまるで野良猫みたいだった。警戒するくせに笑顔を見せて優しくすればすぐに緊張を解いて、正直ちょろい奴だと思った。放っておけなくて世話を焼いたら段々懐かれて、それが結構嬉しくて、いつの間にか***が隣にいないと落ち着かなくなった。それでオレは。
「...あ...」
考えないようにしていたことが一気に押し寄せて、頭が揺れるようだった。
オレと違って嘘のない笑顔を向けてくるところとか、オレの話を楽しそうに聞いてくれるところとか、素直なところが何というか魅力的で、つまり、すごく、好きだった。
いや好きなんだ。あの時からずっと。
「なに...?」
固まっているオレに、***が不思議そうに首を傾げる。そういう何気ない仕草も可愛くて、いろいろと気付いてしまった。
***が無防備にしていると他の男の前でもそうなのかと不安になるし、笑っているとそれをオレだけに向けてほしいと悔しくなる。そういうことだったのかと、他人事みたいにぼんやり思った。
気付いてしまえば今までの態度が恐ろしくて、繕いもせず大きなため息を吐いてしまった。そして、何故いつものチャラチャラした態度で誤魔化せなかったのかと後悔する。これから挽回なんかできるのか。
「ラビ大丈夫?具合悪いの...?」
何にしても、このままではあまりにも嫌な奴すぎる。否定の意で首を振って、***を改めて見たら可愛くて驚いた。すごく心配した顔をしている。めちゃくちゃ嬉しい。可愛い。
「ごめん、ちょっと、その...嫌いじゃないのは本当さ...ごめん、な」
「ほんとに...?」
出来る限り威圧しない声と言葉を心掛ける。それだけで伝わるものがあったのか、***が少し安心したような顔でオレの隣に寄り添うように座り直す。視界に入る手足の細さや、動いてもあまり沈まないベッドに体格の差を感じて少し意識してしまう。自覚しただけでこんなに変わるものだろうか。首を傾げて覗き込んでくるところとか、もうとにかく可愛い。
「ラビ、前はすごく優しかったから、あたしが何かしたのかなって思ってたんだけど...違う...?」
「いや、***のせいじゃないさ。オレがおかしかったっていうか、むしろ、す...」
好きだから、と言いかけて思い止まる。***は幸いオレを嫌ってなさそうだが、急に態度を180度変えるのは変かもしれない。今はこんな狭い部屋で二人きりだし、今まで散々冷たくしといて実は好きでしたとか、体目当てだと思われても言い訳出来ない。人として、男として怖がらせるのは避けたい。葛藤するオレの隣で、***は止まってしまった次の言葉をじっと待ってくれている。そういうところがすごく、好きだ。
「...なんでもないさ。とにかく***は悪くないし、オレは態度を改めるから...」
「急にどうしたの?...何かあるなら今全部言ってほしいんだけど」
「なんもないってば...そういう***は、何かあんの?」
ちょっと意地が悪いが、投げ返してみたら意外にも***の方が言葉に詰まった。さっきの***みたいに聞く姿勢で待ってみると、躊躇いながら口を開いてくれた。
「あたしはもっと、ラビと話したいっていうか...仲良くしたいって、思うよ...?」
「えっ?そ、それは...どういう...」
「どうって...その...そのまんまの意味だけど...」
やたらと髪を弄りながら歯切れ悪く呟く***に、いつもの苛つきは湧いてこない。むしろ期待してしまった。思った通りに、都合良く解釈してもいいだろうか。
「...オレも、本当はそう思ってた、かも」
「...かもって何」
「いや、あー... ***のこと...か、可愛いって、思ってた...ずっと」
言ってしまった。しばらく固まっていた***がついに下を向いて顔を覆った。さすがに踏み込みすぎたか。茶化すか、真面目に訂正するか、逡巡する間に絞り出すような声が耳に届いた。
「...あたしも、ラビのことかっこいいと、思ってる...」
喉の奥で変な音が鳴った。この部屋は暑すぎる。やっぱり意地でも部屋を探すんだったか。
夜は長い。
((どうやって顔上げたらいいんだろ...))
なんかムカつく。
女の子にこんな感情を抱くのは初めてだ。女の子どころか、オレは普段から他人に怒りを感じることなんか殆どない。そもそもこれが怒りなのかすら定かではないが、***が視界に入る度、無性に何かが込み上げてくるのだ。何だかよくわからないが、苛々することは確かなので暫定的に怒りのカテゴリーに放り込んでいる。
特別何かされたわけではない。ただ、***がいると普段の自分じゃなくなるような気がして、それがますます苛立ちを募らせた。
「部屋、一つしかないの?」
「お陰様でいっぱいなんです...今晩はどの宿もそうかと...」
隣の***と顔を見合わせて、申し訳なさそうにする店主に仕方なく頷いた。店主はホッとした表情で、部屋の準備をするから先に食事を、とオレたちをテーブルに座らせた。
任務を終えて次の汽車まで一泊しなければならなくなった。街は祭りの真っ最中らしく、どの場所も人でいっぱいだ。仕事も済んだしいつもなら喜んで遊びに出掛けるところだが、今回のパートナーが***というだけで楽しく遊ぶ気にはなれなかった。一晩同室なことに対しても***は気にしてなさそうだが、オレは気が気じゃない。部屋があってよかったねぇと無邪気に喜んでいるが何でそんなに呑気なのかとさっそく小さな苛立ちが湧いてきた。
「よくねーって。お前、男と部屋一緒で大丈夫なん?」
「...別に大丈夫だけど」
何でだよ。気にしろ。小さく呟いた言葉は喧騒に飲まれて届かなかったらしい。アレンやユウでも大丈夫なのか。そう言いかけて、何でそんなこと聞く必要があると思い直した。
「ラビは嫌なの?」
「嫌っつーか...気ぃ使うだろ、普通」
「そうなんだ、意外」
「は?」
「女の子と一晩過ごすなんて大歓迎だと思ってたけど」
「***とは...別に...」
「はー?何それー」
頬杖をついて、少し拗ねた顔で首を傾げる。何だそれやめろ可愛い。
可愛い?
そう思ったことに驚いて次の言葉を紡げずにいたら、食事が運ばれてきた。訝しむような顔から一瞬で切り替わった輝く瞳に釘付けになってしまって、混乱したまま食べたから味がよくわからなかった。何故か、食べる間の***の手付きや口から覗く赤い舌、美味そうに食べる表情は目に焼き付いた。混乱しながら食べ終わって満足そうにする***を見ると、その目は窓の外に向いていた。全くわかりやすい。
「せっかくだし外見てこようよ、ラビお祭り好きでしょ?」
「あー、いや...」
「行かないの...?じゃあ先に寝てていいよ」
「あ、いや、行くさ」
「どっちよ」
「行くって、待てよ」
どうしても一人では行かせたくなかった。知らない街だから?人混みは危ないから?理由を必死に考えながら、先を行く***を慌てて追いかけた。
―――――――――――――――――――――――
「楽しかったねー」
「あー、そう」
「...疲れてる?」
「いや別に...先にシャワー行ってこいよ」
「え、あたし長いからラビ先に行ったら?」
「...男が使った後なんか嫌だろ」
「いやあんま変わんないけど...もーわかった先使うから」
無言の圧をかけたら、ため息と共に了承を得た。***がバスルームに消えたのを見届けて、余計なことを考え始める前に報告書の内容を練ってしまおうと思いベッドに腰掛けて目を閉じた。頭の中に用紙を広げて、***の大きめの独り言や隠す気のない鼻歌にたまに思考を逸らされながら任務中の出来事を整理していく。内容がまとまった頃にはシャワーの音が消え、ちらりと目を開けると30分ほど経っていた。あとは帰って頭の中の文を紙に書けばいい。***が把握していることは汽車の中ででも話して追加すればいいだろう。いい具合に時間が潰れたことにほっとしたところで、丁度よくバスルームの扉が開いた。
「ラビお待たせー」
「おー...」
目を上げたら、ラフな格好の***がいた。教団の共有部にいたっておかしくない格好なのに、何となく気まずくてあまり見ないように努めてオレもバスルームに向かった。
―――――――――――――――――――――――
「オレ床でいいから、ベッド使えよ」
「詰めれば入るよ?」
「大丈夫だって」
「えー、明日も移動で疲れるしベッドで寝た方がいいよ」
「いいから」
「...あのさぁ」
オレがバスルームを出てから、座る間もなくこの問答が続いている。譲る気はないので受け流していたら、手を引かれてベッドに座らされた。***が距離を詰めてきて、それ以上近付かれると困ると思ったが、それ以上は来なかった。いや何が困るんだ?
「...ラビ、あたしのこと嫌い?」
「えっ」
「薄っすら思ってたけど、この際はっきりしてくれない?嫌いなら嫌いでいいけど...雰囲気で避けられてるほうが傷付くし、ちゃんと言ってくれればこっちからも距離取るよ」
「...別に、嫌いってわけじゃないけど」
そこまで態度に出ていないと自分では思っていたが、大きなため息を吐く***を見るとどうやらそうではないらしい。少し焦って名前を呼んだら、ちょっと怒った顔をしていた。
「嘘、あたしには明らかに冷たいもん。...他の女の子とは普通に楽しそうなのに」
「...はぁ?同じだろ別に」
「ほら!他の女の子には『はぁ?』とか言ったりしないし!最初そんなじゃなかったじゃん」
「最初...?」
俯き加減のままこちらを見るから、自然と上目遣いになっている。こちらを探るような少し警戒した瞳が、初めて会った時のことを思い出させた。
初対面での***はまるで野良猫みたいだった。警戒するくせに笑顔を見せて優しくすればすぐに緊張を解いて、正直ちょろい奴だと思った。放っておけなくて世話を焼いたら段々懐かれて、それが結構嬉しくて、いつの間にか***が隣にいないと落ち着かなくなった。それでオレは。
「...あ...」
考えないようにしていたことが一気に押し寄せて、頭が揺れるようだった。
オレと違って嘘のない笑顔を向けてくるところとか、オレの話を楽しそうに聞いてくれるところとか、素直なところが何というか魅力的で、つまり、すごく、好きだった。
いや好きなんだ。あの時からずっと。
「なに...?」
固まっているオレに、***が不思議そうに首を傾げる。そういう何気ない仕草も可愛くて、いろいろと気付いてしまった。
***が無防備にしていると他の男の前でもそうなのかと不安になるし、笑っているとそれをオレだけに向けてほしいと悔しくなる。そういうことだったのかと、他人事みたいにぼんやり思った。
気付いてしまえば今までの態度が恐ろしくて、繕いもせず大きなため息を吐いてしまった。そして、何故いつものチャラチャラした態度で誤魔化せなかったのかと後悔する。これから挽回なんかできるのか。
「ラビ大丈夫?具合悪いの...?」
何にしても、このままではあまりにも嫌な奴すぎる。否定の意で首を振って、***を改めて見たら可愛くて驚いた。すごく心配した顔をしている。めちゃくちゃ嬉しい。可愛い。
「ごめん、ちょっと、その...嫌いじゃないのは本当さ...ごめん、な」
「ほんとに...?」
出来る限り威圧しない声と言葉を心掛ける。それだけで伝わるものがあったのか、***が少し安心したような顔でオレの隣に寄り添うように座り直す。視界に入る手足の細さや、動いてもあまり沈まないベッドに体格の差を感じて少し意識してしまう。自覚しただけでこんなに変わるものだろうか。首を傾げて覗き込んでくるところとか、もうとにかく可愛い。
「ラビ、前はすごく優しかったから、あたしが何かしたのかなって思ってたんだけど...違う...?」
「いや、***のせいじゃないさ。オレがおかしかったっていうか、むしろ、す...」
好きだから、と言いかけて思い止まる。***は幸いオレを嫌ってなさそうだが、急に態度を180度変えるのは変かもしれない。今はこんな狭い部屋で二人きりだし、今まで散々冷たくしといて実は好きでしたとか、体目当てだと思われても言い訳出来ない。人として、男として怖がらせるのは避けたい。葛藤するオレの隣で、***は止まってしまった次の言葉をじっと待ってくれている。そういうところがすごく、好きだ。
「...なんでもないさ。とにかく***は悪くないし、オレは態度を改めるから...」
「急にどうしたの?...何かあるなら今全部言ってほしいんだけど」
「なんもないってば...そういう***は、何かあんの?」
ちょっと意地が悪いが、投げ返してみたら意外にも***の方が言葉に詰まった。さっきの***みたいに聞く姿勢で待ってみると、躊躇いながら口を開いてくれた。
「あたしはもっと、ラビと話したいっていうか...仲良くしたいって、思うよ...?」
「えっ?そ、それは...どういう...」
「どうって...その...そのまんまの意味だけど...」
やたらと髪を弄りながら歯切れ悪く呟く***に、いつもの苛つきは湧いてこない。むしろ期待してしまった。思った通りに、都合良く解釈してもいいだろうか。
「...オレも、本当はそう思ってた、かも」
「...かもって何」
「いや、あー... ***のこと...か、可愛いって、思ってた...ずっと」
言ってしまった。しばらく固まっていた***がついに下を向いて顔を覆った。さすがに踏み込みすぎたか。茶化すか、真面目に訂正するか、逡巡する間に絞り出すような声が耳に届いた。
「...あたしも、ラビのことかっこいいと、思ってる...」
喉の奥で変な音が鳴った。この部屋は暑すぎる。やっぱり意地でも部屋を探すんだったか。
夜は長い。
((どうやって顔上げたらいいんだろ...))