短編
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違う窓から見た景色
司令室からラビの声が聞こえる。嬉しくて、ノックもそこそこに思いっきり扉を開けてしまった。
「あ...ただいま!」
「***ちゃん!おかえりなさい」
「おー!おかえり***」
ラビも帰ってきたばかりみたいで、まだ報告の途中らしい。ソファーに座って待っていたらリーバーさんが来てくれて、後で伝えておくからと報告を聞いてくれた。今回は特別なことはなかったし、報告書も簡単に書けば終わりだ。
ちらりとラビを見たら報告以外にもいろいろ話し込んでいて、二人とも根本的にはお喋りが好きなんだなぁとぼんやり思う。コムイさんは仕事をサボりたいだけかもしれないけど。
雰囲気的に任務の報告は終えていそうなので、後ろからラビに抱きついてみた。久しぶりのラビの匂いに少しホッとする。
「お?***?」
「おやおや、待たせちゃってごめんね」
「いや、えっと」
何となく微笑ましげな目線を向けられてちょっと恥ずかしい。司令室を出て、扉が閉まったところでどちらともなく手を繋いだ。
「...ラビ、おかえり」
「ん、ただいま」
手を伸ばしたらラビが屈んでくれて、背伸びしてキスをする。その時、違和感が確信に変わった。それはラビも同じだったみたいで、同時に口を開いた。
「背、伸びた?」
「背、縮んだ?」
取り敢えず、脇腹をつねっておいた。
あたしの身長はすごく低いというわけでもないけど、体格のいい人が多い教団の中では小さい方だ。骨格もしっかりしてるわけではないから余計に小さく見えるらしい。自分より身長が低いのと何より女の子ということで、来たばかりのころはリナリーに手厚くお世話してもらった気がする。今思えば、あの時のリナリーは本当に嬉しそうだった。
ラビとは出会った時から頭ひとつ分くらい目線が違って、小動物みたいとよく揶揄われた。そして、よく助けてもらった。書庫室に籠っていることが多くてあまり目立たないけど、ラビも結構体格がいい。身長も確かに高いんだけど、体の厚みもあるから細身の神田と並ぶと余計に大きく見える。あたしの隣にいれば尚更だ。
でも話す時は自然に屈んでくれるし、人が多い場所ではさり気なく気遣ってくれて、そういうところが大好きになった。
前より身長が伸びているのは知っていたけど、長い間会わないと急に大きくなったように感じる。つねられた腹をさすって項垂れていても尚遠い頭のてっぺんをじっと観察していたら、ジョニーに呼び止められた。
「二人ともおかえり!ラビ、ちょっと採寸していきなよ」
「え~?そんなに変わんねーさ」
「まぁまぁ、この前発注もらったバンダナも出来てるし、ついでだよ!***も新しい団服の裾直したから着てみてくれない?」
「はーい」
二人で作業場についていく。前を歩くラビの背中がすごく大きく見えて、そういえばこのひとは男の人なんだと当たり前のことを思った。
―――――――――――――――――――――――
「185センチってさぁ、もう巨人だよね」
「...何言ってんの?」
「だってあと15センチで2メートルだよ?ブックマンなのにそんなに嵩張って大丈夫なの?」
「人に嵩張るとか言うんじゃありません。...ブックマン関係ある?」
腹も満たして、シャワーも浴びて、ベッドに入っても***の話は続いている。オレが身長を測ってから、***はずっとこんな調子だ。興奮しているというか、珍しい生き物でも見るような目の輝きでオレを見てくる。俺より一回りも二回りも華奢な体を思えば、まぁわからんでもないと苦笑した。
オレから見た***はまさに小動物といった感じで、第一印象で生きるの大変そう、などと失礼なことを思った。しかしそれはあながち間違っていなくて、観察していると人波に流されたり、ぶつかられたりするのをよく見かけた。***がオレを好きになってくれたのはそういう所から助けてくれたからだと言っていたけれど、今となっては気を遣わないやつが多すぎて驚いている。それも、***と並んで歩いてみなければ気付かなかったことだ。
「あたしもあと10センチあったらなー」
「やっぱ身長ほしい?」
「あまりにも困ることは別にないけどさ、高さの合わないテーブルがいつか丁度良くなるって思ってた子どもの時の感覚がずっと続いてる感じ。ちょっとしたストレスだよ」
「...ほー、そう考えたら確かにしんどいさ」
なかなか興味深い話だ。オレと***では物理的に見えている世界が違う。知っているつもりではいたが、口にするまでもない小さな不便がたくさんあるのかもしれない。手を握るのに少しだけ力を込めたら、***も握り返してくれた。それだけでも強さが全く違って、痛かったかもしれないと思って慌ててそっと握り直した。
***の肩は華奢で、握る手は小さくて柔らかくて、いくら一般人より鍛えていようが確かに女の子なんだとふと思う。
いつもより弱い力で、そっと***に触れる。頭から肩の曲線を撫でるように手のひらを滑らせたら、***が肩をすくめて笑った。
「もー、くすぐったいよ」
「ごめん...」
「...どうしたの?」
「いや、なんか... ***って、女の子なんだなぁって...」
「なにそれ...ふふっ」
「なに?」
「あたしもさっき思った、ラビって男の人なんだなーって」
「なんさそれ」
「わかんなーい」
けらけら笑いながら、***がオレの胸に飛び込んでくる。上に乗っかってきたのを受け止めて、オレとは真逆の薄い背中を撫でる。
「ねぇラビ」
「うん?」
「あたしに合わせてゆっくり歩いてくれてるの、知ってるよ」
「...頑張って大股で歩いてんのも、知ってるさ」
「知ってるの、知ってた」
「知ってる、ぜーんぶ知ってる」
何故か楽しそうな***を抱き締めて、上下をひっくり返す。力業でも***が笑ってくれるのは信頼の証だと思うと嬉しくなって、今まででいちばん優しいキスを贈った。
(ラビ、今日優しいね)
(え、いつも優しくなかった...?)
(優しいよ、ずーっと優しくて、大好き)
(...うん、ありがと)
司令室からラビの声が聞こえる。嬉しくて、ノックもそこそこに思いっきり扉を開けてしまった。
「あ...ただいま!」
「***ちゃん!おかえりなさい」
「おー!おかえり***」
ラビも帰ってきたばかりみたいで、まだ報告の途中らしい。ソファーに座って待っていたらリーバーさんが来てくれて、後で伝えておくからと報告を聞いてくれた。今回は特別なことはなかったし、報告書も簡単に書けば終わりだ。
ちらりとラビを見たら報告以外にもいろいろ話し込んでいて、二人とも根本的にはお喋りが好きなんだなぁとぼんやり思う。コムイさんは仕事をサボりたいだけかもしれないけど。
雰囲気的に任務の報告は終えていそうなので、後ろからラビに抱きついてみた。久しぶりのラビの匂いに少しホッとする。
「お?***?」
「おやおや、待たせちゃってごめんね」
「いや、えっと」
何となく微笑ましげな目線を向けられてちょっと恥ずかしい。司令室を出て、扉が閉まったところでどちらともなく手を繋いだ。
「...ラビ、おかえり」
「ん、ただいま」
手を伸ばしたらラビが屈んでくれて、背伸びしてキスをする。その時、違和感が確信に変わった。それはラビも同じだったみたいで、同時に口を開いた。
「背、伸びた?」
「背、縮んだ?」
取り敢えず、脇腹をつねっておいた。
あたしの身長はすごく低いというわけでもないけど、体格のいい人が多い教団の中では小さい方だ。骨格もしっかりしてるわけではないから余計に小さく見えるらしい。自分より身長が低いのと何より女の子ということで、来たばかりのころはリナリーに手厚くお世話してもらった気がする。今思えば、あの時のリナリーは本当に嬉しそうだった。
ラビとは出会った時から頭ひとつ分くらい目線が違って、小動物みたいとよく揶揄われた。そして、よく助けてもらった。書庫室に籠っていることが多くてあまり目立たないけど、ラビも結構体格がいい。身長も確かに高いんだけど、体の厚みもあるから細身の神田と並ぶと余計に大きく見える。あたしの隣にいれば尚更だ。
でも話す時は自然に屈んでくれるし、人が多い場所ではさり気なく気遣ってくれて、そういうところが大好きになった。
前より身長が伸びているのは知っていたけど、長い間会わないと急に大きくなったように感じる。つねられた腹をさすって項垂れていても尚遠い頭のてっぺんをじっと観察していたら、ジョニーに呼び止められた。
「二人ともおかえり!ラビ、ちょっと採寸していきなよ」
「え~?そんなに変わんねーさ」
「まぁまぁ、この前発注もらったバンダナも出来てるし、ついでだよ!***も新しい団服の裾直したから着てみてくれない?」
「はーい」
二人で作業場についていく。前を歩くラビの背中がすごく大きく見えて、そういえばこのひとは男の人なんだと当たり前のことを思った。
―――――――――――――――――――――――
「185センチってさぁ、もう巨人だよね」
「...何言ってんの?」
「だってあと15センチで2メートルだよ?ブックマンなのにそんなに嵩張って大丈夫なの?」
「人に嵩張るとか言うんじゃありません。...ブックマン関係ある?」
腹も満たして、シャワーも浴びて、ベッドに入っても***の話は続いている。オレが身長を測ってから、***はずっとこんな調子だ。興奮しているというか、珍しい生き物でも見るような目の輝きでオレを見てくる。俺より一回りも二回りも華奢な体を思えば、まぁわからんでもないと苦笑した。
オレから見た***はまさに小動物といった感じで、第一印象で生きるの大変そう、などと失礼なことを思った。しかしそれはあながち間違っていなくて、観察していると人波に流されたり、ぶつかられたりするのをよく見かけた。***がオレを好きになってくれたのはそういう所から助けてくれたからだと言っていたけれど、今となっては気を遣わないやつが多すぎて驚いている。それも、***と並んで歩いてみなければ気付かなかったことだ。
「あたしもあと10センチあったらなー」
「やっぱ身長ほしい?」
「あまりにも困ることは別にないけどさ、高さの合わないテーブルがいつか丁度良くなるって思ってた子どもの時の感覚がずっと続いてる感じ。ちょっとしたストレスだよ」
「...ほー、そう考えたら確かにしんどいさ」
なかなか興味深い話だ。オレと***では物理的に見えている世界が違う。知っているつもりではいたが、口にするまでもない小さな不便がたくさんあるのかもしれない。手を握るのに少しだけ力を込めたら、***も握り返してくれた。それだけでも強さが全く違って、痛かったかもしれないと思って慌ててそっと握り直した。
***の肩は華奢で、握る手は小さくて柔らかくて、いくら一般人より鍛えていようが確かに女の子なんだとふと思う。
いつもより弱い力で、そっと***に触れる。頭から肩の曲線を撫でるように手のひらを滑らせたら、***が肩をすくめて笑った。
「もー、くすぐったいよ」
「ごめん...」
「...どうしたの?」
「いや、なんか... ***って、女の子なんだなぁって...」
「なにそれ...ふふっ」
「なに?」
「あたしもさっき思った、ラビって男の人なんだなーって」
「なんさそれ」
「わかんなーい」
けらけら笑いながら、***がオレの胸に飛び込んでくる。上に乗っかってきたのを受け止めて、オレとは真逆の薄い背中を撫でる。
「ねぇラビ」
「うん?」
「あたしに合わせてゆっくり歩いてくれてるの、知ってるよ」
「...頑張って大股で歩いてんのも、知ってるさ」
「知ってるの、知ってた」
「知ってる、ぜーんぶ知ってる」
何故か楽しそうな***を抱き締めて、上下をひっくり返す。力業でも***が笑ってくれるのは信頼の証だと思うと嬉しくなって、今まででいちばん優しいキスを贈った。
(ラビ、今日優しいね)
(え、いつも優しくなかった...?)
(優しいよ、ずーっと優しくて、大好き)
(...うん、ありがと)