短編
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Pet Dog
化学班の備品室。ほとんどの団員が寝静まった頃、コムイが作った変な薬品を隠しに行くのに同行した。一度偶然遭遇してからというもの、結構な割合で好奇心に駆られて同行させてもらっている。他の団員が面白半分で作った、ちょっといかがわしいものの話なんかはかなり面白い。もちろん誰にも言っていないので、少しは信用してくれているらしい。
「これ何?」
「あー...何を食べても酸っぱく感じる薬だな」
「何それ地味に嫌さ~」
と言いつつ、誰かがそうなったところを想像すると面白い。クロちゃんなんかびっくりして転げ回りそうだし、ユウはどんな反応をするのか見ものだ。アレン...は、食べ物関係のことは後が怖いのでやらないほうがいい。オレも飯が美味しく食えないのは嫌なので、意味はないだろうが一応瓶や液体の色をインプットしておく。
「それ、取ってくれ」
「ん、ほい」
「サンキュ」
脚立の上の化学班員に、足元の瓶が詰まった箱を渡す。これで最後だ。もう遅いから、***は寝ているだろう。大人しく自室に帰ろう。いや、もう一度書庫室に戻って朝まで記録するか。考えながら、脚立を押さえて薬品が仕舞われていくのを見守る。ふと、その下の棚が気になった。
「なぁ、それ落ちそうさ」
「お、本当だ」
危なっかしい位置にあった瓶を指差す。脚立の上の彼が、それを少し奥にやろうとしたとき。
「あっ!」
「うっわ!!」
揺れた。何でこんな時に、何の振動だ。
その後はスローモーションのようだった。瓶が傾いて、落ちてくる。とっさにキャッチしようとしたが間に合わず、脚に当たって運悪く蓋が開き、薬品がかかった。不運すぎるだろ。何色かもわらない煙に包まれる。
「ラビ大丈夫か!痛みは?!気分はどうだ?!」
「どこも痛くないし気分も悪くない!でも怖くて目が開けらんない!なんか起きてる?!変な感じになってない?!」
「変、ていうか...あっはは、これかぁ!」
「えっなに何ナニ?!怖いやつ?!」
「頭、触ってみな」
「ん...うへぁっ」
我ながら変な声が出た。自分の体にないはずのものがあるからだ。でもこの手触りは知っている。
動物の、耳。
「ぎゃーーーーーーー!!!!!」
オレの悲鳴と裏腹に目の前のこいつは大笑いしている。お前も突然動物の耳が生えてみろよ。いや、あるかもしれない。科学班だし。
「なんっでそんな呑気にしてられるんさ!他人事だと思って!!」
「あぁごめん、それは効き目も長くないし危険なものじゃないから、耳と尻尾が生えるだけで」
「えっ」
尻に手をやってみたら確かに感覚があった。ちゃんと尾骶骨のあたりから生えているのに少し興味が行ったが、すぐ現実に戻ってくる。
「効き目は長くないって、どれくらいさ...?」
「1~2時間で戻ると思うぞ」
「はぁ~よかった...いやよくないけど...」
「それにしても何だったんだろうなさっきの揺れは...室長がまた何か実験に失敗したのか」
「ほんっとタイミング悪ィさ...」
「...悪かったな、どっかで休んでくか?」
「いいさ、すぐ戻るんならこのまま寝る」
「そうか、手伝ってくれてありがとな」
「おー」
マフラーを頭に被って、備品室を出た。尻尾は服で見えないし、耳もなんとか誤魔化せる。眠れば明日の朝には戻っているだろう。運が悪かったなと思いながら、寝る前にちょっとだけ尻尾の付け根とか観察してみようと、心が早くも好奇心に支配されていた。
暗い廊下を、一応人を警戒しながら歩く。談話室を通り過ぎるとき、人の気配がした気がして少し戻って確認する。
***だ。
こんな時間に何をしているんだろうか。ぼーっと座って、何か作業をしている風でもない。声をかけようとして、自分の姿を思い出してやめた。どうせあと数時間で戻る。明日の朝まで我慢しよう。
入り口の前を通り過ぎて、いやこんな時間だ、ないとは思うが変な気を起こした誰かに手を出されたらどうする。暗がりの中でぐるぐる考えた。
「ラビ...?」
ビクリと体が跳ねる。ゆっくり振り返ると、***が立っていた。
「何してるの、こんなとこで」
「あ...いや、ちょっと」
「...どこでもいいけど...もう寝るの?」
「うん」
「一緒に、行こ」
「...うん」
***がいつものように、オレの左側に来る。何だか遠慮がちに指を絡めてきて、当たり障りのない話をしながら部屋への道を辿る。
「***、何してたん?」
「んー...なんか眠れなくて...ラビどこにもいないし」
「***ちゃんはオレがいないと眠れないのかなー?」
「そう、かも」
手を繋いだまま、***がおれの左腕にぴったりとくっついてくる。何だこの可愛い生き物は。このまま部屋に行って、抱き締めて一緒に寝てやりたい。でも今日はダメだ。こんな日に限ってどうしてこんなことになったのか。
「ラビは何してたの?...言いたくないならいいけど」
「いや、んなことないけど...ちょっと、科学班のとこ」
「ふーん」
***は何か察しているらしく、それ以上は聞いてこない。とはいえ、まさか耳と尻尾が生えたとは思っていないだろう。別に見せてもいいが、何というか、小さな小さなプライドが邪魔をしていた。きっと一緒に部屋に戻るつもりでいてくれるだろうから、断るのは不自然だ。いつもは何か思いつくだろう頭も、***の前ではうまく働かない。
考えているうちに、もう***の部屋の前だ。鍵を開けて、当然のようにオレを招き入れてくれる。迷って迷って、部屋に足を踏み入れる。ちゃんと話そう。変な誤解を生んでも困る。ここまで何も聞かずにいてくれた***だ、きっとわかってくれるだろう。
部屋に入って、鍵を閉める。一息吸って口を開いた。
「あのさ、それは何なの?」
「...え」
口を開いたのは***の方だ。頭のマフラーのことを指しているのは分かりきっている。一応とぼけたふりをしてみるが、今度はハッキリ頭を指差した。
「先に言っとくけど、浮気は疑ってません」
「...ほんと?」
「ほんと。さっきまで疑ってたけど」
「疑ってたのかよ...なんでそうじゃないってわかったんさ」
「...なんとなく、手繋いだとき違うかなって思っただけ」
「...女の勘、てやつ?」
「んー...彼女の勘、かな」
「はは...」
***がベッドに座って、横をポンポンと軽く叩く。隣に座って息をひとつ吐いた。***に嘘や誤魔化しをしても仕方ない。***にならどんな姿を見られてもいいかと思った。
「...笑わない?」
「わかんない」
「えーひどい」
「笑うほど面白いの?」
「たぶん」
マフラーを首に落とす。***が頭に目線を向けたまま固まった。ゆっくりと近づいて、抱きつかれたかと思ったら尻を触られた。
「うぎゃっ」
「...尻尾も付いてる」
「あー...科学班の手伝いしてて、事故った」
「ふーん...」
嘘は言ってない。数時間で戻ることと健康に異常はないことを伝えると、一気に瞳に輝きが宿った。
「可愛い...!」
***の方が可愛い、そう言う前にキスされた。
「な、なんで...?」
「なんとなく、可愛いから...?」
「なんさそれ...」
いや、逆の立場でもたぶんそうする。可愛い恋人が更に可愛くなったら、愛でるという選択肢しかないのである。***は一言断って、耳をくいっと引っ張る。キラキラした目で延々と耳を触る***が可愛くて、大人しくしていた。が、何だか尻の方に違和感がある。もどかしいというか、なんというか。
「...ラビ」
「うん?」
「尻尾、動いてる?」
「そうかも、なんか、窮屈っていうか...」
「出した方がいいんじゃない?」
「...」
「恥ずかしいのは今更では?」
「ソウデスネ...」
「付け根どうなってるか見たいし」
「あ、オレも」
一瞬で羞恥心が消し飛び、いそいそとベルトを外す。***が奥に置いている姿見をベッドの側まで持ってきた。付け根が見える位置までパンツを下げて、まじまじと見る。ちょうど尻の割れ目が始まるところから、髪色と同じふさふさした尻尾が生えていた。
「感覚ある?」
「ある、自分で動かせるし」
「えーすごい!」
「へぇー...」
しばらくまじまじと見て、ベッドに座り直す。***は鏡を戻しに行って、また二人して元の位置に戻った。変わったのは尻尾を出しただけだが、随分と楽になった気がする。同時に、***が体に触れるたび無意識に尻尾をぶんぶん振っていることに気付いてしまった。触られて嬉しいのがモロバレでちょっと恥ずかしい。
***がぴったりとくっついて、尻尾の付け根を優しくさする。それはまるで、オレのモノを扱いている時のような手付きで。
背中がぞわりとすると同時に、前が反応してしまう。ズボンが少し下がったままだから、何が起きたか丸見えだった。体が一気に熱くなる。
「ちょっと、***...」
「ねぇ...いい?」
「う...」
相変わらず尻尾の付け根を撫でながら、膨らんだ下半身をパンツの上から形に沿って指が這う。誰だこんなエッチな触り方教えたの。オレだ。快楽に抗えなくて、小さく頷いた。***は可愛い顔で笑って、オレの頭を撫でてから上体を曲げて沈み込む。大きくなったモノにつっかえないように丁寧にパンツをずらしていく。優しい手付きをオレも参考にしようと一瞬冷静になったが、先走りを溜める鈴口を指の腹で撫でられてその思考が消し飛んだ。
「あっ、ぅ、ダメだって!」
「な、なんで...痛い?」
「ちがっ...はー...出るかと、思った...」
「...気持ちいいって素直に言ってください」
「あ、んぅ...」
***がオレを咥え込む。全部は飲み込めないから、全体を唾液で濡らしたら口は先の方に集中して、あとは手で扱き始めた。誰だこんなテクニック教えたの。オレだ。それにしたっていつもより高まるのが早いのは、尻尾を撫でられているせいだ、と思いたい。
「...ぅ、やば、***、気持ちいい...」
「ん、ぅ...」
「あ、あーダメ、出る、ダメだっ、て、あっ」
言葉とは裏腹に、出ると思った瞬間に***の頭を押さえ込んで口内に吐き出した。サッと血の気が引く間、少し小さくなったオレを***はまだ離さない。ゆっくり顔を上げながら、残滓まで取りこぼさないように先を吸い上げてから唇を離した。目線を床に向けたまま、ごくりと音を立てて飲み干した。ちらりと一瞬オレを見上げて、また落とした目線が一気に羞恥に染まり始めた。可愛い。可愛すぎる。
「え、エッチ...」
「ラビの方が、エッチだったもん...ねぇ、あと、どれくらい...?」
「たぶんあと、30分か1時間くらい...かな」
***がオレに寄りかかって、熱っぽい瞳で見上げてくる。嘘だろ。こういう時に限って、わかりやすく純粋に性欲をぶつけてくるなんてずるい。
「...ラビ」
「...わかった、わかったから」
***を抱き寄せて、キスをする。積極的な***の体は、簡単にベッドに倒れた。
「...サービスしてくれる気、あるんだよね?」
「えー...今度はラビがしてくれるんじゃないの...?」
「ほー...オオカミになっても知らないからね」
「犬でしょ」
「そういう意味じゃないの」
「んっ」
黙らせるように唇を塞いだ。
さて、どうやって食べてやろうか。
―――――――――――――――――――――――
いつもと同じようなセックスなのに、いつもと違うことがひとつあるだけでこんなにもベッドの雰囲気は変わる。
「***、あんまそこ触んないで」
「いや...?」
「ちょっと嫌、かも...」
「じゃあ、ここは?」
「あ、う」
「耳も尻尾も、付け根が感じるんだ...」
「か、感じるとか言うなって」
「だって、おっきくなるもん。あとすごい尻尾振ってる」
「...静かにしなさい」
「んっ、あぁっ」
***の奥を突き上げる。なんだか***はオレの耳と尻尾に触れてばかりで、いまいちオレとのセックスに集中していない気がする。まぁもうすぐなくなってしまうとなれば注意が逸れるのもわかるが、オレは少し、いやかなり不機嫌だった。しばらく正常位で揺さぶってから、引き抜いて***の体を転がす。四つん這いなら耳にも尻尾にも触れまい。
「やっぱり犬だから後ろからがいいの...?」
「あのね、中身は動物になってないの、あと後ろ好きなのは***でしょ」
「あぁっ!」
肩を掴んで、重く奥を突く。大きく息を吐く***の体を、休む間も与えずに揺さぶる。シーツを掴む手を上から握って、荒く腰を打ち付けた。
「あっ、ん、らび、ラビっ...」
「オレのこと、見ろって...」
「は、んっ、あぁっ...みてる、もんっ...」
取り敢えず言ってみたが、***がずっとオレを見てくれていることはわかってる。今のオレはどこが気持ちいいのか、ちゃんと知ろうとしてくれた。オレはただ、***がいつものように正体をなくすほどオレに縋ってくれないことが悔しくて拗ねていただけだ。***がオレにしてくれる優しい手付きを思い出す。拘束するように掴んでいた手を離して、少し動きを緩める。頬を寄せたら、***も首を動かして自然にキスをした。
「***...もっかい、前したい」
「...ん」
さっきより乱れた息で、さっきと同じ体勢になる。***はオレの頭を優しく撫でてくれた。
「いいこ、いいこ」
「...もう犬じゃないさ」
「うん、でも、可愛いから」
「***の方が可愛い」
「ふふ」
尻尾と耳がついたオレより、そのままの***の方が何倍も可愛い。挿入すると、今度は***がオレの腰に脚を回してしっかりしがみついてきた。さっきは尻尾があるから出来なかったのだ。やっぱり***はオレをちゃんと見てくれていたと改めて気付く。
「***、ごめんね」
「なに、が?」
***はたぶんわかっているけど、気付かないふりだろう。まったく、オレには勿体ないくらいだ。しっかりと抱き締めて、今度は労るようにゆっくりと腰を動かした。
(次は***に耳と尻尾生えてほしい...)
(...猫がいいなぁ...)
(...嫌がらないんか)
(だってラビ、気持ちよさそうだったんだもん)
(う...)
化学班の備品室。ほとんどの団員が寝静まった頃、コムイが作った変な薬品を隠しに行くのに同行した。一度偶然遭遇してからというもの、結構な割合で好奇心に駆られて同行させてもらっている。他の団員が面白半分で作った、ちょっといかがわしいものの話なんかはかなり面白い。もちろん誰にも言っていないので、少しは信用してくれているらしい。
「これ何?」
「あー...何を食べても酸っぱく感じる薬だな」
「何それ地味に嫌さ~」
と言いつつ、誰かがそうなったところを想像すると面白い。クロちゃんなんかびっくりして転げ回りそうだし、ユウはどんな反応をするのか見ものだ。アレン...は、食べ物関係のことは後が怖いのでやらないほうがいい。オレも飯が美味しく食えないのは嫌なので、意味はないだろうが一応瓶や液体の色をインプットしておく。
「それ、取ってくれ」
「ん、ほい」
「サンキュ」
脚立の上の化学班員に、足元の瓶が詰まった箱を渡す。これで最後だ。もう遅いから、***は寝ているだろう。大人しく自室に帰ろう。いや、もう一度書庫室に戻って朝まで記録するか。考えながら、脚立を押さえて薬品が仕舞われていくのを見守る。ふと、その下の棚が気になった。
「なぁ、それ落ちそうさ」
「お、本当だ」
危なっかしい位置にあった瓶を指差す。脚立の上の彼が、それを少し奥にやろうとしたとき。
「あっ!」
「うっわ!!」
揺れた。何でこんな時に、何の振動だ。
その後はスローモーションのようだった。瓶が傾いて、落ちてくる。とっさにキャッチしようとしたが間に合わず、脚に当たって運悪く蓋が開き、薬品がかかった。不運すぎるだろ。何色かもわらない煙に包まれる。
「ラビ大丈夫か!痛みは?!気分はどうだ?!」
「どこも痛くないし気分も悪くない!でも怖くて目が開けらんない!なんか起きてる?!変な感じになってない?!」
「変、ていうか...あっはは、これかぁ!」
「えっなに何ナニ?!怖いやつ?!」
「頭、触ってみな」
「ん...うへぁっ」
我ながら変な声が出た。自分の体にないはずのものがあるからだ。でもこの手触りは知っている。
動物の、耳。
「ぎゃーーーーーーー!!!!!」
オレの悲鳴と裏腹に目の前のこいつは大笑いしている。お前も突然動物の耳が生えてみろよ。いや、あるかもしれない。科学班だし。
「なんっでそんな呑気にしてられるんさ!他人事だと思って!!」
「あぁごめん、それは効き目も長くないし危険なものじゃないから、耳と尻尾が生えるだけで」
「えっ」
尻に手をやってみたら確かに感覚があった。ちゃんと尾骶骨のあたりから生えているのに少し興味が行ったが、すぐ現実に戻ってくる。
「効き目は長くないって、どれくらいさ...?」
「1~2時間で戻ると思うぞ」
「はぁ~よかった...いやよくないけど...」
「それにしても何だったんだろうなさっきの揺れは...室長がまた何か実験に失敗したのか」
「ほんっとタイミング悪ィさ...」
「...悪かったな、どっかで休んでくか?」
「いいさ、すぐ戻るんならこのまま寝る」
「そうか、手伝ってくれてありがとな」
「おー」
マフラーを頭に被って、備品室を出た。尻尾は服で見えないし、耳もなんとか誤魔化せる。眠れば明日の朝には戻っているだろう。運が悪かったなと思いながら、寝る前にちょっとだけ尻尾の付け根とか観察してみようと、心が早くも好奇心に支配されていた。
暗い廊下を、一応人を警戒しながら歩く。談話室を通り過ぎるとき、人の気配がした気がして少し戻って確認する。
***だ。
こんな時間に何をしているんだろうか。ぼーっと座って、何か作業をしている風でもない。声をかけようとして、自分の姿を思い出してやめた。どうせあと数時間で戻る。明日の朝まで我慢しよう。
入り口の前を通り過ぎて、いやこんな時間だ、ないとは思うが変な気を起こした誰かに手を出されたらどうする。暗がりの中でぐるぐる考えた。
「ラビ...?」
ビクリと体が跳ねる。ゆっくり振り返ると、***が立っていた。
「何してるの、こんなとこで」
「あ...いや、ちょっと」
「...どこでもいいけど...もう寝るの?」
「うん」
「一緒に、行こ」
「...うん」
***がいつものように、オレの左側に来る。何だか遠慮がちに指を絡めてきて、当たり障りのない話をしながら部屋への道を辿る。
「***、何してたん?」
「んー...なんか眠れなくて...ラビどこにもいないし」
「***ちゃんはオレがいないと眠れないのかなー?」
「そう、かも」
手を繋いだまま、***がおれの左腕にぴったりとくっついてくる。何だこの可愛い生き物は。このまま部屋に行って、抱き締めて一緒に寝てやりたい。でも今日はダメだ。こんな日に限ってどうしてこんなことになったのか。
「ラビは何してたの?...言いたくないならいいけど」
「いや、んなことないけど...ちょっと、科学班のとこ」
「ふーん」
***は何か察しているらしく、それ以上は聞いてこない。とはいえ、まさか耳と尻尾が生えたとは思っていないだろう。別に見せてもいいが、何というか、小さな小さなプライドが邪魔をしていた。きっと一緒に部屋に戻るつもりでいてくれるだろうから、断るのは不自然だ。いつもは何か思いつくだろう頭も、***の前ではうまく働かない。
考えているうちに、もう***の部屋の前だ。鍵を開けて、当然のようにオレを招き入れてくれる。迷って迷って、部屋に足を踏み入れる。ちゃんと話そう。変な誤解を生んでも困る。ここまで何も聞かずにいてくれた***だ、きっとわかってくれるだろう。
部屋に入って、鍵を閉める。一息吸って口を開いた。
「あのさ、それは何なの?」
「...え」
口を開いたのは***の方だ。頭のマフラーのことを指しているのは分かりきっている。一応とぼけたふりをしてみるが、今度はハッキリ頭を指差した。
「先に言っとくけど、浮気は疑ってません」
「...ほんと?」
「ほんと。さっきまで疑ってたけど」
「疑ってたのかよ...なんでそうじゃないってわかったんさ」
「...なんとなく、手繋いだとき違うかなって思っただけ」
「...女の勘、てやつ?」
「んー...彼女の勘、かな」
「はは...」
***がベッドに座って、横をポンポンと軽く叩く。隣に座って息をひとつ吐いた。***に嘘や誤魔化しをしても仕方ない。***にならどんな姿を見られてもいいかと思った。
「...笑わない?」
「わかんない」
「えーひどい」
「笑うほど面白いの?」
「たぶん」
マフラーを首に落とす。***が頭に目線を向けたまま固まった。ゆっくりと近づいて、抱きつかれたかと思ったら尻を触られた。
「うぎゃっ」
「...尻尾も付いてる」
「あー...科学班の手伝いしてて、事故った」
「ふーん...」
嘘は言ってない。数時間で戻ることと健康に異常はないことを伝えると、一気に瞳に輝きが宿った。
「可愛い...!」
***の方が可愛い、そう言う前にキスされた。
「な、なんで...?」
「なんとなく、可愛いから...?」
「なんさそれ...」
いや、逆の立場でもたぶんそうする。可愛い恋人が更に可愛くなったら、愛でるという選択肢しかないのである。***は一言断って、耳をくいっと引っ張る。キラキラした目で延々と耳を触る***が可愛くて、大人しくしていた。が、何だか尻の方に違和感がある。もどかしいというか、なんというか。
「...ラビ」
「うん?」
「尻尾、動いてる?」
「そうかも、なんか、窮屈っていうか...」
「出した方がいいんじゃない?」
「...」
「恥ずかしいのは今更では?」
「ソウデスネ...」
「付け根どうなってるか見たいし」
「あ、オレも」
一瞬で羞恥心が消し飛び、いそいそとベルトを外す。***が奥に置いている姿見をベッドの側まで持ってきた。付け根が見える位置までパンツを下げて、まじまじと見る。ちょうど尻の割れ目が始まるところから、髪色と同じふさふさした尻尾が生えていた。
「感覚ある?」
「ある、自分で動かせるし」
「えーすごい!」
「へぇー...」
しばらくまじまじと見て、ベッドに座り直す。***は鏡を戻しに行って、また二人して元の位置に戻った。変わったのは尻尾を出しただけだが、随分と楽になった気がする。同時に、***が体に触れるたび無意識に尻尾をぶんぶん振っていることに気付いてしまった。触られて嬉しいのがモロバレでちょっと恥ずかしい。
***がぴったりとくっついて、尻尾の付け根を優しくさする。それはまるで、オレのモノを扱いている時のような手付きで。
背中がぞわりとすると同時に、前が反応してしまう。ズボンが少し下がったままだから、何が起きたか丸見えだった。体が一気に熱くなる。
「ちょっと、***...」
「ねぇ...いい?」
「う...」
相変わらず尻尾の付け根を撫でながら、膨らんだ下半身をパンツの上から形に沿って指が這う。誰だこんなエッチな触り方教えたの。オレだ。快楽に抗えなくて、小さく頷いた。***は可愛い顔で笑って、オレの頭を撫でてから上体を曲げて沈み込む。大きくなったモノにつっかえないように丁寧にパンツをずらしていく。優しい手付きをオレも参考にしようと一瞬冷静になったが、先走りを溜める鈴口を指の腹で撫でられてその思考が消し飛んだ。
「あっ、ぅ、ダメだって!」
「な、なんで...痛い?」
「ちがっ...はー...出るかと、思った...」
「...気持ちいいって素直に言ってください」
「あ、んぅ...」
***がオレを咥え込む。全部は飲み込めないから、全体を唾液で濡らしたら口は先の方に集中して、あとは手で扱き始めた。誰だこんなテクニック教えたの。オレだ。それにしたっていつもより高まるのが早いのは、尻尾を撫でられているせいだ、と思いたい。
「...ぅ、やば、***、気持ちいい...」
「ん、ぅ...」
「あ、あーダメ、出る、ダメだっ、て、あっ」
言葉とは裏腹に、出ると思った瞬間に***の頭を押さえ込んで口内に吐き出した。サッと血の気が引く間、少し小さくなったオレを***はまだ離さない。ゆっくり顔を上げながら、残滓まで取りこぼさないように先を吸い上げてから唇を離した。目線を床に向けたまま、ごくりと音を立てて飲み干した。ちらりと一瞬オレを見上げて、また落とした目線が一気に羞恥に染まり始めた。可愛い。可愛すぎる。
「え、エッチ...」
「ラビの方が、エッチだったもん...ねぇ、あと、どれくらい...?」
「たぶんあと、30分か1時間くらい...かな」
***がオレに寄りかかって、熱っぽい瞳で見上げてくる。嘘だろ。こういう時に限って、わかりやすく純粋に性欲をぶつけてくるなんてずるい。
「...ラビ」
「...わかった、わかったから」
***を抱き寄せて、キスをする。積極的な***の体は、簡単にベッドに倒れた。
「...サービスしてくれる気、あるんだよね?」
「えー...今度はラビがしてくれるんじゃないの...?」
「ほー...オオカミになっても知らないからね」
「犬でしょ」
「そういう意味じゃないの」
「んっ」
黙らせるように唇を塞いだ。
さて、どうやって食べてやろうか。
―――――――――――――――――――――――
いつもと同じようなセックスなのに、いつもと違うことがひとつあるだけでこんなにもベッドの雰囲気は変わる。
「***、あんまそこ触んないで」
「いや...?」
「ちょっと嫌、かも...」
「じゃあ、ここは?」
「あ、う」
「耳も尻尾も、付け根が感じるんだ...」
「か、感じるとか言うなって」
「だって、おっきくなるもん。あとすごい尻尾振ってる」
「...静かにしなさい」
「んっ、あぁっ」
***の奥を突き上げる。なんだか***はオレの耳と尻尾に触れてばかりで、いまいちオレとのセックスに集中していない気がする。まぁもうすぐなくなってしまうとなれば注意が逸れるのもわかるが、オレは少し、いやかなり不機嫌だった。しばらく正常位で揺さぶってから、引き抜いて***の体を転がす。四つん這いなら耳にも尻尾にも触れまい。
「やっぱり犬だから後ろからがいいの...?」
「あのね、中身は動物になってないの、あと後ろ好きなのは***でしょ」
「あぁっ!」
肩を掴んで、重く奥を突く。大きく息を吐く***の体を、休む間も与えずに揺さぶる。シーツを掴む手を上から握って、荒く腰を打ち付けた。
「あっ、ん、らび、ラビっ...」
「オレのこと、見ろって...」
「は、んっ、あぁっ...みてる、もんっ...」
取り敢えず言ってみたが、***がずっとオレを見てくれていることはわかってる。今のオレはどこが気持ちいいのか、ちゃんと知ろうとしてくれた。オレはただ、***がいつものように正体をなくすほどオレに縋ってくれないことが悔しくて拗ねていただけだ。***がオレにしてくれる優しい手付きを思い出す。拘束するように掴んでいた手を離して、少し動きを緩める。頬を寄せたら、***も首を動かして自然にキスをした。
「***...もっかい、前したい」
「...ん」
さっきより乱れた息で、さっきと同じ体勢になる。***はオレの頭を優しく撫でてくれた。
「いいこ、いいこ」
「...もう犬じゃないさ」
「うん、でも、可愛いから」
「***の方が可愛い」
「ふふ」
尻尾と耳がついたオレより、そのままの***の方が何倍も可愛い。挿入すると、今度は***がオレの腰に脚を回してしっかりしがみついてきた。さっきは尻尾があるから出来なかったのだ。やっぱり***はオレをちゃんと見てくれていたと改めて気付く。
「***、ごめんね」
「なに、が?」
***はたぶんわかっているけど、気付かないふりだろう。まったく、オレには勿体ないくらいだ。しっかりと抱き締めて、今度は労るようにゆっくりと腰を動かした。
(次は***に耳と尻尾生えてほしい...)
(...猫がいいなぁ...)
(...嫌がらないんか)
(だってラビ、気持ちよさそうだったんだもん)
(う...)